売掛金などの「中味が分からない」を防止する方法

売掛金や未収入金・買掛金・未払金などの中味が分からなくなることがあります。

その原因と防止する方法をみていきましょう。

 

売掛金などの中味が分からなくなる原因

売上は、お金を受けとったときではなく、商品を渡したりサービスを提供したときに計上します。

ですが、会計ソフトには、売上だけを入力することはできません。

そのときに使うのが「売掛金」です。

 

次のように仕訳(データ)を入力するのです。

借方 貸方
売掛金 ○○円 売 上 ○○円

 

そして、口座へ入金があったときは、次のように入力します。

預 金 ○○円 売掛金 ○○円

 

この一連の流れで、売掛金の増減は次のようになります。

(サンプルの数字をいれます)

仕訳 売掛金の増減(残高)
売掛金 100円 売 上 100円 売掛金は100円ふえる(残高=100円)
預 金 100円 売掛金 100円 売掛金は100円へる (残高=0円)

 

このように、ちゃんと残高「0円」になればよいのですが、そうではないときもあります

たとえば、次のように振込手数料をひかれて入金されるときです。

仕訳 売掛金の増減(残高)
売掛金 100円 売 上 100円 売掛金は100円ふえる(残高=100円)
預 金 90円 売掛金 90円 売掛金は90円へる(残高=10円)

 

ほんらい、入金されたときは次のように入力します。

預金 90円 売掛金 100円
手数料 10円    

 

これで売掛金が100円へるので、残高は「0円」になるわけです。

ちゃんと「0円」にならない状態のことを、「売掛金の残高があわない」と表現します。

 

その売掛金の残高があわなくなるのは、振込手数料以外にも次のようなことがあります。

  • 売掛金(売上)を計上し忘れた
  • 入金されたときに「売掛金」ではなく「売上」とした
  • 請求をまちがった
  • 請求と入金額がちがう
  • 相手を取り違えた

 

こうしたことの積み重ねで、いざ申告をしようとするときに「売掛金の中味が分からなくなる」のです。

とくに法人は、申告書に「勘定科目内訳書」を添付しなければなりません。

そこには売掛金の中味を書くのですが、中味が分からなければ書きようもありません。

 

なお、中味が分からなくなるのは売掛金にかぎったことではなく、未収入金・前払費用・買掛金・未払金・などほとんどすべての資産・負債があてはまります。

 

中味が分からなくなるのを防止するためにはどうするか……?

 

売掛金などの中味が分からないを防止する方法

定期的にチェックをするのも大事ですが、チェックの負担を緩和するために次の方法もあります。

  • 勘定科目をふやす
  • 補助科目をつかう

 

勘定科目をふやす

「売掛金」「売上」などを勘定科目といいます。

この勘定科目は、自由に決めることができます。

 

たとえば「売掛金 A社」としてもよいのです。

入力するときには相手を間違えないように気をつかう必要があるので、あまり多くなっても困るかもしれません。

なので、取引がおおきい相手は「売掛金 ○○」として、そのほかは「売掛金 その他」とまとめてしまってもよいでしょう。

 

こうすれば、売掛金の流れを追いかけやすくなります。

 

ただし、決算書をつくるときは注意しましょう。

というのも、決算書にはすべての勘定科目が載るからです。

 

もしかしたら、たくさんある売掛金は一つの「売掛金」にまとめたほうがよいかもしれません。

次のような仕訳により。

売掛金 (右の合計) 売掛金  A社 (残高をすべて)
  売掛金  B社 (残高をすべて)
  売掛金  C社 (残高をすべて)
  売掛金 その他 (残高をすべて)

 

この方法は、かえって手間がふえるように感じるかもしれません。

ですが、いちど「中味が分からなくなる」と、結局はすべてのデータを振り返ることになります。

最終的には「こまめに中味を合わせておく」ところに行きつきます。

ですが、すべての売掛金が一つの勘定科目にまとまっているよりかはチェックしやすくなるでしょう。

 

補助科目をつかう

会計ソフトには「補助科目」が存在します。(これがないソフトもあります)

補助科目とは、ある勘定科目の中味のうち、特定のものだけを選り分けられるように設定するものです。

 

たとえば「A社」の「売掛金」。

このとき、「A社」が補助科目で「売掛金」が勘定科目です。

 

会計ソフトに入力するとき次のようにしておけば、A社の売掛金だけを抜きだすことができるのです。

  • 勘定科目……売掛金
  • 補助科目……A社

 

売掛金をたくさんの「勘定科目」にわけるのと同じように、中味を追いかけやすくなります。

そして、「補助科目」は決算書には載りません。

たくさんになった売掛金をまとめるための入力も必要ないのです。

 

「中味が分からない」のは放置してはいけません。

これから入ってくる・出ていくお金がわからないのと同じだからです。

 

経理には、どうしてもかかってしまう最低限の手間や時間があります。

いちど「中味が分からなくなる」と、分かるまで過去のデータを振り返ることになります。

間違いさがしは、いちばん時間がかかるのです。

 

ふだんのチェックの負担をなるべく緩和しつつ、いつでも「分かっている」状態にしておきましょう。

 

まとめ

売掛金などの中味が分からなくなることは、気をつけていたとしてもあり得ます。

会計ソフトは、入力したあとのチェックが大事なのです。

そのチェックの負担を、すこしでも緩和するために勘定科目をふやしたり補助科目をつかうことを検討しましょう。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。