自宅(持ち家)が事務所のときはどう会社の経費になるか

会社を設立して社長の持ち家で仕事をするときは、減価償却費ではなく家賃が会社の経費になります。

その理由と家賃について注意すべき点を解説します。

 

よくある勘違い

会社を設立して、持ち家である自宅の一画で仕事をする。

このとき、建物の名義が個人なら、建物の減価償却費は会社の経費になりません

というのも、減価償却費はそのモノの持ち主だけが経費にできるからです。

 

もし減価償却費を会社の経費にしたいのなら、建物を個人から会社に売る必要があります。

名義を変えるのです。

でも、おおきなお金が動くことになるし、登記の費用もかかるし、なにより面倒です。

 

事業でつかっているのだから、何かが経費になるはず……

こんなときは、どう会社の経費になるのでしょうか。

 

自宅が事務所のときはどう会社の経費になるか

個人の持ち家である自宅を事務所などとして会社でつかっているときは、会社から持ち主へはらう家賃が経費になります

このとき、次のことに注意しましょう。

  • 家賃は個人の不動産所得になる
  • 家賃が妥当な値段か
  • 家賃には消費税がかかる
  • 住宅ローン控除

 

家賃は個人の不動産所得になる

会社が個人へはらう家賃は、個人の不動産所得になります。

その不動産所得の経費には、建物の減価償却費・火災保険料・固定資産税・修繕費などがあげられます。

もちろん全額ではなく、事業用とプライベートに按分したうえで。

 

また、青色申告をすれば青色申告特別控除もつかうことができます。

 

このときに、次のようなことが頭をよぎることもあります。

  • 会社と個人の税率差で税金を減らせないか
  • 不動産所得を赤字にすれば、個人の税金をすくなくできる

 

ですが、家賃をいくらにするかは気をつけなくてはいけません

 

家賃が妥当な値段か

家賃の設定によっては個人・会社の税金を操作できますが、それが税務署に認められるとは限りません。

 

たとえば相場よりも高い家賃にしたとき、個人では相場よりもおおい収入になるので得をします。

この得した部分は、「実質的には家賃ではない」と税金の世界ではかんがえるのです。

なので不動産所得ではなく役員報酬などとしてあつかうことになります。

 

いっぽう、相場よりも低い家賃にしたときは、不動産所得をわざと赤字にすることで個人の税金をすくなくすることもできます。

このとき「会社にお金がない」などの事情がなければ、相場あるいは相場にちかい金額で不動産所得の計算をやり直すようにいわれる可能性があります。

 

家賃を設定するときは、近所の家賃をインターネットや不動産屋でしらべましょう。

1坪あたり○○円、1㎡あたり○○円という風に。

それをもとに家賃を設定するのがよいでしょう。

「もし相手が他人ならどうするか」と考えるのが大事です。

 

家賃には消費税がかかる

事務所など事業で建物をつかうときは、その家賃には消費税がかかります。

このときの問題は「個人がインボイス登録をするかどうか」です。

もしインボイス登録をすれば、個人で消費税の申告もすることになります。

 

ただ、会社が免税事業者なら、個人でインボイス登録をする必要はありません。

個人がインボイス登録をするのは、会社の消費税の納税が増えないようにするためなので。

もちろん、個人にほかの収入があれば話はべつですよ。

 

この点もふくめて家賃の設定を考えましょう。

 

住宅ローン控除

住宅ローン控除をうけるためには、床面積の50%以上が居住用でなければなりません。

 

もし事業用が30%なら、居住用は70%です。

すると住宅ローン控除も70%になります。

ただし、居住用が90%以上(=事業用が10%未満)なら、住宅ローン控除は100%うけられるようになっています。

 

自宅のどこで仕事をするかをかんがえるときは、住宅ローン控除のこともわすれずに。

個人の視点からみた記事ですが、こちらも参考にどうぞ。

(参考記事)住宅ローン控除:自宅で事業をするときは要注意

 

まとめ

会社を設立して社長の持ち家で仕事をするときは、減価償却費ではなく家賃が会社の経費になります。

会社は自分とおなじように感じるものですが、あるモノが会社のものか個人のものかにより経理は大きく変わります。

この点については、こちらの記事も読んでみてください。

(参考記事)会社は他人:社長と株主は別の人だと理解していないと思わぬ税金がかかる

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。