会社で初めての消費税申告にあたって押さえておくこと
消費税は、滞納がおおい税金でもあり、計算方法により納税額に差がでることでトラブルがおおい税金でもあります。
こうしたことを避けるために、押さえておくべきことをみていきましょう。
申告と納付の期限
消費税の申告と納付は、その年度が終わってから「2か月以内」におこないます。
法人税や事業税・住民税とおなじ期限です。
- たとえば、年度が「4月~3月」の場合は「5月末」が期限となります。
この期限を過ぎると、罰金や延滞税がかかってしまいます。
いくつかの条件を満たして手続きをしていると、消費税の申告期限は1か月延長することもできます。
ですが、延長されるのは「申告期限のみ」であり、「納付の期限」は延長されません。
ほんらいの納付期限である「2か月以内」を過ぎると、利息(利子税)がかかってしまうのです。
すこし使い勝手が悪いので、初めての申告ではつかわないほうがよいでしょう。
なお、消費税について調べていると、「年度」ではなく「課税期間」という言葉がよくつかわれていることに気づくはずです。
じつは消費税は、年度ごとではなく「課税期間ごと」に申告・納付をするのです。
なにも手続きをしていなければ「年度=課税期間」ですが、この課税期間は「3か月または1か月」に変更することもできます。
消費税は、申告の内容によっては、納付だけではなく「還付」もありえます。
設備投資をしたり、輸出があるときには、還付になることもあるのです。
この還付を早くうけるために、申告のサイクルを早める……
そのために「課税期間」という概念が存在するのです。
このようなことがなければ、「年度と課税期間はおなじ」だと捉えておきましょう。
つまり、年度が終わったら「2か月以内」に申告・納付をする、と。
(以下、「年度=課税期間」としてお話をつづけます)
納税額の計算方法
消費税の納税額の計算には、次の3つの方法があります。
- 原則的な方法
- 簡易課税
- 2割特例
原則的な方法
消費税は、売上などで受けとった消費税から、経費などで支払った消費税をひいて、その残りを税務署へおさめます。
これが原則的な方法です。
ただし、消費税には「減価償却」という仕組みがないことには注意が必要です。
減価償却をする固定資産のために支払った消費税は、その固定資産を受けとった時点ですべて納税額の計算に組みこみます。
すると、法人税では黒字なのに、消費税では「赤字」ということも起こります。
赤字とは、収入の消費税から、経費などの消費税をひいた結果がマイナスの値になる状態ですが、このときは還付を受けることができるのです。
また、その年度の課税売上(消費税がかかる収入)が5億円を超え、非課税売上が全収入の5%以上あるときも注意が必要です。
というのも、納税の計算で「支払った消費税をひく」のは、その経費が課税売上のためのものであるときに限られるからです。
非課税売上のために消費税を支払ったとしても、納税はへりません。
もし、収入が100%非課税なら、納税はゼロです。
このことと対になる理屈だと考えましょう。
このようなときは、個別対応方式または一括比例配分方式のどちらかで計算をしていくことになります。
もし、「計算がややこしいな」と感じるなら、早めに準備をするようにしましょう。
簡易課税
簡易課税は、経費などで支払った消費税の集計をする必要がありません。
なので「簡易」なのです。
ただし、納税の計算において、支払った消費税がゼロになるわけではありません。
業種におうじて「収入分の○○%を支払った消費税とする」のです。
この「○○%」をみなし仕入率といいますが、その範囲は90%~40%です。
そのため、簡易課税をつかっているときは「還付になることがない」ことは覚えておきましょう。
還付になるためには、収入分が「100%」なので、支払った分が「100%を超える」必要があるからです。
なお、簡易課税をつかうためには、2年度前の課税売上が5,000万円以下であるという条件と、原則として「前年度中」に手続きが必要です。
例外的に、設立1期目は「1期目中」に手続きをしても間に合います。
2割特例
この特例は、「収入分の消費税の2割が納税額になる」というものです。
ただし、つかえるのは次のかた限定です。
- ほんらいは免税事業者なのに、インボイス登録により課税事業者になったかた
また、2割特例をつかえるのは、インボイス制度開始以後、令和8年(2026年)9月までの日がふくまれている年度です。
この方法によると、簡易課税とおなじく「還付になることはない」ことに注意しておきましょう。
申告書の作り方
消費税の申告書は、日々の取引を会計ソフトに入力するときに作るものだと思いましょう。
(手計算でもできますが、データ量によってはとても大変です)
とりあえず会社の利益を計算し、それとは別枠で消費税の集計をするわけではないのです。
なので、日々の会計データを入力するさいに、消費税の情報も織り込みます。
そこで重要になるのが、「その領収書はインボイスか」あるいは「その領収書には消費税の情報がのっているか」ということです。
たとえばカード明細には、基本的に消費税の情報はのっていません。
領収書・請求書などすべての書類について、消費税の情報があるか・ないか、チェックしておきましょう。
なお、会計ソフトの入力さえ終われば、あとはソフト上で2つ・3つの過程により申告書を作ることができます。
(参考記事)会計ソフトの税区分を入力する前に最低限知っておくべきこと
納税額の確保
消費税の滞納というのは、意外に多いのです。
というのも、納税するぶんを使ってしまうので……
たとえば、売上「110」があり、お金も「110」受けとったとしましょう。
このとき、納税は「10」で、利益は「100」です。
- 税込み経理……売上「110」ー租税公課「10」=100
- 税抜き経理……売上「100」ー経費「0」=100
利益は「100」なのに、お金は「110」もある。
すると、浮いている「10」をつかってしまうかもしれない……
こういう理屈で、滞納が多くなってしまうのです。
こうしたことにならないように、定期的に消費税の納税額をチェックしておきましょう。
そして、その分は使わないように避けておく、と。
そのためには、会計ソフトの入力も遅れないようにしなければなりません。
年度が終わってからまとめて行えば、ビックリすることもあるでしょうから…
まとめ
会社で初めての消費税申告にあたり、押さえておくべきことをみてきました。
消費税は利益にかかるものではないので、利益とは別に、普段から意識しておかなければなりません。
また、どの計算方法をつかうかにより、納税額に差がでてくるので、かならず「年度内」に今期そして将来についても目途をつけておく必要があります。
消費税は「意外にこわいもの」という意識をもっておきましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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