法人は個人向けの会計ソフトを使えるか

法人は、個人向けではなく法人向けの会計ソフトを使いましょう。

個人向けのものを使い続けたあとに待ち受けることを解説します。

 

会計ソフト 個人向け・法人向けの違い

会計ソフトには個人向け・法人向けのものがありますが、両者のおおきな違いは次のとおりです。

  • 年度の設定
  • 科目 
  • 作成できる書類
  • 値段

 

それぞれ違いをみていきましょう。

 

年度の設定

法人向けの会計ソフトでは年度が自由に設定できるのにたいし、個人向けのものは「1月~12月」で固定です。

個人向けのものは、年度を自由に設定することができないのです。

 

というのも、個人向けの会計ソフトは所得税の計算のためにつくられているからです。

所得税は、1月~12月の1年間の所得にたいして計算されます。

そのため、それ以外の期間を設定できるようにはつくられていないのです。

 

科目

個人でしかつかわない科目。

法人でしかつかわない科目。

それぞれ存在しますが、たとえば次のとおりです。

 

  • 個人でしかつかわないもの
科目名 内容
事業主貸・事業主借 事業とプライベートのお金やモノが混じらないように設けられた科目
元入金

法人における資本金にあたるもの

ただし、事業主貸・事業主借が相殺される

 

  • 法人でしかつかわないもの
科目名 内容
資本金 法人を設立するときに発起人が払いこむ事業の元手になるもの
繰越利益剰余金 法人を設立してからその時までの利益の累積

 

作成できる書類

個人向けの会計ソフトでは、所得税・消費税(個人)の申告に必要な書類しかつくることができません。

確定申告書、青色決算書、消費税の申告書などです。

 

いっぽう法人向けの会計ソフトは、法人税の申告につかう決算書をつくることができます。

その決算書には、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表がふくまれます。

 

貸借対照表と損益計算書はそれぞれに共通のものですが、「株主資本等変動計算書」は法人向けでしかつくれません

というのも、個人には株主が存在しないからです。

この点は大きな違いです。

 

値段

個人向けよりも、法人向けのほうが値段は高いです。

すべての会計ソフトを調べたわけではないので断言はできませんが、値段帯はだいたい次のとおりです。

  • 個人向け……1万円~3万円
  • 法人向け……5万円~

 

ちなみに法人向けのものでも、個人の所得税用の会計データをつくることができるものもあります。

そういったこともあり、法人向けは個人向けよりも2~3万円高くなっているのだろうと思います。

 

では、法人は個人向けの会計ソフトを使えるのか、について考えてみましょう。

 

法人が個人向けの会計ソフトを使うとどうなるか

法人が個人向けの会計ソフトを使うと、次の問題がおこります。

  • 年度
  • 科目
  • 作成する書類

 

それぞれ解説します。

 

年度

法人の年度が「1月~12月」だったら違和感がないかもしれませんが、「4月~3月」だったらどうでしょうか。

個人向けの会計ソフトでは、「1月~12月」以外の年度はつくれません。

 

もし個人向けのものを使うのなら、次のようにする必要があります。

  • 2年分のデータから「4月~12月」と「1月~3月」を抜きだして合体させる

 

抜きだすことはできますが、どこで合体させるのか……?

ここで法人向けの会計ソフトが必要になってしまいます。

 

つぎに説明する科目の問題とあわせて、ちょっと無理があります。

また、期中に利益を確認したいときにパッと見ることができないという問題ものこります。

 

科目

個人向けの会計ソフトでは、データを次の年度に繰り越すときに、事業主貸・事業主借が相殺され元入金に組み込まれます。

法人にとっては、次のものが一緒くたにされることになるのです。

  • 資本金
  • その時までの利益
  • 個人のお金で法人の経費を払った
  • 法人のお金で個人の支払いをした など

 

法人において、これらは別々の科目で経理する必要があります。

また、申告をするときには法人用のデータをつくらなければなりません

そのため、いつかは事業主貸・事業主借の内容を慎重に判断して、法人専用の科目に振り分けなければならないのです。

 

そして、その振り分けをするには法人向けの会計ソフトが必要になります。

 

作成する書類

貸借対照表、損益計算書はつくれないことはないですが、株主資本等変動計算書をつくるためには利益が必要です。

ここまで書いてきた年度と科目の問題を片付けなければならないのです。

 

会計ソフトが出回るまえは、経理はすべて手書きでやっていました。

なので、すべての経理をソフトをつかわずに行うこともできるわけです。

ただ、その手間を省くためにソフトが存在します。

 

法人向けの会計ソフトは個人向けより数万円ほど高いです。

ですが、その値段の違いはここまで書いてきた内容を十分にペイできるのではないかと思います。

法人は、法人向けの会計ソフトをつかうほうがよいでしょう。

 

まとめ

個人向け・法人向けの会計ソフトの違い。

法人が個人向けの会計ソフトを使うとどうなるか、について解説しました。

 

個人事業主が1月に法人を設立するときは、それまで使っていた会計ソフトをそのままつかい続けることもあります。

ですが、いつかは法人用のものに切り替えなければならない。

それもなるべく早く。

切り替える作業もけっこう大変ですから。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。