法人税は利益が800万円以下なら既に節税できている
法人税の税率は、利益が800万円以下の部分は優遇されています。
800万円までの黒字なら、すでに節税できているのです。
それでも利益を削るかどうか……考えておきましょう。
法人税の税率
会社の利益にたいし、法人税がかかります。
「利益×○○%」と計算するわけです。
その法人税は、利益800万円をさかいに、税率が次のとおり変わります。
- 利益のうち800万円以下の部分………15%
- 利益のうち800万円を超える部分……23.2%
この「15%」は中小企業だけに認められた特例であり、大企業であれば一律23.2%となります。
中小企業は、かりに黒字であっても、「税率のおかげで節税になっている」といえるのです。
ちなみに、会社の利益には、法人税のほかに次の税金もかかります。
- 地方法人税
- 住民税
- 事業税
- 特別法人事業税
法人税もあわせて、これらの税金をすべてまとめると、税率は次のとおりです。
- 利益のうち800万円以下の部分……約25%
- 利益のうち800万円を超える部分……約35%
800万円をさかいに、トータルの税率には「10%もの開き」があるわけです。
税率について、もう少し掘り下げたいかたはコチラの記事もどうぞ。
(参考記事)利益のどれくらいが税金になるのか
とはいえ、もし赤字なら、税金はゼロです。
…という誘惑とどう付きあうか、かんがえてみましょう。
(赤字でも、最低7万円はかかる住民税の均等割には注意しておきましょう)
赤字にするか黒字にするか
だれでも「税金は少ないほうがいい」と思うもの。
それを突き詰めると「あえて赤字にする」ことにつながります。
とくに社長一人や家族で経営しているときは、役員報酬の設定により、利益を調整できます。
自分で、自分の役員報酬を決めるわけなので、比較的かんたんです。
ここで気をつけたいのは、「個人の税金をいくら払っているか」です。
個人の税金は、まいつきの役員報酬から天引き(=源泉徴収)されています。
この源泉徴収という仕組みが、くせ者なのです。
- 1年分の税金が、12分割されている
- 毎月または半年ごとに強制的に払わければならない
この2つのことで、痛みがすくなくなり、諦めがついてしまうのです。
いっぽう、法人税などは、申告をするときに一括または年2回に分けてはらいます。
とうぜん、12分割される個人の税金よりも、痛みは大きくなります。
また、自分で経費を増やすこともできるので、諦めにくいものです。
「もう少し減らせる……」と。
このような理由で、会社と個人をトータルで考えたとき、ムダに税金を払っていることもあり得るのです。
税金ならまだしも、会社と個人をトータルで見れていないことのほうが問題かもしれません。
視点とか考えかたも大事ですから。
また、赤字になれば、会社のお金がなくなっていきます。
いつかお金で困るかもしれないし、心の余裕もなくなっていきます。
お金や心の持ちようは、今の打つ手を変えてしまいます。
そして、それは将来をも変えてしまいます。
もしかしたら、役員が会社にお金を貸す、あるいは自腹を切ることで乗り切れるかもしれません。
でも、「お金にだらしない」という印象を与えてしまいます。
金融機関や取引先に。
こうしたことを取り返し、お金をふやすには、倍以上の労力がかかります。
あえて赤字というのは、ラクをしているようなもの。
いちどラクを覚えると、普通にもどるのは大変ですから。
事業をするなら、やっぱり黒字を目指しましょう。
利益が800万円以下になるだけでも、節税になるので。
利益800万円以下を目指すときにつかえる節税
つぎの方法で、利益が800万円以下にならないか、検討してみましょう。
たとえば1,000万円の利益がでそうなとき、すこし削る…というイメージで。
- 役員報酬の設定
- 経営セーフティ共済
- 社宅
- 賃上げ促進税制
それぞれ、簡単にふれておきますね。
役員報酬の設定
役員報酬は、基本的に、年度がはじまってから3か月以内に変えなければなりません。
なので、会社と個人の税金をいちばんよい具合におさめるためには、予測が必要です。
とうぜん、予測がその通りにいくことは少ないです。
なにごとも、終わってみなければ分からないわけですし…
それでも、あがきましょう。
なにより将来のことを考えることのほうが大事だと思って。
経営セーフティ共済
経営セーフティ共済に加入すると、年間で最大240万円の掛金を経費にすることができます。
そして、この掛金は、解約すれば、もどってくるものです。
もどってきたときには、収入となって税金がかかってしまいますが…
なので、いつ解約するかは、課題としてのこります。
ですが、経営セーフティ共済は、いざという時のための貯金ともいえます。
どれくらいの利益をだせるかにおうじて、掛金を検討してみましょう。
社宅
自宅が賃貸のときは、社宅という仕組みを活用できます。
ふつう、自宅は個人名義で契約をします。
なので、家賃は経費になりません。
でも、その自宅を法人名義の契約にすると、家賃は会社の経費になります。
ただし、そこに住むかたからは、「法律で決められた家賃」をもらわなければなりません。
この「法律で決められた家賃」は、ほとんどの場合、実際の家賃よりも少なくなります。
つまり、実質的に会社の経費はふえるわけです。
さらに、家賃のぶん、役員報酬や給与をさげるのなら、個人の税金もすくなくなります。
この合わせ技で、節税になるのです。
賃上げ促進税制
従業員への給与を、前年度にくらべて増やすと、法人税を少なくすることができる。
これが賃上げ促進税制です。
ただ、役員報酬や、役員の家族への給与は対象になりません。
また、増やした給与よりも、節税額は小さくなります。
なので、節税を狙ってすべきものではありません。
従業員への給与をふやすのは、いわば将来への種まきでもあります。
狙うのは、節税ではなく、将来の収穫であるべきです。
ただ、頭の片隅に存在はいれておき、結果論としてつかいましょう。
もし、従業員が研修をうけたり、会社がくるみん認定などをうけると、節税額はふえます。
この取りこぼしも、もったいないです。
気になったら、すごく細かい制度なので、あらかじめ調べておきましょう。
まとめ
会社の税率が、800万円をさかいに変わることについて確認しました。
利益が800万円以下なら、それだけで節税になるのです。
ただ、節税という言葉には、魅力がありすぎます。
わざと利益を減らすことの原因にもなるわけです。
お金は、黒字にならなければ増えません。
わざと利益を削るのは、お金の心配をする必要がない状態をいちど経験してからでもよいのかもしれません。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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