法人で保険に加入するなら、欲張らない
「会社で保険に入ると、節税にもなっておトクですよ!」って聞いたことがあると思います。
解約返戻金があるタイプの保険ですね。
確かに、経費が増えるから、税金が減る訳なのですが、本当におトクなんでしょうか?
加入してから解約返戻金が戻ってくるまでのトータルでみると、ほとんど節税効果はありません。
むしろ、保険に入った方が、状況が複雑になり、後で困る可能性もあります。
節税とはならない理由
保険料は経費になるため、当然ながら利益は減り、税金も減ります。
なお、保険料に消費税はかからないため、消費税に影響はありません。
ただ、このタイプの保険は、将来に解約返戻金を受け取る前提で加入するものですよね。
その解約返戻金には、税金がかかります。
もし、支払った保険料と解約返戻金が同じ金額なら、節税とは言えないです。
税金を払うのを、将来に先送りしているだけなので。
このような現象を「課税の繰り延べ」と呼んでいます。
「支払った保険料=解約返戻金」の場合、利益の状況は次のようになります。
どちらも利益の合計は、変わりません。
※ 毎年の保険料は「20」で、解約返戻金は支払った保険料(20×3回分)と同額の「60」としています。
そこで提案されるのが、「解約返戻金を受け取る年度で、解約返戻金と同じくらい、役員・従業員へのボーナスや退職金を出してみる」というものです。
臨時の経費により、解約返戻金にかかる税金を無くすことが出来るよ、という訳です。
では、加入する場合・しない場合ともに臨時の経費があるとしたら、どうなるでしょう。
比較する場合は、同じ条件でやる必要がありますので。
※ 上記と同じく、3年目の臨時の経費は「60」です。
このように、保険に加入する場合もしない場合も、利益の合計は同じになります。
つまり、保険に加入したからと言って、節税になるとは言えないのです。
なお、税率は、所得の多寡により少し変動します。
20%台~30%台あたりで。
ですので、利益の状況によっては、どちらかが有利・どちらかが不利、という事はあります。
ただ、加入しない場合が有利という事もあり得ます。
(参考記事)【会社の税率】利益のどれくらいが税金になるのか?
また、ボーナスや退職金についても、税務上、青天井で認められる訳ではないのです。
ボーナスなどを支払っても良いけど、相場を超える部分は、損金とは認めないよというルールがあるのです。
解約するときに、返戻金に見合った経費を用意するというのは、実は難しい問題でもあります。
解約返戻率によってはトクする
解約返戻率とは、支払った保険料トータルの、どれくらいが戻ってくるかという%です。
例えば、解約するまでに支払う保険料の合計が「100」で、返戻金が「80」なら、解約返戻率は「80%」となります。
解約しても戻ってこない部分が、実質的な保険料となります。
毎年支払う金額と返戻率から、実質的な保険料がいくらかを計算してから加入しましょう。
法人で契約する保険は、高額なものも多いので。
もし、解約返戻率が100%を超えるなら、支払った金額を超えるお金が戻ってくることなります。
こうなれば、節税とは逆で、税金は増えてしまいますが、お金も増えるので喜ばしいことですよね。
なお、解約返戻率と似た言葉で、「実質」解約返戻率というものがあります。
保険料を払うことによって、税金を減らす効果を織り込んだ返戻率のことです。
これは気にせず、単純な解約返戻率で判断するようにしましょう。
お金の問題
税務上、支払う保険料のすべてが経費(=損金)になるのか、という問題があります。
現在では、解約返戻率にもよりますが、支払う保険料の一部が損金にならない時期があるのです。
いま支払う保険料には、将来の保険料の前払いが含まれている。
だから、いまは損金にせず、将来に損金にするよ、という仕組みになっているのです。
※ 保険を解約せず事故などなければ、最終的には支払う保険料はすべて損金となります。
例えば、支払うお金の60%が損金になる保険に加入したとしてみましょう。
少し極端ですが、収入を、すべて保険料に使ったとしてみます。
このように、お金がないのに、利益は出てしまう事になってしまいます。
ですので、保険に入るときは、お金が足りなくならないように気を付ける必要があります。
なるべく多く利益を消そう欲張ると、その欲張った分、お金が足りなくなってしまうイメージです。
安心を買う
会社を経営していると、もし自分に何かあったらどうしよう?と考えますよね。
保険は、そのための備えとしてあるものだと思います。
税金を減らすためではなく。
※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいております。
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