仮装(○○したことにする)は税務上の重い罰金の対象になる
重加算税という罰金が存在します。税金の世界でいちばん重い罰金です。
この重加算税は、「仮装」や隠蔽により税金をすくなく申告したときにかかります。
どんなときにかかるのか。重加算税がかかるとどうなるか。について解説します。
仮装すると重加算税がかかる
- 働いたことにして、給与をわたす
- 退職したことにして、退職金をわたす
- プライベートの支払いを、会社の経費だったことにする
- 誰かに依頼したことにして、外注費を計上する
このように「○○したことにする」ことを、税金の世界では「仮装する」といいます。
かんたんに言うと「嘘をつくこと」ですが、事実をいつわるわけです。
この仮装により税金をへらすと、「重加算税」という税金の世界でいちばん重い罰金の対象になってしまいます。
もともと、うっかりミスで税金をすくなく申告してしまった場合は、「過少申告加算税」という罰金がかかります。
もちろん、申告もやり直しです。
ですが、税金をすくなくするにあたって仮装がからんでくると、過少申告加算税にかえて重加算税がかかるのです。
「悪質だから罰金をふやすよ」というわけです。
この重加算税は、はらう側にとっては絶対にさけなければならないものですが、税金をとる側からみると、とても美味しいものです。
というのも、税務署にしてみれば「悪事をあばいた」ことになるからです。
ほんらい税金というのは、公平性がもとめられます。
ある行為をしたとき、誰にとっても同じように税金がかかることがもとめられるのです。
所得税は所得がふえると税率もあがるようになっていますが、これも「ふところ事情におうじて公平に」という考え方にもとづいています。
じつは税金の世界では、公平であることを軸にいろいろな制度や仕組みができあがっているのです。
その根幹をゆるがすのが「仮装」です。
税務調査は、ほんらい「申告が正しいか」をチェックするためにおこなわれます。
でも、「追加の税金をとりたい」のが本音でしょうね。
さらに、「重加算税をとれれば言うことなし!」というのも実情のようです。
税務署は、税金の世界の警察官のようなそんざいなので、悪事をあばけばやっぱり評価があがるのでしょう。
では、重加算税がかかるとどうなるかをみていきましょう。
重加算税がかかるとどうなるか
重加算税がかかると、次のことがおこります。
- 追加の税金にくわえて重加算税がかかる
- 本来よりも遡って調査される
- 税務署のブラックリストに載る
追加の税金にくわえて重加算税がかかる
まずは、仮装により税金をへらした申告を、正しい内容になおして申告をやりなおします。
なので、追加の税金がでてきます。
その追加の税金をベースに、重加算税をはらうことになります。
その重加算税は、次のように計算します。
- 追加の税金×35%=重加算税
うっかりミスなど仮装がからんでいないときは過少申告加算税という罰金がかかりますが、その税率は10%です。
(追加の税金がおおいと15%になる部分もあり)
それよりも25%もおおくなるので、やっぱり痛みはふえます。
また、過去5年以内にも重加算税を課せられていた場合などは、税率がさらにふえる加重措置もそんざいします。
さらに、延滞税もかかってくることになるので、痛みはひろがっていきます。
本来よりも遡って調査される
税務調査は、過去3年分くらいについておこなわれるのが一般的です。
法律上では、基本的にさかのぼれるのが5年までとされているので。
ですが重加算税がかかるときは、5年をこえて7年までさかのぼれます。
いちど調査が終わったと思ったら、「あと2年分を追加でやりますね」なんていうことが起こってしまうのです。
だれでも税務調査はイヤなものですが、その延長戦がはじまるかもしれないのです。
もちろん、追加の税金などもふえてしまう可能性がひろがります。
税務署のブラックリストに載る
重加算税がかかったことは、税務署側の記録にのこります。
どれくらいの頻度になるかは分かりませんが、そう遠くないうちにまた税務調査がおこなわれることになるでしょう。
「悪質なことをやった」ということでブラックリストに載るのです。
税金を払いたくないのは、誰でもおなじです。
なので「税金をへらす」というのは大きな魅力です。
ですが、いちど誘惑にまけると抜け出すのはむずかしいもの。
ということを税務署も知っているので、定期的に調査にくることになってしまいます。
まとめ
○○したことにして経費をふやす。
このようなことを仮装といい、税金の世界でいちばん重い罰金である重加算税の対象になります。
(この記事では触れませんでしたが、売上を抜くといった隠蔽行為も重加算税の対象になります)
罰金自体もたかい税率ですし、重加算税がかかったことによる将来への影響もとても大きいです。
税金をへらすということは魅力も大きいですが、重加算税だけは絶対に避けましょう。
ほかの罰金ならよいということではないですが、重加算税はダメです。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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