会社で社員を1人雇うときのコストと人件費の目安

社員を1人雇うと、給与にくわえてプラス2割くらいのコストがかかります。

会社が負担しなければならない社会保険があるためです。

これをふまえて、人件費の目安についてもみていきましょう。

 

社員を1人雇うときのコスト

社員を雇うと、次のようにいろいろなコストがかかります。

  • 月給
  • ボーナス
  • 退職金
  • 法定福利費(会社が負担する社会保険料)
  • 福利厚生費(健康診断、社内レクリエーションなど)
  • パソコンやスマホ・机とイス・文房具・名刺などの備品代

 

これらすべてを網羅しようとすると大変なので、まずは「最低限いくらかかるか」をおさえましょう。

それは、次の2点です。

  • 月給
  • 法定福利費(会社が負担する社会保険料)

 

この2点をふまえると、次のような全体像となります。

なお、給与からは社員負担の社会保険・税金も天引きしますので、その点も織り込んであります。

 

月給は、それぞれの職種・業界により相場などが存在します。

また、その会社がどれくらいの利益をだせるか・利益構造によっても変わってきます。

 

いっぽう法定福利費は、月給により変わります。

 

なので「月給をいくらにするか」はおまかせするとして、それにより法定福利費がどうなるかをおさえましょう。

その法定福利費には、つぎのものが含まれます。

  • 健康保険、介護保険
  • 厚生年金
  • 雇用保険
  • 労災

 

健康保険、介護保険

健康保険と介護保険は、おおくの中小企業で採用している協会けんぽ以外にも、それぞれの業種・業界独自のものなどが存在します。

今回は、協会けんぽに加入するとした場合のおはなしです。

 

健康保険と介護保険は、会社と社員がはんぶんづつ負担します。

そして介護保険に加入するのは、年齢40才~64才のかたのみです。

 

それぞれの保険料は、会社がある自治体によりますし、年によっても変わります。

また、保険料は月給をベースに決められる「標準報酬」に「保険料率」をかけて計算されますが、でてくるのはこまかい端数のついた数字です。

 

なので次のようにおさえておきましょう。

  • 健康保険の会社負担分……月給の約5%
  • 介護保険の会社負担分……月給の約1%

 

くりかえしになりますが保険料は自治体・年によっても変わりますので、正確に知りたいかたは「社会保険料率」などと検索しましょう。

 

厚生年金

厚生年金も、健康保険とおなじく、会社と社員がはんぶんづつ負担します。

数字がこまかいのも先ほどと同じなので、次のようにおさえましょう。

  • 厚生年金の会社負担分……月給の約9%

 

(この%も年などにより変わる可能性があります)

 

雇用保険

雇用保険は、社員が失業したときのための保険です。

保険料がこまかい数字になるのは健康保険などとおなじですし、「保険料率」は業種や年によっても変わります。

また、会社と社員がはんぶんづつ負担するわけではなく、すこし会社の負担分がおおくなります。

 

ちなみに、令和6年度は次のとおりです。

(たとえば一般の事業なら、赤くマークした率になります)

 

健康保険などとおなじく、次のようにおさえましょう。

  • 雇用保険の会社負担分……月給の約1%

 

労災

労災は、仕事中や通勤中のケガなどにたいする保険です。

健康保険などとは違い、全額を会社が負担します。

 

月給をふくめた賃金総額に「保険料率」をかけて計算しますが、仕事によりケガの危険度はさまざまです。

そのため、保険料率はすごくこまかく分かれています。

また、年によっても変わります。

 

令和6年度のものを抜粋すると、次のとおりです。

 

ざっくり次のようにおさえておきましょう。

  • 労災の会社負担分……月給の約1%

(実際の%が気になるかたは「労災 保険料率」と検索して確認しましょう)

 

ここまでをまとめると、法定福利費の内訳は次のとおりです。

法定福利費の内訳
健康保険 月給の……約5%
介護保険 月給の……約1%
厚生年金 月給の……約9%
雇用保険 月給の……約1%
労災 月給の……約1%
合計 月給の……約17%

 

社員を1人雇うなら、月給にくわえてプラス2割くらいのコストがかかるのです。

トータルで月給の「120%」という風にみておくとよいです。

 

では、「人件費はいくらにしたらよいのか」。その目安や考えかたをみていきましょう。

 

人件費の目安

給与に法定福利費もあわせたものを「人件費」とよぶことにします。

この「人件費をいくらにするか」は、「いま出ている利益のなかから…」とかんがえるのは安直かもしれません。

 

というのも、人をやとえば人件費以外の経費もふえるし、売上や利益だってふえるかもしれないからです。

というより利益をふやすために人をやとうのが普通ですね。

 

そのため、やとった後の売上などを予想することになります。

「給料の3倍稼げ」とは巷でよく言われることですが、信じてよいものか……

自分なりの根拠は必要です。

 

まずは売上と、商品やサービス原価など売上に直接ひもづく原価を抜きだしましょう。

このとき、売上から原価だけをひいたものを「粗利」といいます。

 

その粗利から、人件費以外の経費・必要な利益をひいたものが人件費にさける予算です。

借入れ返済や貯金をしなければならないときは、かならず必要な利益をおさえておきましょう。

 

もし、このときの人件費(予算)で社員を雇えるなら、問題はないのかもしれません。

ですが人件費にさける予算がたりないなら、それ以外のところを改善するしかありません。

 

上記の図は損益計算書をぶんかいしたものです。

このように分けることで「なにを変えるか」の焦点をしぼりやすくすることができます。

  • 売上をふやす(売上を客数・単価・リピート率にも分けるのも一般的です)
  • 原価をへらす
  • その他の経費をけずる
  • 必要な利益を見直す

 

人件費については、業界ごとの相場や平均値などの情報も出まわっています。

ですが「自社の状況をふまえていくらにするか」と考えなくてはなりません。

 

たしかに相場は無視できないものですが、それに流されて「しょうがない」と思ってしまえば、その先はないですから。

すくなくとも、自社の予算と相場をしっていれば「いくら改善すべきか」はわかります。

 

なお、人件費のことをかんがえるのに慣れてきたら「労働分配率」という指標もあります。

これは「粗利のうち人件費はいくらか」をあらわすものです。

(違う言葉で表現することもありますし、計算方法もいくつかありますが、まずはざっくり覚えましょう)

 

その労働分配率は、次のように計算します。

  • 人件費÷粗利=労働分配率(%)

 

経理は、金額だけではなく「%」でみることもあります。

人件費は、人の出入りによって○○○万円くらいの単位でおおきく変わるものです。

また、人数によって備品代などもけっこう変わることがあります。

 

ですが、会社全体の利益構造としてみた場合は、意外におちついているものだったりします。

売上や粗利が1人あたり○○円といった風に。

 

「人件費はいくら?」と聞かれたとき

「うちの労働分配率は○○%くらいを目安にしています」という答え方もあるのです。

これは「○○円です」とこたえるよりも「分かってる感」がでます。。。

参考までに。

 

まとめ

社員を1人雇うときのコストと「人件費をいくらにするか」の考えかたについてみてきました。

人件費は相場の圧力がつよいものですが、かりに相場に流されるとしても自社の目安はおさえておきましょう。

会社をより良くしていくときに、数字の根拠をもった判断をするためにも。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。