会社のお金がいくらあるかだけじゃなく「増減」も大事なわけ

「今いくらお金があるか」は誰でも気になりますが、「なぜ、今これくらいのお金があるのか」を気にするかたは少数派です。

じつは、残高だけではなく増減に着目することが、数字やお金に強くなるためのカギなのです。

 

残高はだれでも気になる

当然ですが、事業の目的には、お金を稼ぎ・増やすことがあります。

そのためには元手が必要なので、「今いくらお金があるか」はだれでも気になることだと思います。

 

どんな事業でも、まず支払いがあり、それから入金される。

さきに経費があり、それから売上がくる。

このようなサイクルになっているので。

 

もし支払いができなければ、そこで事業はストップしてしまいます。

たとえば小売業。商品の仕入れができなければ、売ることもできないわけです。

サービス業でも、家賃やサービス維持のための費用など固定費の支払いがあります。

 

そのため「今いくらお金があるか」が気になるのは当然ですが、つづけて「つかってよいお金はいくらか」という疑問がでてきます

お金が足りなくなることは、避けなければいけませんから。

 

ほとんどの経営者は、毎月の家賃など固定費のしはらいは頭のなかにはいっています。

ですが、やっぱり少しは不安があるものです。

 

「うっかり抜けていないものがないか」

臨時のものや年1回払いのもの、あるいは数年に1回払いのものもあります。

もしあれば、そこでお金の都合をつけなければいけません。

それに、不意打ちってイヤなものですからね。

 

「足りないときは、自分の財布からだすよ」ということもあるでしょう。

ですが、結局のところ、会社のお金とプライベートのお金はキッチリ分けておいたほうがよいです。

精算するのに数年かかることもあり、そう簡単ではないからです。

 

ここで気になるのが、「利益はいくらか」です。

利益が「100」なら、お金も「100」つかってよいだろう……と。

 

ですが、これが会計のむずかしいところです。

 

残高だけじゃなく増減も大事なわけ

利益が「100」だからといって、お金も「100」ふえているとは限りません。

利益とお金には、ほとんど常にズレがあります。

 

利益が「100」のとき、お金は「20」しかふえていないときもあります。

借入金の返済があるようなときです。

機械や車など固定資産を買ったときも、このケースにあてはまります。

在庫を買いすぎたときも同じですね。

 

ぎゃくに、利益が「100」なのにお金が「150」ふえるようなときもあります。

前期末の売掛金が、臨時のしごとなどで例年よりもおおいようなケースです。

人件費にかかる源泉所得税や社会保険料なども、この原因のひとつです。

 

なぜ利益とお金にズレがあるのか……?

これは、「今いくらお金があるか」と「利益」だけをみても分かりません。

 

その原因は、「なぜ、今これくらいのお金があるのか」と考えなければ分からないのです。

そこには、過去の利益とお金のズレがすべて反映されているからです。

 

そして、そこに「つかってよいお金はいくらか」のヒントが隠されています

過去のズレをふまえたうえで、将来のことをかんがえていくのです。

 

ここまでをまとめると、次のとおりです。

  • 今いくらお金があるか……通帳をみれば分かる
  • 利益……試算表や決算書をみれば分かる
  • お金の増減……?

 

お金の増減は、試算表(お金の期首残高)をみれば分かります。

または、通帳をみても分かります。

 

つまり、「年度がはじまるときにいくらお金があったのか」を見ればよいのです。

お金の増減は、これと今の残高の差額ですから。

 

もし、「利益=お金がふえた分」なら物事はずっとシンプルになるでしょう。

 

ですが、この方法だと利益の操作ができてしまいます。

利益がおおければ「次の入金を来期にしてくれない?」と言えばよいので。

また、決算書をみても「今期どれくらいの活動をしたか」は分かりにくくなってしまいます。

税金をとる側や、会社に投資する株主にとっては都合がわるいのです。

 

「会社のお金のことがよくわからない」から解放されるには、お金の残高と利益だけをみていても難しいです。

お金の増減をみて、「なぜ、今これくらいのお金があるのか」を考えましょう。

それには、「年度がはじまるときにいくらお金があったのか」を知ることがはじめの一歩となります。

 

まとめ

お金の残高はだれでも気になります。

すこし足を延ばすと、利益も気になります。

ですが、お金の増減を気にするかたは少数派です。

 

お金や数字・会計の複雑さから解放されるためには、お金の増減を出発点に「なぜ、今これくらいのお金があるのか」と考えることが必要です。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。