税金の還付金にも税金はかかるのか
税金が還付されたとき、それにより税金が増えることがあります。
還付された税金によっては、増えないことも。
なお、今回の記事には、過去の申告の手直しである更正の請求をしたケースは含みません。
目次
払った時はどうだったか
税金が還付されたとき。
その還付金にも税金がかかるなら、実質的な手取りは減ってしまいます。
すこし理不尽におもえますよね。
でも、税金には、還付されたときに税金がかかるもの・かからないものがあります。
その違いを知るには、払ったときのことを思い出してみましょう。
もし払ったときに経費となり、利益を減らし、税金も減らしているなら。
そんな税金が還付されたときは、収入の一部となり、結果、税金がかかることになります。
いっぽう払ったときは経費になっていないなら。
還付されたときも収入にならず、結果、税金はかからないことになる。
税金のなかには、経費にならないものもあるのです。
この違いをふまえて、税金の種類ごとに確認していきましょう。
還付金に税金がかかるもの・かからないもの
つぎの税金ごとに、その還付金にも税金がかかるかどうか…を説明していきます。
- 法人税、法人住民税、法人事業税
- 所得税、個人住民税、個人事業税
- 消費税
- 固定資産税
- 年末調整の還付
- 還付加算金
法人税、法人住民税、法人事業税
これら3つの税金は、法人の利益にたいしてかかります。
このうち法人税と法人住民税は、払ったときには経費(損金)とはなりません。
ゆえに、還付されたときも税金はかからない。
いっぽう法人事業税は、払ったときに経費となるので、還付されたときには税金がかかります。
その税金とは、おなじく利益にかかる法人税、法人住民税、法人事業税。
なぜ法人税と法人住民税が経費にならないかは、こちらの記事を読んでみてくださいね。
税務上、法人税は経費にならない。その理由は?
なお、法人における経費や収入のとらえかたには、すこし注意すべきことがあります。
まず、損益計算書などの決算書では。
払ったときには経費とならない税金も、経費として組み込まれています。
決算書には、合法・非合法にかかわらず、すべてのお金の出入りを載せなければならないので。
いっぽう法人税などの申告書では。
この申告書は決算書をベースに作るのですが、これを作るときに経費とはならない税金を除きます。
そして、いわば正確な利益をもとめてから、法人税などを計算するのです。
専門用語で損金不算入や益金不算入という処理のこと。
だから、損益計算書において「法人税の還付が収入に組みこまれている」と気がついたとしても。
それすなわち税金がかかっているわけではない…と理解しておきましょう。
より確証を得るには、法人税の申告書の「別表4」を見てみましょう。
所得税、個人住民税、個人事業税
所得税と個人住民税は、事業の経費や所得控除にはなりません。
ゆえに、還付されたときも税金はかからない。
いっぽう、個人事業税は経費になるので、その還付金には税金がかかります。
その税金は、おなじく所得税、個人住民税、個人事業税。
(個人事業税は、所得によってはかからないこともあります)
これらを会計ソフトに入力するときは、次のとおり。
- 所得税、個人住民税
事業用の現金や口座からはらうなら「事業主貸」、還付されたときは「事業主借」をつかいます。
プライベートのお金で払っているなら、入力はしなくても問題ありません。
もし入力するなら「事業主貸/事業主借」となりますが、備忘録くらいの意味しかないですから。
ただし、領収書などは保存しておきましょう。
- 個人事業税
払ったときは「租税公課」をつかい、還付されたときは「雑収入」をつかいましょう。
消費税
消費税は、経費になる税金です。
ただ、税込み経理と税抜き経理の2つの方法のどちらをつかうかにより、とらえ方が変わります。
たとえば、売上「110」だけがあったとしましょう。
すると、消費税の納税は「10」。
税込み経理では、「110-10=100」と利益が計算されます。
いっぽう税抜き経理では、消費税は経費とは認識しません。
ただ売り上げは「100」とするので、利益の計算は「100-0=100」となります。
だから、税込み経理では経費となるものの、どちらをつかっても利益はおなじ。
「実質的に」経費になっていると、とらえておきましょう。
そして、この違いは還付されたときもおなじです。
税込み経理では雑収入などとして経理するのが一般的。
いっぽう税抜き経理では、仮受消費税と仮払消費税の差額から、未収入金が貸借対照表にのっています。
ただ、どちらの場合も、利益はおなじ。
消費税が還付されたとき、そして払ったときも、それによりほかの税金が増えたり減ったりすることはない。
消費税とは、そんな存在なのです。
なお、税抜き経理では。
消費税の計算過程に1,000円未満や100円未満の端数切捨てがあることにより、納税や還付の金額と、仮受消費税と仮払消費税の差額がピッタリあわないこともある。
それが雑収入などに載っていることがありますが、それは還付金とはちがうもの、
ということも、豆知識として知っておきましょう。
固定資産税
固定資産税は、経費になるものですから、その還付金には税金がかかります。
ただ、その還付は、比較的めずらしいものです。
役所で計算ミスがあった…ということがたまにニュースになったり。
または、自分で固定資産税評価をチェックしにいったり。
あるいは、固定資産税のいちぶである償却資産税の申告を間違っていた。
ときには、二重払いをしてしまうことも…と。
もし還付されたら、雑収入などとして経理しておきましょう。
年末調整の還付
年末調整の還付とは、役員報酬などから天引きされていた所得税がもどってくること。
この所得税は、前払いで取られているものです。
そのうち余計に取られているものが戻ってきただけ。
なので、それにより税金が増えることもありません。
なお、年末調整では、還付になるかたの方が多いのが実情です。
その還付は嬉しいもの。
ただ、源泉徴収票をみて、1年間の所得税がいくらか…も知っておくようにしましょう。
とくに会社を経営しているなら、役員報酬を決めるカギの一つにもなりますから。
還付加算金
税金が還付されるときは、還付加算金が一緒に振り込まれることがあります。
これは、利息のようなもの。
もし還付される税金を払っていなければ、手元にお金が残っていたはず。
そして、それを運用することもできたはず。
ということが理由の一つとして、還付加算金が存在しています。
この還付加算金は、もとになる税金にかかわらず、収入となり、利益を増やすことになる。
だから、還付加算金には税金がかかることになります。
なお、税金の還付は、この還付加算金と一緒に振り込まれます。
口座の履歴をみても、たとえは法人税がいくらで、還付加算金がいくらか…は分かりません。
それを知るには、税務署などからとどく手紙がカギになります。
そこに内訳が書いてあるので。
会計ソフトに入力するときは、この手紙をなくさないように気をつけましょう。
または、還付の原因になった申告書を。
そうでないと、入力するときに困ってしまいますから。
まとめ
税金の還付金のなかには、税金がかかるもの・かからないものがあります。
利益が大きいな…と感じたら、そのなかに還付金がないかもチェックしてみましょう。
税金が思ったよりかからないことを、早めに知ることができますから。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。


