「請求書の日付を変更してほしい」と言われたときの問題は?

  • 決算の都合で、今期の経費にしたいんだよね
  • 請求書の日付変えてくれないかなあ

 

とても悩ましい問題ですが、取引先の要望にそのまま応えた場合のリスクを解説します。

 

「今期の経費にしたい」と言われる状況は?

売上は、商品などを相手に引き渡したとき、サービスが完了したときに計上します。

請求したとき、ではないのです。

ある月の売上の請求が、翌月になっても、翌月の売上とはなりません。

 

事業は、人数や取り扱うモノ・サービス、拠点などが増えてくると、予算を組んで管理するようになる場合もあります。

「今期の経費にしたい」というのは、もしかしたら予算を消化したいのでしょうね。

もし消化せずに予算が余るようなことになれば、来年度の予算が減らされてしまう……というようなことになるのでしょう。

 

また、予算など複雑なことではなく、単に経費を増やして税金を減らしたい、という事も考えられます。

原因はともかく、相手が言いたいのは「今期に納品・仕事をしたことにしてくれ」ということです。

 

このような場合、請求書の日付は、本来の売上の計上時期よりも前になります。

4月が本来の計上時期なのに、3月が請求書の日付だったりするのです。

請求書の内容によっては、納品日や検収日などで、3月に仕事をした、と跡を残すようなことにもなります。

大げさな言葉かもしれませんが、書類の「偽装」ですよね。

 

請求書の日付をいじるとどうなる?

税務調査で必ず調べられるのが、「その売上はどの年度のものか?」ということです。

複数年度のトータルでみれば、売上の合計は変わらないのに、年度単位でみるのです。

もし、売上を計上する年度が違っていれば、必ず直すことになります。

追加で税金を払うのです。

 

これ、税務署の方は大好きです。

追加の税金に加えて、罰金的な意味をもつ加算税もとれるので。

もし、請求書の日付をいじっても、売上を本来の時期に計上していれば、この点は回避できるかもしれません。

 

絶対に避けなければいけないこと

うっかり、請求書の日付で売上を計上し、請求書を偽装していたことが分かると、重加算税がかかる可能性があります。

重加算税は、取引を仮装・隠蔽することで税金を減らしたときにかかる罰金です。

この仮装に、書類などの虚偽記載も含まれます。

罰金の中でも一番重いもので、ブラックリストに載るようなものです。

 

うっかり……

取引先の要望に応えただけ……

と悪質ではないと判断されれば重加算税を回避できるかもしれませんが、やっぱりリスクは残ります。

 

取引先で問題になるかもしれない

取引先の中で、その請求書が問題になることも想定しておく必要があります。

 

その担当者を監督する部署や、予算の管理をしている部署の調査などで、書類の偽装がバレるケースです。

「自分が頼んだ」とその担当者が言ってくれればよいですが、「自分は知らない」なんてなれば、こちらの責任になってしまいます。

どれくらい大きな問題か?というのは取引先次第なので、どんな余波があるのかは予測しづらいですよね。

「次から気をつけてね」で済めばよいですが。

ただ、いわゆる不正行為なんだ、とは思っていた方がよいです。

 

また、取引先に税務調査が入り、反面調査として納品日や仕事の完了日などを聞かれることも想定しておきましょう。

もしそうなると、こちらも取引先の税金を不正に減らすことに協力した、と捉えられてしまうリスクがあるのです。

 

まとめ

取引先から「今期の経費にしたい」と言われ、請求書の日付をいじったときのリスクを解説しました。

 

とても悩ましい問題ですよね。

元請け・下請けのように、継続して仕事を依頼する・受けるという関係の中では、ときどき聞く話です。

予算をつくって管理するというのは、基本的には大きめの会社ですので、取引金額も大きめなことが多いです。

「うちでは、そういうことやってません」とスッパリ断ると、後で困ったことになる可能性もあるので、無視するわけにもいかない……と思いますよね。

ただ、取引先の不正行為に自分も協力しているんだ、という意識は忘れてはいけません。

 

売上の計上はルール通りにやっておくなど、自分だけで出来ることはやっておきましょう。

そして、そういう取引先とは仕事をしないで済むように経営をしていく、ということも考えてみましょう。

(言うだけなら、ホント簡単ですけどね)

 

※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいております。