課税事業者になったら利益は税抜きでみておくべき理由

消費税には税込み経理・税抜き経理の2種類がありますが、税込みのときは消費税の計算をするまでは正しい利益が表示されません。

そのため、利益は税抜きでみておくべきなのです。

また、利益とお金の関係にも注意が必要です。

税込み経理・税抜き経理の違い

消費税には、税込み経理と税抜き経理の2つの方法があります。

たとえば、売上「110」を経理するとき、2つの違いは次のようになります。

  • 税込み
借方 貸方
預金など 110 売上 110

 

  • 税抜き
借方 貸方
預金など 110 売上 100
    仮受消費税等 10

 

免税事業者のときは、消費税が存在しないものとして税込み経理しかつかえません。

いっぽう課税事業者になったら税込み・税抜きのどちらかを選ぶことができるのです。

 

どちらを選んでもおなじ利益になりますが、減価償却をするものを購入したときは年度単位でズレがでてきます。

税抜きを基準にしたとき、税込みでは当初は多め、後に少なめの利益となりますが、複数年トータルの利益はおなじになります。

 

しかし、利益はおなじでも税金では違いがでることがあります。

税金の計算において「それがいくらなのか」を判定するとき、往々にして「つかっている経理の方法による」からです。

税込み・税抜き、どちらで判定するかは経理の方法によるのです。

 

たとえば、次のようなときは税抜きの方が有利となります。

  • 固定資産……10万円・20万円・30万円未満かどうか
  • 交際費……飲食代が1人あたり5,000円以下かどうか
  • 償却資産税……税率をかけるベースになるもの

いっぽうで、固定資産などについて税額控除を受けられるときは、税込みのほうが多く税金をへらすことができます。

 

もし、手書きで帳簿をつくるなら、圧倒的に税込み経理のほうがラクです。

しかし、会計ソフトをつかっているなら、どちらでも手間は変わりません。

税込みで入力したものを自動で税抜きに変換してくれるので。

 

このようなことを考慮してどちらを選ぶかを決めたいものですが、利益については注意が必要です。

 

課税事業者になったら利益は税抜きでみておくべき理由

税込みでも税抜きでもおなじ利益になると書きましたが、次の状況をどう思うでしょうか。

税込みのほうは10%増しになっているので違和感はなさそうですが。

  税込み 税抜
売上 1,100 1,000
経費 880 800
利益 220 200

 

じつは税込みのほうには、消費税の納税が計上されていません。

消費税の納税は、税込みのときは経費(租税公課など)としてあつかうのです。

この例では、「売上分100ー経費分80=20」が消費税の納税です。

 

あらためて表に組み込むと、次のように両者はおなじ利益となります。

  税込み 税抜き
売上 1,100 1,000
経費 880 800
経費(消費税) 20  
利益 200 200

 

ちなみに、税抜きのときにでてくる「仮受消費税等」は負債として、「仮払消費税等」は資産としてあつかいます。

利益の計算である損益計算書には登場せず、貸借対照表に載るのです。

借入金(負債)や貸付金(資産)のように、瞬間的にお金をうけとって税務署へ渡すだけ。

こんなイメージのものとしてあつかうのです。

 

つまり、税込みの場合、消費税の計算をするまでは正しい利益がわからないのです。

課税事業者となったら利益は税抜きでみておくべきなのは、これが理由なのです。

 

利益とお金の関係で気をつけること

先ほどの例をもう一度みてみましょう。

  税込み 税抜き
売上 1,100 1,000
経費 880 800
利益 220 200

 

このとき、手元にいくらお金があるでしょうか。

発生主義とかややこしいことを無しにシンプルに考えると、税込みの利益とおなじ「220」です。

 

  • 税込みのとき

消費税が経費になっていないことを忘れてはいけません。

なので「220」あるお金のうちには、使ってはいけないお金があることに気をつけましょう。

 

  • 税抜きのとき

利益が「200」なのに、お金は「220」あります。

この差額は消費税です。

利益は正しく表示されているとはいえ、お金と利益には違いがあることを意識しておきましょう。

違いの原因をわからないままお金をつかってしまえば、後で困ってしまいますから。

 

まとめ

課税事業者となったら利益は税抜きでみておくべきなのは、税込みの場合は、消費税の計算をするまでは正しい利益がわからないからです。

消費税は、法人税や所得税よりも高額になることがままあります。

そのため、税込みで利益をみているときは、黒字だったのが赤字になってしまうこともあり得ます。

利益は税抜きで把握し、お金についても消費税のぶんを考慮しておきましょう。

 

※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいています。