税金の還付、これは得したと言えるのか?
税金が還付により戻ってくると、素直に嬉しいものです。
ちょっとした臨時収入ですよね。
でも、これって得したと言えるのでしょうか?
と言うのも、源泉徴収などにより自分が一度納めた税金以上のものは、戻ってこないからです。
目次
税金を前払いする仕組みがある
前払いする税金は、個人・法人別に、次のとおりです。
個人……所得税、消費税
法人……法人税、住民税、事業税、消費税
源泉徴収(所得税)
給与や役員報酬、フリーランスの報酬などは、源泉徴収により、所得税の天引きが行われます。
そして、源泉徴収された所得税は、給与などを支払う方が税務署へ納めます。
自分が知らないところで、実は所得税を前払いしているのです。
自分が税務署などへ行って納めている訳ではないので、実感がわきにくいですよね。
予定納税(所得税)
個人で確定申告している方は、前年の所得税が一定額以上になると、税務署から「所得税を前払いしてね」と納付書が送られてきます。
給与などの収入を除外したうえでの「一定額以上」ですので、対象になるのは、主にフリーランスの方です。
この仕組みを、予定納税と言います。
中間納付(法人税等、消費税)
法人税等や消費税には、所得税の予定納税のように、前年度の税金が一定額以上になると、中間納付という前払いの仕組みがあります。
法人税等は、前年度の半分を、年度の半分を過ぎたあたりで納めます。
消費税は少し複雑で、前年度の消費税額により、中間納付が年1回・3回・11回(!)とバラつきがあります。
税金が還付されるとき
上記のとおり、税金には前払いする仕組みがありますが、前払いしたまま終わりではありません。
1年間の税金を計算し、その金額との差額を、次のように精算することになります。
- 前払いした税金 > 1年間の税金 ……還付となる
- 前払いした税金 < 1年間の税金 ……追加で納める
年末調整
所得税の計算は、1月~12月の所得を基に行います。
給与などからの源泉徴収は、概算で天引きしているため、1年の最後の給与に合わせて精算します。
これを年末調整といいますが、医療費などのように年末調整では対象にならないものもあります。
その場合は、年末調整の後に、それぞれが確定申告を行うことにより、さらに還付を受けることも出来ます。
確定申告
1年間の税金を計算し、税務署などに申告します。
なお、所得税では、還付になる申告は、法律上「することができる」という表現になっており、義務ではありません。
黙っていても税金が還付される事にはならないので、用心しましょう。
更正の請求
税金の申告をした後、間違いや計上モレに気付いた場合は、後日に手直しの手続きをすることが出来ます。
そのとき、自分にとって不利になる手続きを修正申告と言い、有利になる手続きを更正の請求と言います。
この更正の請求により、税金が還付されることもあります。
赤字だと税金が還付?
税金は「利益×税率○○%」と計算します。
赤字だと、どうなるでしょう。
例えば、所得税の最低税率「5%」を使って……
-100×5%=-5
あれ、還付?と思ってしまいますが、違います。
赤字の場合は、税金はゼロとなり、その赤字は将来の黒字と相殺するため繰り越されます。
※ もちろん、赤字の場合は税金が還付されることも多いのですが、それは中間納付など前払いした分が還付になる訳であり、1年間の税金が上記のようにマイナスの値になることはありません。
例外的に、赤字の年の前年が黒字の場合、前年に納めた税金が還付されることもあります。
この仕組みを、赤字の「繰戻し還付」と言います。
(参考記事)赤字でも去年が黒字なら、税金が戻ってくる?【繰戻し還付】
還付加算金というもの
税金が還付される場合、還付加算金というものも上乗せして戻ってきます。
還付される税金というのは、自分が前払いとして一度納めたものです。
法律上は中間納付などの仕組みがあるとはいえ、前払いした時から還付されるまで、もしかしたら自分が自由に使えたかもしれないのです。
自分の手元になかった間、税務署などにお金を貸していたとも言えるのです。
そこで、そういう期間に応じて、性質上は利息として、還付加算金というものが存在します。
ちなみに、利率は年ごとに変わりますが、令和5年(2023年)は0.9%です。
あなどれませんよ。
なお、還付加算金には税金がかかります。
税務署なども転んでもタダでは起きない、というところでしょうか。
いくら納めているのかチェックしよう
税金の還付って、やっぱり嬉しいです。
でも、前払いで500万円納めていて、200万円が還付されるなら、1年間で300万円の税金を納めていることになります。
嬉しい気持ちがあるゆえに、自分がいくら税金を納めているか、分かりにくくなってしまう……
これが怖いところです。
出来れば税金は少ない方がいいというのが正直なところだと思いますが、同時に、税金を納めた感・お金が出ていった感を持っているのも大事だと思うのです。
還付の際には、喜ぶ前に、自分が1年間でいくらの税金を納めているのかチェックしてみましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいております。
当事務所のサービス