不動産投資をするなら注意すべき消費税の納税義務

不動産投資のおおくは居住用なので、消費税は免税事業者のかたがほとんどです。

税金一般にいえることですが、とくに消費税は前もって知っておくことが大事です。

納税義務をじくに、注意点を確認しておきましょう。

 

消費税の納税義務の基本

消費税は、2年前の「課税売上」が1,000万円を超えると、今年の申告・納税が義務になります。

(法人は、年ではなく年度で判断します。以下おなじです)

  • 課税売上とは……全収入のうち、消費税が課税されるもの

 

また、2年前で判断して納税義務はないときでも、1年前の前半6か月の状況によっては、今年の申告・納税が義務になることもあります。

それは、1年前の前半6か月において、つぎの両方が、それぞれ1,000万円を超えるときです。

  • 課税売上
  • 給与、役員報酬、ボーナス

 

まずは、「今年の納税義務は、今年の収入で決まるわけではない」ことを、押さえておきましょう。

納税義務があるか・ないかが分かっている状態で、今年がはじまるのです。

 

なお、納税義務があることが分かったら、税務署へ次の課税事業者届出書をだしておきましょう。

(課税事業者「選択」届出書とまちがえないように…)

(国税庁HPより抜粋)

 

この届出書がないと、税務署から電話がくることもあるので、忘れずに。

ちなみに、2年前のことを基準期間といい、1年前の前半6か月のことを特定期間といいます。

(納税義務を判断する時期により、書類がかわります)

 

では、不動産投資にかかわる収入のうち、どんなものに消費税がかかるのか・かからないかを確認しておきましょう。

なお、消費税がかからないものには、非課税と対象外(=不課税)の2種類があります。

消費税がかかるもの(課税)

・店舗や事務所の家賃、礼金、敷引、更新料

・駐車場代

・退去時にうけとる原状回復費

・土地の貸し付け(期間が1か月未満のもの)

・建物の売却

消費税がかからないもの(非課税)

・居住用の家賃、礼金、敷引、更新料

・土地の貸し付け(期間が1か月以上のもの)

・土地の売却

・銀行口座の利息

消費税がかからないもの(対象外)

・敷金、保証金(退去時まであずかっておくもの)

・信用金庫などの配当金

 

このように3種類にわけるのは、つぎの注意点にも関係があります。

 

納税義務を判断するときに注意すべきこと

次のことに注意しましょう。

  • 個人は、すべての収入を合算して判断する
  • 事業用建物の売却は、消費税がかかる
  • 課税事業者だからといってインボイス登録は義務ではない

 

個人は、すべての収入を合算して判断する

個人の税金である所得税・住民税は、収入・経費を、不動産や事業といった「所得ごと」にわけて計算します。

でも、消費税はすべての収入を合算して、納税義務を判断します。

たとえば、事業だけでみると、ギリギリ免税のとき。

こんなときでも、不動産や副業などをあわせると、課税事業者になることもあるのです。

 

また、消費税の計算も、すべての収入・経費などをもとにおこないます。

このとき、収入のうちの課税:非課税の割合が必要になることもあります。

消費税が非課税のものも、計算でつかうことがあることを知っておきましょう。

「集計する可能性があるのね…」と。

 

なお、実際に申告をするときは、まず所得税の計算を組みたてます。

そのデータを流用し、組み直して消費税の計算をする。

こんな段取りになることが一般的です。

 

事業用建物の売却は、消費税がかかる

事業用建物の売却には、消費税がかかります。

この売却もふくめて、納税義務を判断することを忘れないようにしましょう。

 

なお、建物だけを売ることはすくなく、土地とセットで売るのが一般的です。

すると、困るのが「建物はいくらで売ったのか…」です。

 

基本的には時価で売るものですが、次のような思惑もあったりします。

  • 売る側……建物が安いほうが、免税事業者になりやすい
  • 買う側(事業者のとき)……建物が高いほうが、消費税の納税がへる

このことや、個人のマイホームの売却は消費税が対象外のこともあり、土地と建物の内訳が不明なまま、売買がおこなわれることもあります。

 

こんなときは、時価を鑑定してもらうのも一つの手ですが、料金がかかります。

なので、固定資産税の評価額で按分することが一般的です。

これは、固定資産税の納付書とセットで送られてくる書類に載っていますので、捨てずにとっておきましょう。

 

課税事業者だからといってインボイス登録は義務ではない

課税事業者になるからといって、インボイス登録することは義務ではありません。

たとえば、建物を売るときは、1年間だけ課税事業者になることもあります。

そんなときに、わざわざ請求書などの様式をととのえて…などしなくてもよいのです。

 

現時点では、インボイス制度導入時期の特例(経過措置)により、いっけん手続きが簡単です。

でも、本来、課税事業者になること・インボイス登録をすることは、べつの手続きをふむのです。

時期や状況により、とても複雑な仕組みなので、あらかじめ整理しておきましょう。

 

まとめ

不動産投資をするなら注意すべき消費税の納税義務についてみてきました。

不動産投資のおおくは居住用なので、消費税は免税事業者のかたがほとんどです。

でも、ときに課税事業者になることもある。

そのときのために、消費税の計算やインボイス制度の確認もしておきましょう。

税金一般にいえることですが、とくに消費税は「前もって知っておく」ことが大事なので。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。