減価償却をしないで利益を増やしてもよいのか
- 会社の減価償却は任意ってホント?
- 減価償却しないことで利益を増やせるの?
法人税では、減価償却は任意となっています。やってもいいし、やらなくてもいいのです。
(個人は任意ではなく、必ず減価償却を行います)
この仕組みを利用すれば、見せかけの利益を増やせますが、粉飾です。
まずバレますので、やらぬが吉ですよ。
減価償却費は計上しないことができる
建物や機械、車、パソコンなどのモノ(固定資産といいます)。
これらは、使う期間で分割して経費にしていきます。この仕組みを減価償却といいます。
購入したときに一括で経費にしてしまうと、会社の活動を正しく表していない、と考えるからです。
もし、購入した年度ですべて経費にしてしまうと、2年目からは、何かを利用しているのに、その跡が利益の計算には現れません。
○○を△△円分つかい、□□円の利益がでた。
利益の計算はこのようにしよう、というルールなのです。
また、一括で経費にできないのは、お金に余裕があるときに、高いモノを買って利益をドンと減らすことを防止する意図もあります。
後からの利益調整をさせないための仕組みでもあるのです。
この減価償却ですが、法人税での扱いがすこし特殊です。
というのも、法人税は一度つくった損益計算書をベースに計算するからです。
手順としては、次の2段階に分かれます。
- 損益計算書を作るときに、減価償却費を計上する
- その減価償却費のうち、法律で定めた上限までを、法人税の計算に組み込む
ポイントは、「損益計算書を作るときには、いくら減価償却費を計上してもよい」という点です。
法律による上限が「100」だとすると……
- 損益計算書の減価償却費が「300」……法人税の計算では「100」となります
- 損益計算書の減価償却費が「 20」……法人税の計算では「20」となります
※ 上限の金額で法人税を計算する、という事でもないのです。
もし、法人税の計算でも減価償却費を経費にしたいなら、そのベースになる損益計算書をつくるときに減価償却費も計上しなさいね、ということなのです。
法人税の計算で経費が減ってもいいなら、減価償却はやらないよ、と言うこともできます。
言い方を変えると「減価償却は任意」となるのです。
やってもいいし、やらなくてもよい。
減価償却費は、計上しないこともできるのです。
減価償却しなければ利益は増える
減価償却費も経費の一部なので、計上しなければ経費は減ります。
その結果、利益が増える。
法人税の計算が間違っていれば、後で「申告を直してくださいね」と言われる可能性があります。
場合によっては、延滞税など罰金もかかります。
一方、法人税のベースになる損益計算書が間違っていても、罰金などはかかりません。
損益計算書をつくるにあたってのルールはあるのですが、強制力はないのです。
減価償却は「毎期継続して規則的におこなう」というのがルールになってはいますが。
是非はともかく、減価償却費を計上しない、あるいは計上しても少しにする、ということは可能です。
これにより、パッと見の利益を増やすことはできるのです。
いわゆる粉飾決算です。
ただし、バレます
会社の決算書を、取引先や金融機関に見せることもあります。
こういうときって赤字だと気まずくなりますよね。
「なんで赤字なの?」って思われたくないですから。「経営者として、もしかしてダメ?」って思われそうですしね。
こういうときの、代表的な利益の操作方法が「減価償却をいじる」なのです。
法律に触れるわけでもないですし。
ただ、やってることは「相手をダマす」ですけどね。。。
減価償却をルール通りにやっていないことは、会社の固定資産台帳や申告書をみれば、すぐ分かります。
やればやったで「なぜ?」という質問が飛んできます。
かえって印象が悪くなるでしょう。
なので、減価償却を計上しない、本来よりも少なくする、はやらぬが吉なのです。
過去はしょうがないですが、将来は違うよ、という姿勢をみせましょう。
まとめ
法人税では、減価償却は任意となっています。
そのため、減価償却をいじって見せかけの利益を増やすこともできるのです。
しかし、バレます。
その結果、相手にかえって悪い印象をあたえることにもなってしまいます。
悩ましいケースとして、繰越欠損金を期限内に消化できないことが想像できます。
もともと資金がたくさんある、お金持ちの親族などから援助がある、などの理由で、赤字を続けても会社がもってしまうケースです。
誰かをダマすようなことがなければ、欠損金を消化するために、減価償却をいじることはどうなのか……
こういう特殊なケースはともかくとして、減価償却をいじる、粉飾決算はやらぬが吉ですよ。
※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいております。
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