夫婦で会社経営しているときの給与に関する注意点

夫婦で会社経営しているときは、片方が社長などとして役員報酬をとり、もう片方は社員などとして「給与」をとることがあります。

そのときの給与について、注意点を確認しておきましょう。

 

みなし役員

夫婦で会社を経営しているときは、「みなし役員」に気をつける必要があります。

みなし役員とは、肩書きは役員でないけれど、法人税においては役員あつかいとなる。

そんな存在をいいます。

 

もし、みなし役員となってしまえば、名目は「給与」であっても、「役員報酬」とおなじ縛りを受けることになります。

毎月おなじ金額でなければならない…といった。

だから、注意が必要なのです。

 

そのみなし役員になるかどうかは、つぎの2点で判断します。

両方とも当てはまるなら、みなし役員になるのです。

  • 経営に従事している
  • 一定割合以上の株式または出資をもっている

 

経営に従事している

経営に従事しているとは、主要な経営判断にかかわっていることをいいます。

営業であったり、仕入れや人事・大きなお金が動くとき…など。

こうしたことについて、仮に採用されなくても意見を言ったり、実際に行動をする。

それが経営に従事していることなのです。

 

夫婦の場合、とくにやっかいなのは「仕事の話は普段でもする」ことです。

むしろ、仕事の話をまったくしないほうが、珍しいのではないでしょうか。

 

「○○ということがあってさ、困ってるんだよね…」

「ふ~ん、なら△△してみれば?」

こういう会話は、まさしく経営会議。

 

かえって、経営に「従事していない」と言うほうが難しかったりします。

これは、実務でもとても頭を悩ます問題なのです。

 

一定割合以上の株式または出資をもっている

もし、夫婦のどちらかが50%超の株式または出資をもっているなら、必ずこの条件を満たします。

この判定をするとき、夫婦の場合は「相手のものは自分のもの」というようなところがあるので。

専門的な詳細が知りたいときは、「みなし役員 国税庁」などと検索してみましょう。

 

ここまでを振りかえると、夫婦で会社経営をしている場合に、片方が役員の肩書きをもっていなくても、どちらかが50%超の株式等をもっていれば、みなし役員になる可能性が高い。

ということを知ったうえで、その方への給与についてみていきましょう。

 

給与に関する注意点

給与について注意すべきなのは、次のことです。

  • 毎月の給与は定額が安全
  • ボーナスには届出が必要
  • 金額の設定について

 

毎月の給与は定額が安全

夫婦の場合は、役員の肩書きをもっていなくても、みなし役員になる可能性が高いです。

なので、役員ではない方への給与は、毎月おなじ金額にしておくほうが安全です。

そうでないと、経費にならない部分がでてきてしまうので。

 

そもそも、みなし役員の制度は、家族の給与をつかった利益調整を防止するためのもの。

たとえば自分で会社をつくり、奥さんを社長にして、自分は一社員とする。

このとき、もしみなし役員の制度がなければ、自分への給与で利益調整は可能です。

こういったことを防止するための制度なのです。

 

なので、よほどハッキリ「経営には従事していない」と主張できないのなら、毎月の給与は定額にしておくほうが安全です。

 

ボーナスには届出が必要

みなし役員へのボーナスは、事前確定届出給与とおなじ扱いになります。

株主総会などで、金額・支給日を決める。

その内容を、期限までに税務署へ届け出る。

そして、その内容通りに支給する。

こんな段取りを踏むのです。

 

おなじく、よほどハッキリ「経営には従事していない」と主張できないとき。

そんなときは、ボーナスにも注意しておきましょう。

 

金額の設定について

夫婦あわせた税金を考えたとき、いちばん節税になるのは、基本的には、夫婦ともに同じ金額の役員報酬または給与です。

そうすれば、夫婦の所得税率はおなじになるので。

住宅ローン控除やふるさと納税、医療費などがあると、変わってはきますけれどね。

 

ですが、給与の金額が仕事に見合っていないと、それも問題になります。

やった仕事にたいして、給与が高すぎるとき。

その高すぎる部分は経費にならない…というルールもあるので。

 

また、かりに夫婦おなじ金額にしたとしても、社会保険のことがあります。

おなじ金額にしないで、片方だけが社会保険に加入する。

すると、税金でも社会保険でも「扶養」になることができるかもしれません。

そのときに、夫婦あわせた税金・社会保険の節税になることもあるのです。

 

こうしたことも踏まえて、金額の設定にも注意しましょう。

夫婦で会社経営をするときは、「みなし役員」の問題がかなりの確率でかかわってきます。

なので、給与には注意すべきことがあるのです。

 

まとめ

夫婦で会社経営をしているときは、肩書きが役員ではなくても、税法上のみなし役員になる可能性が高いです。

すると、名目は給与であっても、役員報酬とおなじ縛りを受けることになります。

それを前提に、給与の金額などを決めるようにしましょう。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。