会社が無申告のままでいるとどうなるか
会社にとって税金の申告は、黒字・赤字にかかわらず義務です。
その義務がされていないことによるデメリットや、過去の申告をする際の基本姿勢について、確認していきましょう。
無申告のままでいるとどうなるか
いろんな事情により、会社の税務申告をしないまま、時が過ぎてしまうことがあります。
じつは会社にとって、税務申告は、黒字・赤字にかかわらず「義務」なのです。
そして、義務がゆえに、さまざまなデメリットがついてまわります。
もしかしたら、「逃げ切れるなら…」という点でメリットのようなものを感じるかもしれません。
でも、いまはデータで管理される時代です。
法人を設立すれば、登記情報がのこり、マイナンバーにあたる法人番号が付与される。
税務署では、国税総合管理システムにより、過去の履歴や申告内容をデータで把握している…と言われています。
紙の時代だったら、「もしかしたら」はあったのかもしれないですね。
でも今は、逃げ切れる可能性にかけるのは、無謀だといえます。
データ検索って、時間もかからず、簡単ですから。
そこでデメリットの話に戻りますが、たとえば次のようなことが考えられます。
罰金と延滞税
期限に遅れて申告をすると、ほんらいの税金に、罰金を上乗せして払うことになってしまいます。
くわえて、延滞税もかかります。
税務調査の誘発
うえでも書きましたが、無申告であることは、まずバレます。
そして法人税には、基本的には5年とされる時効があります。
とうぜん、税務署としては、この時効を超えてもらっては困る。
税金を取るのが仕事なのに、その税金を取りはぐれるわけですから。
となると、目を光らせるものではないでしょうか。
1~2年くらいなら泳がされそうですが、3~4年目はかなり覚悟をしたほうが良さそうです。
その際には、税務調査がくることも想定しておきましょう。
そこで、無申告だった期間の税金を計算するわけですので。
その計算では、さらにやっかいなことがあります。
それが、つぎの「青色申告の取り消し」です。
青色申告の取り消し
法人は、2期連続で申告が期限後になると、青色申告が取り消されます。
その青色申告とは、申告期限をはじめ、税法のルールをちゃんと守る代わりに、さまざまな税務上のメリットを受けられる制度です。
青色申告ではない場合は、デメリットがある…といった方がよいですね。
そのデメリットの一つに「推計課税」があります。
これは、税務署が推測により、青色申告をしていない会社の税金を計算することができる…というルールです。
ほんらいなら、請求書や領収書、そしてお金の流れにもとづいて税金は「自分で」計算します。
でも、青色申告をしていない場合は、「税務署が推測で」計算し、かつ、払わせることができる。
これは法人税法という法律で定められている、税務署にとっては権利なのです。
もちろん、むやみやたらではなく、無申告だった…などの前提は必要ですけれどね。
わたしは実際に、この推計課税がされる場面を経験したことはありません。
そうならないようにするのが仕事でもあるので。
ただ、そうなってしまえば、当然「納得いかない」こともでてくるでしょう。
これも、無申告であることのデメリットなのです。
融資や許認可・納税証明で困る
融資や許認可をうける場合は、毎年あるいは数年ごとに、決算書や納税証明が必要になることがほとんどです。
義務であることを、ちゃんとやっているか。
数字も大事ですが、そうした信用調査をされるわけです。
でも、決算書も納税証明も、申告と納付をしていなければ手に入りません。
すると、今うけている融資や許認可はどうなるのか…?
これらは、事業の軸になるものですからね。
そうした重要な事にも、無申告の影響はおよぶのです。
となると、やはり過去の申告をやったほうがよいのではないでしょうか。
過去の申告をするときの基本姿勢
過去の申告をするにあたり、大前提となるのが「順番におこなう」ことです。
これは、貸借対照表が必須なことが理由です。
個人とちがい法人は、複式簿記で経理をするのがルールです。
そのルールで作られるものが、貸借対照表。
これは、その時点でもっている現金や借入金・そして累積利益をふくむ財産の明細です。
会社を設立してからその時点までの「蓄積」でもあるのです。
なので、過去から順につくっていかないと、かえって間違いのもとになってしまいます。
ということを踏まえて、「まずは口座の履歴(通帳)を確保」しましょう。
(現金をあつかっている場合は、その帳簿やレジの記録なども)
それをもとに、1つ1つの数字ついて裏付けとなる資料をあつめていく。
その過程で、「忘れた」とか「資料がみつからない」こともあるでしょう。
あるいは「レシートが薄れて読めない」ことも。
そんなときは、たしょう折り合いをつける必要があるかもしれません。
経費であることの確信がもてない場合は、自腹を切るなどの。
(金額や内容によっては、あきらめてはいけないものもありますが)
ただ、それでも物事を前へ進めたほうが良いように思います。
というのも、今もっているお金のうちには、税金として出ていく部分が含まれているからです。
無申告のまま逃げ切れる可能性が低いことは、うえでも書きました。
これは、税金の取り立てについても同じこと。
相手は国家権力です。
なので、かならず税金は払うことになる。
差押えなんかも、ない話ではないですからね。
そのうえで、「今つかえるお金はいくらか」を、まず押さえたほうがよいのです。
お金を増やすのは、簡単なことではありません。
つかってはいけないお金はつかわず、お金が足りない状態はできるかぎり避けるべきなのです。
無申告のときにもっているお金には、幻想もふくまれている。
ということを知ったうえで、無申告の状態を解消していきましょう。
まとめ
会社が無申告のままでいるときのデメリットや、過去の申告をするときの基本的な姿勢について確認してきました。
申告をするには手間もかかるし、税金を払うのも痛みを感じるものです。
でも、それを避けると、かえって面倒なことにつながることも知っておきましょう。
(無申告のお悩みもスポット相談でお受けしております)
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。