値付けのヒントをどこに求めるか

値付けひとつで、売上も利益も左右されます。

その値付けのヒントは、大部分が相手・お客さまのなかにあります。

でも、それだけに依存すると「しょうがない…」がふえてしまうかもしれません。

 

自分の売上は相手にとってなにか

たとえば、現金でなにかを売り上げたときは、つぎのようなデータを会計ソフトに入力します。

(これを仕訳ともいいます)

借方 貸方
現金 ×××円 売上 ×××円

 

 

これは、自分からみたときのこと。

相手にとっては、お金をはらって何かを手にいれた…というデータが存在します。

つぎのように。

○○費 ×××円 現金 ×××円

 

 

この「○○費」がなにになるかは、相手・そして相手の状況によっても変わります。

たとえ同じものを売っていたとしても。

 

たとえば、あるモノを売っているなら、相手の「○○費」には、次のような可能性があるでしょう。

  • 仕入れ
  • 消耗品費
  • 交際費(贈答品)
  • 研究費
  • プライベートのもの(事業主借) など

 

自分が売っているものが、相手にどんな使われかたをするのか、どんな役に立つのか。

…とかんがえるのは、事業のあり方・やり方の参考になります。

相手の「○○費」の数だけ、自分の売っているものには可能性があるので。

 

ときには、売れる・あるいは売れない原因にもなります。

相手にとっては、「雑損失」の可能性だってあるかもしれないですし。

雑損失とは、ざっくり「役に立たなかった」という意味です。

もしそうなるなら、次はないかもしれません。

 

ここまでは、売っているものと値段がつりあっているときの話。

つりあっていないと、どんな感じになるのか…?

 

値段の感じかた

値段をきめるのは、とてもむずかしいことです。

売りたい値段と買いたい値段が、おなじになるのが理想です。

でも、そうなることはなかなかありません。

 

たとえば「300円」で売りたいとき。

理不尽なことをいわれて「100円」まで値引きをしたときは、つぎのようなデータになるかもしれません。

(以下の仕訳・科目は、実質をあらわす説明上のもので、現実では使いません)

現金 100円 売上 300円
理不尽な値引き損 200円    

 

ぎゃくに、口先で上手いことを言って「500円」で売ってしまったのなら、つぎのように。

現金 500円 売上 300円
    ボッタクリ益 200円

 

 

こうしたことは、相手からみてもおなじです。

相手の満足度におうじて、上のようなデータがかんがえられます。

 

もし、「300円」のものに、相手が「100円」の価値しか感じないなら、つぎのようになるでしょう。

○○費 100円 現金 300円
損した気分… 200円    

 

いっぽう、「300円」のものに「700円」の価値をかんじるなら、つぎのとおり。

○○費 700円 現金 300円
    とても満足! 400円

 

 

値段、つまりお金は、モノやサービスのただしい価値をあらわすとはかぎらないわけです。

「目利き」という言葉も存在するくらいですから。

でも、値段をきめるのも、経営者の仕事。

 

値付けのヒント

値段には、すくなくとも次の3つのものが存在します。

  • 売り手がきめるもの……採算がとれるか・必要な利益は?
  • 買い手がきめるもの……満足度・手持ちのお金に見合っているか
  • 世間がきめるもの……相場・需要と供給

 

これら3つを考慮するだけでも、とても大変です。

すこし割り切って、つぎのような考え方をすることもできます。

  • 食べていくための値段……「しょうがない」
  • 希望の値段……「これくらいは欲しい」
  • 成長するための値段……「高いお金をもらうなら後にはひけない。かならず何とかする」

 

値付けのむずかしさは、満足度のような数字であらわせないものを考慮するところにあります。

  • ホンネのところ、相手はどうおもっているのか
  • 自分の売っているものが、相手にどんな使われかたをするのか

こうしたことが、値付けのヒントになるわけです。

 

いっぽうで、自分の都合だってあります。

説明のつごうでヘンな言葉をつかいましたが…

自分の売上のなかに、「理不尽な値引き損」や「ボッタクリ益」がどれくらいふくまれているか。

どれくらいだったら採算がとれるのか。

こうしたことも、ヒントになるわけです。

 

値段と仕事は、つりあっているほうがよいはずです。

働きがいにも影響しますし。

であれば、自分にみえる範囲のヒントは押さえておきましょう。

そこから始めて、試行錯誤しながら、徐々にあわせていけばよいので。

 

そうすれば、少なくとも自分の値段(お金)について、納得感が得られます。

そして、もし、もっと必要なら、何かを変えなければならない…とおもうはずです。

「しょうがない」とかじゃなくて、わりと素直に。

 

すると、行動も早まります。

やっぱり、行動って大事ですから。

行動しないと、変わらないことって多いはずです。

そのハードルが下がるわけです。

自分の売上を、数字で掘り下げることにより。

 

値付けのヒントは、自分のなかにもありますが、相手にもある。

でも、その相手のことは、なかなか分からないのが実情です。

であれば、すくなくとも自分のことは、数字でも、押さえておきましょう。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。