簿記の知識があると数字に強くなるのか
数字が苦手という経営者はすくなくありません。
ただ、数字に強くなるには簿記の知識だけでは足りず、現場が見えること、そして数字を頭の中などでいじってみることも必要なのです。
知識だけでは足りない
「数字に強い」と一口にいっても、いろんなことが挙げられます。
それこそ数学の天才と呼ばれるようなかたもいれば、日常のひとコマでなにげない数字をめぐって「ハッ」とさせられるようなことを言えるかたもいます。
計算など数字の組み立てがはやかったり、経理のような事務処理がはやいかたも数字に強いと思えます。
あるいは、数独のような数字系のパズルができるかたも。
事業の経営において「数字に強い」といえるのは、次のようなことです。
それぞれ「大体」でかまいません。
- 自分の行動が、利益におよぼす影響がわかる
- 「とても頑張った」などの抽象的な表現ではなく「50%増」のように具体的な数字がつかえる
- 決算書などの数字が一つ変わると、ほかがどう変わるかがイメージできる
- 不明瞭なところをゴリ押ししない
- こまかい数字は知らなくても、おおすじの収入・経費や財産構造を知っている
- 決算書などで「ある数字がなぜそこにあるのか」がわかる
- 数字の仮説をたてられる
つまり、経営において「数字に強い」とは、過去・現在・将来の行動と、具体的な数字を結びつけられることを言います。
そのためには、頭のなかで数字をいろいろいじってみる必要があります。
このとき、「収入がふえるなら商品などの経費もふえる」という理屈や会計のルールも知っておかなければなりませんが、簿記の知識も必要です。
経営の数字は、簿記をベースに組み立てられているので。
とくに大事なのが次のことです。
- 数字が一つ変われば、かならず他で一つ以上の数字がうごく
簿記とは「複式」簿記のことですので。
でも、数字に強くなるには、知識だけでは足りません。
ある数字一つとってみても、背景にあるものによって意味が変わってくるからです。
必要なのは現場が見えること
たとえば、ある月の売上が「100万円」だったとしましょう。
もし、働いたのがその月「30日」のうち……
- 20日だったら
- 30日だったら
それぞれどんな感想を持つでしょうか。
その月が黒字なのか赤字なのかによっても感想は変わると思います。
また、働かなかった日があるとして、その理由が次のようだったらどうでしょうか。
- 風邪をひいていた
- 仕入れるつもりの商品や材料が届かなかった
- スタッフと旅行にいった
- なまけていた
- ゴールデンウィークだった
さらに、現状のことを次のように思っていたらどうでしょうか。
- 十分な売上があるから満足
- もっと利益を増やしたい(できたら)
- 利益を増やさなければ、借入返済ができない(ほぼ義務)
ここまでのことで、売上「100万円」にたいする感想はいろいろあることが分かります。
そして、その感想から導きだされる「次にどうするか」も、その感想次第で変わってきます。
もし、このような数字の背景にあるものが分からなかったら、どう経営していきますか……?
かりに数字に強かったとしても、手の打ちようがありません。
なんらかの手を打ったとしても、おおきくズレる可能性だってあります。
最悪、傷口がひろがるようなことも…
数字に強くなるためには、簿記や会計の知識も必要ですが、ある数字の背景にあるものも知らなければなりません。
かりに忙しくなって現場にでる時間がとれなくなっても、それでも「現場が見えること」も必要なのです。
知識だけでも足りないし、現場だけでも足りない。
でも、数字やお金を根拠に自分の人生を自分でえらんでいくなら、どちらも必要なことです。
起業したかたなら、だれでも「現場はよく知っている」というアドバンテージがあります。
あとは、多少の知識。
その知識も、だれでもゼロから積み上げていくものです。
また、税理士のような専門家になる必要もありません。
なかには簡単ではないものもありますが、投げ出さずに知識も積み上げていきましょう。
まとめ
数字に強くなるには、知識と数字の背景にあるものをベースに、ある数字を自分の希望や必要性などにおうじて頭の中でいじってみる必要があります。
もし、それが出来るようになったら「どうなるか分からない」は減り、確信をもって判断できるようになります。
知識も現場も、両方が必要なのです。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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