法人の青色申告が取り消されるのは、どんなとき?

会社を設立したら、ほとんどの方が青色申告を選択していると思います。

青色申告しないメリットというのは、ほぼありませんし。

帳簿などをしっかり整えておく代わりに、税務上の様々なメリットを受けることができる青色申告ですが、状況によっては取り消されることもあります。

 

青色申告のメリット

青色申告が取り消されると、次のようなメリットは受けられなくなってしまいます。

欠損金の繰越控除

売上ー経費=利益

法人税はこの利益にかかりますが、前年度が赤字の場合、青色申告をしているなら、税務上の利益は次のよう計算することが出来ます。

売上ー経費ー前年度の赤字=利益

このように、過去の赤字を将来の利益からマイナス(控除)することを、欠損金の繰越控除と言います。

 

この仕組みにより、過去に赤字でお金が減ったという事を考慮して、税金の計算が出来るのです。

もし使えないとなると、お金がないのに税金を払わなくてはいけない……といった資金繰りの面でのデメリットを受けることになってしまいます。

(参考記事)赤字の年の翌年、税金はどうなる?【繰越控除】

 

欠損金の繰戻し還付

赤字は、基本的に、将来の黒字から控除します。

青色申告の特例で、赤字の年の前年度が黒字の場合、その前年度の黒字から控除することもできます。

赤字を将来に繰り越すのではなく、過去に繰戻し、前年度で払った法人税を取り戻すことが出来るのです。

この仕組みが使えないとなると、欠損金の繰越控除と同じく、資金繰りの面でのデメリットとなってしまいます。

(参考記事)赤字でも去年が黒字なら、税金が戻ってくる?【繰戻し還付】

 

30万円未満のモノは減価償却しないで済むはずが…

原則として、1つで10万円以上のモノ(商品は除く)は、減価償却により複数年度に分割して経費にします。

青色申告をしていると、30万円未満のモノを使い始めた時に全て経費にすることが出来ます。(年間300万円まで)

※ 資本金が1億円を超える会社や大企業のグループ会社などは除きます。

 

資金繰りのことを考えると、出ていくお金はなるべく早く経費になる方が良いです。

出ていったお金が、その年度では経費にならないとなると、利益が「100」なのにお金は「80」しかない、といった事が起こっていまうからです。

青色申告が取り消され、この仕組みが使えなくなると、お金の事により気を使う必要が出てきます。

 

各種特例制度など

その時々の政策により、モノや雇用などに関連して、期間限定で税金が少なくなる制度が設けられています。

これらの特例は、ほとんどの場合で青色申告をしていることが前提となっていますので、もれなく使えない事になってしまいます。

 

どんな時に取り消されるか

次のような場合に取り消される可能性があるのですが、一つの事実だけで判断される訳ではなく、帳簿の状況や改善の見込みなども考慮されます。

もちろん、しないに越したことはありません。

2期連続で申告が遅れる、または申告しない

2期連続で申告が期限後になる、または無申告である……

この場合は、2度目の期限後または無申告以降の年度から、青色申告が取り消されます。

 

帳簿や書類などを見せない

税務調査などでは、帳簿などを基に話をします。

その際に、求められた帳簿などを提示しない場合は、その帳簿などが無いものとして、青色申告をする条件である帳簿がなかったものとして、青色申告が取り消されます。

 

仮装または隠蔽をする

仮装とは、平たく言うと嘘をつく・偽装する、という事です。

ある取引を○○だったことにする……

売上を隠す(隠蔽)……

こういう事により、会社の利益の過半を減らしてしまった場合には、青色申告が取り消されます。

 

帳簿への記載が不十分

青色申告ではない場合に、会社が作った帳簿が信頼できないときは、税務署は、会社の財産の増減や預金口座の動き、取引先の状況、従業員など会社の規模その他に参考となる証拠資料により、「あなたの法人税は、これくらいと推測できますので、払ってね」という事ができます。

青色申告の隠れたメリットには、会社で作った帳簿に基づいて話ができる、という事もあるのです。

 

青色申告するための条件だから、という事で作った帳簿があまりにも信頼できない内容であり、税務署が推測した方がマシだよというような場合もあり得ます。

そのような時には「せっかく作ってくれたけど、それは帳簿とは呼べないね」という事で、青色申告するための条件である帳簿が無いものとして、青色申告が取り消されます。

 

電子帳簿保存法に従わない場合

メール添付のPDFのように、請求書などをデータでやり取りすることも多いと思います。

このデータに関して定めた法律が電子帳簿保存法なのですが、令和6年(2024年)から厳しいルールが導入されます。

データを改ざんするケースが出てきたため、データのみでやり取りをする請求書や取引の資料は、データのままで保存をするように、とルールが変わるのです。

紙にプリントして保存は、基本的にはダメなのです。

このルールに従わない場合も、青色申告が取り消される可能性があります。

(参考記事)請求書等のデータは保存が必要になりました【電子帳簿保存法】

 

取り消しの後はどうなる?

青色申告が取り消される場合には、税務署から通知が届きます。

取り消された後でも再申請はできますが、その通知から1年経ってからでないとできません。

少なくとも3期の間は青色申告ができない見込みとなりますし、その間に発生した赤字は繰り越しができないというのが痛いです。

ムダな税金を払わないためにも青色申告は必須ですので、取り消しには用心です。

 

※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいております。