社長が他所でパート等をするときの注意点

複数の給与があることは、パート・アルバイトをしているところに伝わることがあります。

それを防ぐ方法も、確認しておきましょう。

 

給与が複数あることはバレることがある

起業したものの、うまく軌道に乗らず、すこし他所でパート・アルバイトをする。

こんなことも、起業時にはあるかもしれません。

 

そんなときは、自分の会社からの役員報酬。

そして、パート等をしているところからの給与。

この2つが収入になります。

 

このとき、パート等をしているところに、そこ以外の給与もあることが伝わってしまうことがあります。

(役員報酬は給与にふくまれます)

自分から言わないかぎり、その原因はつぎの2つが考えられます。

  • 社会保険(健康保険・厚生年金)
  • 住民税の通知

 

ひとつめの社会保険は、一般に、つぎの条件を満たすときには加入しなければなりません。

  • 週の勤務時間が20時間以上
  • 給与が月額88,000円以上
  • 2か月を超えて働く予定がある
  • 学生ではない

 

当然、自分の会社では、加入しているはずです。

もし条件を満たして、パート等をしているところでも加入すると、どうなるか。

 

このときは、自分の会社からの役員報酬と、パート等をしているところの給与。

これらを合算して、社会保険料の計算をします。

その後、それらの割合におうじて、自分の会社とパート等先へ、社会保険料を按分します。

ということの過程で、給与が複数あることが相手に伝わってしまうのです。

 

それから、住民税の通知。

給与にたいする住民税の支払いは、原則として給与からの天引きによります。

(この支払方法を、特別徴収といいます)

 

このとき、いくら天引きするのかは、お住まいの市役所や区役所などが計算をします。

ただし、すべての給与を合算して。

その後、会社あてに通知がとどくのです。

 

もし、パート等をしているところに通知が届けば…

いつもの給与と住民税の比較により、ほかにも給与収入があることが伝わってしまうのです。

(伝わるのは金額のみで、どの会社から…ということは伝わりません)

 

バレないようにするには

せっかく起業したものの、すぐには上手くいかないとき。

そんなときは、ほかの収入を確保せざるを得ません。

でも、それを人に言うのは、ちょっと恥ずかしいかもしれないし、悔しいかもしれないですよね。

 

そんなときにパート等をしているところから、「ほかにも給与があるの…?」と。

自分が社長だということは伝わらないにしても、気になるかもしれないですね。

これを避けるには、気を付けることがあります。

 

社会保険のほうは、ひかくてき簡単です。

週にはたらく時間を、20時間未満にすればよいので。

ただし、ひとくちに社会保険といっても、さまざまな団体があります。

そして、団体により、加入条件は変わる可能性があります。

その会社や事業主がどの団体に加入しているかは分からないので、前もって確認しておきましょう。

 

それから、住民税の通知のこと。

この通知は、「主たる給与」を払っているところ宛てに届きます。

 

給与が複数あるときは、そのうち1つが「主たる給与」となり、それ以外は「従たる給与」となります。

その違いは金額ではなく、年末調整に必要な書類を提出しているかどうか…によります。

年末調整は、1か所でしかできないので。

 

給与が1か所からだけで、ほかの収入がなければ、年末調整をすることで確定申告は不要となります。

でも、たとえば給与が2か所からあるときは、合算しなければ正しい税金は計算できません。

2か所それぞれで年末調整をしても、正しい金額にはならないのです。

収入が増えれば、税率もあがるので。

 

そんな理屈で、年末調整は1か所でしかできないようになっています。

すべてのところで年末調整をした結果、「確定申告はいらないんだね」と思ってもらわないために。

また、複数の給与を合算して年末調整をすることは、まず不可能ですし。

 

この年末調整をしたところが、「主たる給与」を払っているところになる。

そして、そこへ住民税の通知が届くことになる。

 

であれば、自分の会社を「主たる給与」を払うところにし、パート等先を「従たる給与」を払うところにする。

これで、住民税の通知は、パート等先には届かないことになります。

そのためには、パート等を始めるときには「ほかにも給与があり、そちらで年末調整をする」ということを伝えておきましょう。

(このときには、自分が社長であることは言わなくてもよいはずです)

 

このことがちゃんと伝わっているかどうかは、給与明細にもあらわれます。

複数の給与があるときは、所得税の計算方法には「甲欄」と「乙欄」の2通りがあるのです。

年末調整に必要な書類を提出すると、甲欄。

そうでないときは、乙欄。

なので、パート等先が乙欄になっているか、確認しておきましょう。

「源泉徴収税額表」をつかえば、計算できますから。

 

事業がすぐに軌道にのらないことは、ままあることです。

そんなときに、すこしでも余計な雑音がないようにする。

パート等をするなら、気にしてみてください。

 

まとめ

社長が他所でパートやアルバイトをするときに、給与が複数あることがバレることがあります。

それを防ぐ方法について、みてきました。

事業は、すんなり上手くいくほうが珍しいもの。

諦めそうになったとき、拠り所になるのは起業時の想いかもしれません。

「どうして起業したのか」は、振り返れるようにしておきましょう。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。