消費税だけ値引きする・請求しない、はできるのか?
- インボイス登録しないから、請求する消費税を減らそうかな
- 免税だから、消費税は請求しないよ
親切心からだと思いますし、納得できる理由です。
考え方として、消費税だけ値引く・消費税の請求をしないのはアリです。
しかし、値引きなどしたあとの金額は、税込み(110%)となるのです。
※ 税率は10%の前提で話を進めますね。
そもそも消費税だけ値引く・請求しないのは、どういう状況か?というところから解説します。
また、逆の立場から、相手に値引きを要求する際に気をつけることにも触れておきます。
消費税だけ値引く・請求しない、とは?
自分が免税事業者だったり、インボイス登録をしていないと、次の疑問が出てきます。
「消費税の請求をしても良いのだろうか?」
本来だったら「110」を請求するところ、「100」とか「たとえば……108」だけ請求した方がいいんじゃないか?という疑問です。
請求書の一部が、次のようなイメージです。
(実際にはこのような請求書をつくってはいけません)
<消費税だけ値引くパターン>
<消費税を請求しないパターン>
消費税だけの値引き等をするとどうなるか
消費税は、モノの売却・貸付け、サービスの提供をしたときにかかります。
取引先からみれば、支払い先が免税事業者でもインボイス登録をしていなくても、その支払いには法律どおりに10%または8%の税率で、消費税がかかるのです。
勝手に消費税の税率を変えるようなことは、できないのです。
(親切心からだと思いますので、言い方が申し訳ないですが……)
また、税務署へ納める消費税の計算をするためには、正しい税率で作られた請求書やインボイスの保存が条件になっています。
上記のような請求書だと、税率が正しくないという点で、消費税法で必要な書類として認められません。
その結果、相手の消費税の納税が増えてしまうことになります。
親切心からとはいえ、相手に迷惑をかけるようなことになってしまうのです。
なので、「上記のような形で」消費税だけ値引く・消費税を請求しないということはやめておいた方がよいのです。
じゃあ、どうなるか?
値引き自体は、問題ありません。
ただ、値引いた後の金額が、税込み(110%)となるのです。
すると、次のようになります。
(端数処理により、内訳は変わる可能性があります)
税率が10%ということは、値引いたあとも同じです。
つまり、免税事業者でもインボイス登録をしていなくても、消費税がかかる取引なら、消費税はかかるということなのです。
ムリな値引き要求は、法律違反になる
自分は課税で、取引の相手が免税やインボイス登録をしていない場合の話です。
独占禁止法では「優越的地位の濫用」について規制しています。
「取引してあげるから、○○してよ(相手にとってはやりたくない事)」はダメ、という規制です。
インボイス制度が始まると、インボイス登録をしていない相手に対し、値引きせずに同じ条件で支払いを続けると、現状よりも消費税の納税が増えます。
経過措置により、段階的に。
その増えた分を値引いてね、というのは「優越的地位の濫用」にはあたりません。
しかし、経過措置なども考慮せず、増えた分以上の値引きを要求する場合は「優越的地位の濫用」にあたる可能性があります。
値引き交渉をするとき、どれくらいを基準にしたらよいか気になる方は、インボイス登録をしない方目線の記事ですが、こちらも参考にしてみてください。
まとめ
消費税だけ値引くこと、消費税を請求しないことは考え方としてはアリです。
免税だから……インボイス登録しないから……という理由で、値引きをすること自体は問題ないですが、値引いたあとの金額は税込み(110%)の金額になる、ということを解説しました。
また、相手がインボイス登録をしていない場合は、値引き交渉をすることになるだろうと思いますが、値引きしてもらうなら根拠がないと独占禁止法違反となることも解説しました。
消費税が、どんどんややこしくなっていきます(汗)
※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいております。
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