赤字なのにお金が増える理由と注意点は?【利益とお金の関係】
お金の「よく分からない」を解消し、うっかり使ってしまって後で困らないためにも、その代表的な原因や対策をみていきましょう。
目次
赤字なのにお金が増える理由
会計の世界では、利益の計算は、ある年度でどれくらいの活動をしたのか、という観点から行います。
お金が入ってきたから売上ではなく、お金が出ていったから経費でもないのです。
売上≠入金 経費≠出金
ですので、月や年といったスパンでみると、利益とお金の増減が同じになるというのは、実はすごく稀なのです。
※ 利益とお金の増減は、ある時点ではズレますが、最終的には一致するというのもポイントです。
この理由により、赤字なのにお金が増える理由は、主に次の2点となります。
- お金が入ってきたのに、売上にならない
- お金が出ていかないのに、経費になる
それぞれ、具体例をみていきましょう。
お金が入ってきたのに、売上にならない
前期に計上した売上(売掛金)
売上は、原則として、モノを引き渡したとき・サービスの提供が完了したときに計上します。
ですので、前期に計上した売上の入金が今期になると、利益とお金にズレが出てくるのです。
<注意点>
お金は増えたかもしれませんが、赤字なのは問題ないでしょうか。
計画的に赤字にすることもあり得ますので、赤字が絶対的に悪いという事はないです。
将来のことを考えてから、その増えたお金の使い道を考えましょう。
前期に計上した税金の還付(未収法人税等・未収消費税等)
税金は、原則として、未払いや未収であっても、その申告の年度で計上します。
納付したり還付を受けた時に計上するのではないため、利益とお金にズレが出てくるのです。
<注意点>
前期の税金が還付ということは、前期も赤字だったという事になりますので、問題ないか検討しましょう。
また、前期の税金(消費税等)が還付のときは、赤字ではなく、設備投資が原因の場合もあります。
設備投資については、投資額に比例して、利益とお金のズレが大きくなりますので、資金繰り表などでお金の出入りのチェックが欠かせません。
お金が出ていかないのに、経費になる
未払いの経費
経費は、モノを受け取ったとき・サービスを受けたときに計上します。
ですので、今期に計上した経費の支払いが来期になると、利益とお金にズレが出てくるのです。
<注意点>
商品の仕入、外注費、社会保険料、税金などは金額が大きめですが、ほとんどの経費は後払いではないでしょうか。
未払いのものがある事自体は問題ありませんが、支払いが遅れているものがないか確認をしておきましょう。
固定資産の減価償却費
減価償却費は、過去に購入した固定資産の代金の一部です。
つまり、お金の支払いは過去に済んでいるので、今期は支払いがないのに経費が発生するのです。
※ 減価償却がよく分からないという方は、こちらの記事も読んでみてください。
<注意点>
固定資産を購入する目的は、通常、その固定資産を使って利益を稼ぐことだと思います。
赤字ということは、その目的が達成できていないという可能性があります。
1年度だけの赤字で判断する必要はありませんが、その購入の目的と併せて検討してみましょう。
金融機関から借入れをした
借入れをしたときには、収入にはなりません。
せっかく、銀行からいくらか借りたのに、その一部が税金で持っていかれるなんてバカな話ですよね。
ですので、そんな事にはならないように、収入にはなりません。
<注意点>
借入れをしたときに収入にならない代わりに、返済をしたときも経費にはなりません。
返済するお金が足りなくならないようにするには、将来、返済額以上の利益を出す必要があります。
(借入れしたお金を使わなかった場合を除きます)
ですので、出来れば利益の計画も作り、気合を入れて経営していきましょう!
役員等から借入れをした
金融機関から借入れをするのは、手間も時間もかかります。
特に家族経営の場合は、役員から借りる方が早いし、金融機関から借りるよりプレッシャーも少ないですよね。
<注意点>
誰からいくら借りたのかを、キッチリ計算しておきましょう。
特に家族経営の場合で、家族の中の複数人に、日々の経費をその都度立て替えてもらうような場合はなおさらです。
お父さんに借りて息子さんに返すとなると、会社を通じてお父さんから息子さんへの贈与があったと捉えられてしまう可能性が出てきますので。
また、会社からみれば借入金ですが、役員からみると貸付金です。
これは役員の財産になりますので、会社がずっと借りっぱなしのときは、将来、相続税の対象になります。
会社の業績に応じて役員報酬を見直し、会社から役員への返済をしていきましょう。
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お金の「よく分からない」を無くすためには
赤字なのにお金が増える原因は、お金の出入りと利益の計算にズレがあるからです。
あくまでも「ある時点では」ということですので、最終的にはズレは解消されます。
今回は、このズレの代表的な原因・対策をご紹介しました。
具体的にいくらズレているのかを、利益の計算とは別に、資金繰り表などで定期的にチェックしておけばお金や数字に強くなります。
ぜひ、お金の「よく分からない」を解消し、数字の根拠を持って、確信のある経営判断に繋げていただければと思っています。
(注)記事作成時点の情報・法令等に基づいております。