会社の経費にならない税金・なる税金
税金をはらえば、とうぜん経費になるはず…とおもってしまいます。
でも、中にはそうではないものもあるのです。
経費になるものとあわせて、確認しておきましょう。
目次
経費にならない税金
まずは「経費にならない」という表現について、お断りをしておきます。
というのも、「経費にはなるが、損金にはならない」が正しい表現だからです。
ただ、「損金」という言葉はふだん聞かないものだと思います。
なので、そこから確認していきましょう。
その「損金」は、法人税法上の言葉です。
法人税を計算するときの経費…という意味合いのもの。
いっぽう「経費」というのは、損益計算書における言葉です。
この経費には、合法・非合法とわず、すべてのものがふくまれます。
経費というのは、つまり「○○という理由でお金がでていった」ことをあらわすものです。
そして、損益計算書(決算書)は、会社のすべての経済活動を表示しなければなりません。
いちぶを隠せば、二重帳簿のようなことになるし、株主だって怒りますから。
なので、損益計算書にはすべてのものがふくまれるわけです。
ただ、法人税の計算をするときは、いくつかの理由により、損金にはしないものがあります。
それが、今回の記事でいう「経費にならない税金」です。
具体的には、つぎのとおり。
- 法人税・住民税
- 税金にかかる罰金
- ふだんの罰金
法人税・住民税
法人税と住民税が経費にならないわけは、「もし経費になるなら…」と考えると分かりやすいです。
(以下、法人税等と略します)
たとえば、3期連続で、税引き前の利益が「100」だったとしましょう、
法人税率は、「30%」とします。
すると、もし法人税等が経費になるなら、つぎのようになります。
1期目 | 2期目 | 3期目 | |
税引き前の利益 | 100 | 100 | 100 |
法人税等 | △0 | △30 | △21 |
税引き後の利益 | 100 | 70 | 79 |
翌期にはらう法人税等(30%) | 30 | 21 | 23.7 |
…とこのように、税引き前の利益がおなじなのに、法人税等の金額はかわっていきます。
なにか公平ではないような。
税金は、いつでも・誰にとっても、おなじでなければ不公平ですから。
このようなわけで、法人税・住民税は経費にならないのです。
(参考記事)税務上、法人税は経費にならない。その理由は?
税金にかかる罰金
税金にかかる罰金には、次のものがあります。
- 税金をおさめるのが期限後になったとき……延滞税・延滞金
- 申告が、ルール通りでなかったとき……加算税・加算金(何種類か存在します)
- 印紙をはっていない、はっても消印していないとき……過怠税
もし、これらが経費になるなら、そのぶん法人税が少なくなります。
すると、罰金の効果もうすれてしまう。
なので、上記のものは経費にならないのです。
ふだんの罰金
税法だけではなく、行政上や刑法上の罰金もあります。
たとえば駐車違反のように。
これら罰金についても、法人税の軽減効果をもたせることはできないのです。
「急いでいるから駐車違反してもよいか。税金もへるし」
こんな風に思ってもらってはこまる…というわけなのです。
なので、ふだんの罰金も経費になりません。
経費になる税金
経費になる税金には、次のようなものがあります。
- 事業税
- 印紙税
- 固定資産税(償却資産税をふくむ)・自動車税
- (給与から天引きする源泉所得税・住民税)
事業税
事業税は、法人税・住民税とおなじく、利益にたいしてかかります。
なのに、事業税だけは経費になります。
というのも、事業税は「行政サービスをうけるためにはらう」という側面があるからです。
サービスの対価、いわば経費です。
いっぽうの法人税・住民税は、「儲かったらはらってね」という考えかたをします。
(住民税の均等割はのぞきます)
法人税・住民税そして事業税は、おなじタイミングではらうものです。
でも、このような違いがあることを知っておきましょう。
印紙税
印紙税とは、つまり印紙です。
契約書にはったり、法務局で登記簿などをとるときに買うもの。
この印紙は、経費になります。
ただ、つかうときには、印鑑をおして消印するのを忘れないようにしましょう。
過怠税という罰金がかかってしまうので。
固定資産税(償却資産税をふくむ)・自動車税
固定資産税も自動車税も、経費になります。
ただし、不動産を購入するときの「固定資産税等精算金」は経費になりません。
この精算金は、不動産の取得価額にふくめます。
それが建物なら、減価償却により、少しずつ経費になっていくのです。
固定資産税は、1月1日にその不動産をもっているかたに、1年度分すべてが課税されます。
年度の途中で持ち主がかわっても、それぞれに固定資産税をわける…ということを、役所はやってくれないのです。
そこで、「持っている期間におうじて固定資産税をわけましょう」とでてきたのが、固定資産税等精算金です。
固定資産税等精算金は、役所ではなく、まえの持ち主にはらうものです。
なので、税金ではなく、売買代金のいちぶとして、はらうものなのです。
このような理由で、固定資産税等精算金は経費になりません。
(給与から天引きする源泉所得税・住民税)
給与から天引きする源泉所得税・住民税は、それをはらったときには経費になりません。
ただ、給与をはらったときに、すでに経費になっています。
給与をはらうときは、源泉所得税・住民税を控除した残りをはらうわけなので。
源泉所得税・住民税をはらったのに経費にならない…と聞くと、ギョッとするかもしれませんね。
でも、これらは給与の一部なので、すでに経費になっているのです。
消費税のこと
消費税は、税込み経理をしているなら、経費になります。
いっぽう、税抜き経理をしているときは、経費とはあつかいません。
(損益計算書ではなく、貸借対照表にあらわれます)
でも、どちらの経理方法でも、利益はおなじになります。
(固定資産を取得したときは、耐用年数のあいだ利益にズレがでることがあります)
このあたりを確認しておきましょう。
たとえば、売上「110(税込み10%)」だけがあったとします。
このとき、消費税の納税は「10」です。
このことが、損益計算書では、つぎのようにあらわれます。
税込み経理 | 税抜き経理 | |
売上 | 110 | 100 |
経費(租税公課) | △10 | 0 |
利益 | 100 | 100 |
どちらの方法でも、利益はおなじく「100」です。
ただ、税抜き経理をしているときは、経費としてはあらわれません。
だからといって、損しているわけでもない…
てもとに残るお金は、おなじく利益のぶんの「100」ですから。
このことは覚えておきましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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