法人成りするなら、タイミングは何を基準に考える?

個人事業を法人化するなら、いつが良いのか?

思いついたときにパッとやるのが理想なのかもしれませんが、法人成りにはメリットもデメリットもありますし、せっかく法人化するなら損もしたくないですよね。

(参考記事)法人成りするときに検討すること【メリット・デメリット】

そこで、法人成りするタイミングについて、知っておくべきことをまとめました。

 

所得を法人と個人に分散して節税

法人成りすると、個人の所得は、すべて法人のものとなります。

個人の所得はゼロになってしまう訳ですが、それだと生活できませんから、法人から役員報酬を取ることになります。

つまり、もともとは個人の所得だったものを、法人と個人で分けるようになるのです。

これが、節税のタネとなります。

※ 個人と法人、その両方の財布を一緒のものと考える、という前提での話です。

 

と言うのも、個人の税金である所得税は、所得が増えると税率も上がるようになっているためです。

 

たとえば、次のように所得が4つのボックス分あるとしましょう。

下から順に、税率が上がっていきます。

4つのボックスすべてが1人のものなら、税金は合計「100」となります。

 

これを、次のように2つずつに分けると、トータルのボックスの数は変わらないのに、税金の合計は「60」となります。

説明ですので大げさですが、2つに分けたことで「40」も節約できることになるのです。

 

基本的には、この仕組みを利用します。

法人成りすると、個人と法人の両方で税金を払うことになるため、払う税金の数は増えます。

しかし、すべての税金をまとめてみると、法人成りした方が安くなる場合もあるのです。

 

個人の税率

個人の税金で所得にかかるものには、所得税、住民税、事業税があります。

すべて「所得×税率=税金」と計算しますが、ベースとなる所得はそれぞれ違います。

しかし、今回は大体の目安がつけばよいかな程度に考え、「それぞれの所得が違う」ことには目をつぶり、ざっくりいきます。

 

3つの税金について、税率は次のようになります。

※ 住民税は、所得にかかわらず10%です。

※ 事業税は、所得が290万円まではかからず、税率は業種により3%・4%・5%のどれかとなります。

 

法人の税率

法人の税金で所得にかかるものには、法人税、住民税、事業税があります。

その計算は、個人よりも少し複雑ですが、所得に応じて次のようになります。

(参考記事)【会社の税率】利益のどれくらいが税金になるのか?

(注1) 住民税(均等割)は、7万円で計算しています。

(注2) 税金は、3税目まとめたものを四捨五入し、「約」○○万円と表示しています。

 

個人と法人を比較すると……

税金のことだけを考えるならば、所得が330万円を超えてくるあたりから、個人ではなく法人で税金を払った方が有利となります。

しかし、これはすべての所得を法人のものにし、個人の所得はゼロとした場合の話です。

 

実際には、役員報酬も必要ですよね。

ですので、ここから先は、個人の収入(役員報酬)がいくら必要かといった事も含め、

「所得を法人と個人に分けると税金はどれくらいになりそうか?」

「今よりもどれくらい節税できるか?」という風に考えてみましょう。

 

それにより、どれくらいの所得になると法人成りした方が有利なのか、というラインは変わりますので。

 

売上が1,000万円を超える

2年前の売上が1,000万円を超えると、消費税の申告・納付をしなければなりません。

ですので、売上が1,000万円を超えたタイミングで法人成りをすると、最大で2年間、消費税の申告をする必要がなくなります。

 

事業主が個人から法人に変わるとはいえ、事業の中味は同じなのが法人成りです。

個人のままでいたら消費税を納めていたはずが、法人成りにより、2年分を納めなくて済む、という事になるのです。

 

しかし、インボイス制度の導入により、この点はむしろデメリットとなる可能性があります。

消費税の申告をしない方は、取引先から売上が減らされてしまう恐れもあるので、インボイス制度が始まってから法人成りする場合は、消費税をどうするかの検討が必要です。

(参考記事)インボイス制度 なぜ?何が変わる?どう対応する?

 

事業を拡大したい

世間の信用度が、「法人と個人で違う」ということがあります。

たとえば、スタッフを増やしたいとなったとき「個人事業主だと社会保険とかちゃんとしてないんじゃないか……」と思われる事ってあります。

法人だと、社会保険の加入は義務ですから、そのような心配はないですよね。

また、業種にもよりますが「法人としか取引しない」ケースもあったりします。

個人のままでいると、売上を増やしにくいような場面もあるのです。

こういった事を踏まえると、法人成りした方が事業を拡大しやすくなります。

 

※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいております。