利益の使い道を考える前に知っておくべきお金のこと

黒字になればお金はふえるのが道理ですが、利益とおなじ金額がふえるとはかぎりません。

「いくら使えるのか」を知るために、利益とお金の関係を知っておきましょう。

 

使うのは利益ではなくお金

黒字になったとき、「その利益をどう使うか」と考えるのは楽しいですよね。

将来の可能性が増えるわけですし、お金をつかうこと自体も楽しいときがありますから。

 

でも、その利益を鵜呑みにしてはいけません。

というのも、利益とおなじだけお金が増えるとは限らないからです。

利益が「100万円」だからといって、つかえるのが「100万円」とは限らないのです。

 

当たり前と思われるでしょうが、つかうのはお金であり、利益ではありません。

なので、利益とお金のズレは知っておかなければならないのです。

つかってはいけないお金をつかい、後で困らないように。

 

利益を見るときに知っておくべきお金のこと

利益とお金の増減がズレる原因は、おもに次のところにあらわれます。

  • 借入れ
  • 減価償却費
  • 売掛金など資産の増減
  • 買掛金など負債の増減

 

それぞれを確認しましょう。

 

借入れ

借入れをしたときは収入にならず、税金もかかりません。

その代わり、元本を返済したときも経費にはなりません。

返済は、利益からおこなうのです。

(借りたお金に手をつけていなければ話は別です)

 

そのため、利益と借入れ返済の関係を次のようにとらえましょう。

 

もし「使えるお金」以上につかってしまえば、返済が滞ることになるのです。

すくなくとも、来年1年の返済額はおさえておきましょう。

 

減価償却費

固定資産は、購入したときに全額が経費になるわけではありません。

減価償却費として、購入代金を何年かで分割して経費にするのです。

 

お金は購入したときにすべて出ていきますが、減価償却費が計上されるときには出ていきません。

そのため、減価償却費のぶん、お金は利益よりも多くふえるのです。

 

なお、固定資産をつかいはじめた年度ではどうなるか……?

利益をみるときに、次の2つの要素をくわえるのが分かりやすいと思います。

  • 購入代金はすべて経費にならない(と考える)
  • 減価償却費は上記とおなじく

 

売掛金など資産の増減

売掛金がふえると、お金と利益の関係は次のようになります。

 

この仕組みはややこしいので、サンプルの数字をつかってみてみましょう。

  • 売上が「100」で、経費は「0」
  • 売上「100」のうち、お金で回収していないもの(売掛金)が「30」残っている
  • 前期末のことは考慮しない

 

利益は「100」なのに、お金は「70」しかふえない。

その原因は、売掛金が「30」あるからです。

 

これは、次のように言い換えることができます。

  • 売掛金が「30」増えたぶん、お金の増加は利益よりもすくなくなる

 

なお、売掛金が減ったときは逆の現象がおこります。

また、この仕組みは売掛金だけではなく、お金以外のすべての資産について同じです。

 

買掛金など負債の増減

買掛金がふえると、お金と利益の関係は次のようになります。

 

さきほどと同じく、サンプルの数字をつかって確認しましょう。

  • 売上が「100」で、経費は「70」
  • 経費「70」のうち、お金を払っていないもの(買掛金)が「20」残っている
  • 前期末のことは考慮しない

 

利益は「30」なのに、お金は「50」もふえている。

その原因は、買掛金が「20」あるからです。

 

つまり買掛金がふえると、そのぶんお金は利益よりも多くふえるのです。

もちろん、買掛金が減ったときは逆のことになります。

 

資産・負債の増減については「ピンとこない」という感想をもつかたも多いので、すぐに理解できなくても大丈夫ですよ。

(いずれは……大事ですが)

 

お金が入ってきたら収入、出ていったら経費。

このようになれば物事はシンプルになる面もありますが、いろいろな理由によりお金の出入りをベースに利益の計算はできません。

 

そして、お金が足りなくなったときに事業はゲームオーバーです。

たとえ「うっかり使っちゃった」が原因だったとしても。

 

こう考えると、たしかに利益は大事ですが、お金はもっと大事。

利益とお金の関係は、絶対におさえておかなければならないのです。

 

そのためには、ここまで書いてきたことを参考に「それは今いくらあるか」だけではなく「増減」もチェックすることが必要なのです。

利益の使い道を考える前に。

 

まとめ

利益とお金の増減にはズレがあることについて、その原因を解説しました。

なお、「過去にお金をいくら持っていたか」が盲点だったりすることもあります。

「今いくら持っているか」だけではなく、過去の通帳の残高もみておきましょう。

利益の実感がわく、ということもありますから。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。