脱税と節税の違いは「過去と将来のどちらを変えるか」にもある
脱税と節税のちがいは、基本的に「合法か非合法か」にあります。
その手法をかんがえるとき「過去を変えるのか将来を変えるのか」という視点もあります。
そこで得られるものも考えてみましょう。
脱税と節税の違い
脱税も節税も、ともに「税金がすくなくなること」を意味する言葉です。
その違いは「合法かどうか」にあります。
脱税とは
脱税は、非合法に税金をすくなくすることをいいます。
ニュースなどでも見聞きする代表的な手法には、次のようなものがあります。
- 売上を隠す
- 架空の経費
- 無申告
これらは明らかに税金の法律にそっていないものなので、脱税の範疇にはいるものです。
ただ、税金のルールには曖昧なぶぶんもおおくあり、脱税という言葉のインパクトは強烈です。
だれでも「脱税をしたひと」とは言われたくないでしょう……
そこで「申告モレ」という言葉もそんざいします。
「わざとやったわけではない」
「見解の相違だ」
このような理由で、結果的に税金をすくなくしたことをあらわす言葉です。
厳密には、脱税は「偽りその他不正の行為により」おこなわれるもので、罰金や懲役刑がかされることもあるものです。
ですが、まっとうに生きていて厳密な脱税をするかたはきわめて少数のはずです。
ざっくり「脱税とは非合法に税金をすくなくすること」と覚えておきましょう。
節税とは
いっぽう節税は、合法的に税金をすくなくすることをいいます。
- 青色申告をする
- 消費税の原則・簡易をつかいわける
- 役員報酬の設定により、会社・役員トータル税金をすくなくする
脱税とのちがいは、頭をつかったり、知識や準備が必要なところにあります。
ところで、節税とおなじく合法ではあるものの「租税回避」という言葉もそんざいします。
これは「合法だけど法律の趣旨にはそっていない」ことをあらわす言葉です。
たとえば「カメラでのお写真撮影は禁止します」とあったとき
「スマホならいいよね。だって書いてないし」
「写真じゃなくて動画ならよいかな。だって書いてないし」
このようなことを租税回避といいます。
憲法には、次のようにさだめられています。
「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」
これを逆からよむと、「法律に定めてなければ、税金がかされることもないし、罰則もない」ということになるわけです。
そこで、法律の抜け穴をつくようなこともおこなわれ、それが租税回避とよばれるものなのです。
そこで始まるのが、いたちごっこです。
さきほどの「カメラでのお写真撮影は禁止します」をかいた人は頭にくるので、とうぜん変えてきます。
たとえば次のように。
「カメラおよびスマホなどを含む全ての写真および動画撮影機能がついた機器等による写真および動画撮影を禁止します」
じつは税金の法律は、このように長く読みにくいものがおおいのです。
それは、長年かけて抜け穴をつかれないように、改正を重ねてきたことも理由だったりします。
租税回避のことはいったん置いといて、「節税とは合法的に税金をすくなくすること」と覚えておきましょう。
ところで、脱税と節税のちがいは、合法・非合法だけではなく、時間の観点からもかんがえることができます。
過去を変えるか・将来を変えるか
脱税と節税ともに、現状からなにかをかえることによって税金をすくなくします。
そこで出てくるのが次の方法です。
- 過去を変える
- 将来を変える
過去を変える
脱税の代表的な手法である「売上隠し」や「架空経費」は、ともに過去を変えるものです。
- 売上がなかったことにする
- 経費があったことにする
どちらも、いってみれば「簡単な方法」です。
もしかしたら度胸とかヤミの世界の伝手などが必要なのかもしれませんが、それほど頭をつかうわけでもなく簡単です。
でも、そこから得られるものは「税金がすくなくなること」だけです。
ほんらい経理は、自分のためのものです。
- ちゃんと帳簿をつくって現状を把握する
- その現状から変えたいところを見つけ、行動を変える
- 行動を変えた結果、将来がよくなっていく
もしかしたら、起業したときはお金をうまく稼げないかもしれませんが、経理の数字を確認しながら行動をかえ、より稼げるようになっていく。
このように活用するのが経理ほんらいの役割なのです。
脱税をすれば今のお金はふえるかもしれませんが、将来のお金はふえません。
過去を変えると、将来を失うのです。
なお、脱税ではなく節税の手法には、条件がととのっているときの短期前払費用のように過去の経理を複数の選択肢のなかから選ぶことで税金をすくなくできるものもあります。
過去を変えるのがすべていけないという訳ではないので、念のため付記しておきます。
将来を変える
節税には、将来の税金をすくなくするために知識や試算・準備が必要なものもあります。
さきほど書いた消費税の計算方法や役員報酬が、その代表例です。
これらは脱税とはちがい、視点は将来にむいています。
過去・現在・将来とあったとき、変えられるのは将来だけです。
そのためには、現在を正しく把握するところからスタートです。
そして行動を変えていく。
でも、これを節税のためだけに活用するのはもったいない気もします。
だって「税金がふえると手取りのお金もふえる」のが道理なので。
できる節税をするのは当然のことですが、節税以上にお金をふやすことも考えてみましょう。
まとめ
脱税と節税のちがいは、基本的に「合法かどうか」にあります。
そのための手法をかんがえるとき、視点が将来をむいているのが望ましいです。
過去は変えられない、と腹をくくりましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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