赤字の年の翌年、税金はどうなる?【繰越控除】
事業を行っているときの税金は、「利益×○○%=税金」と計算します。
では、次のように「去年が赤字」で「今年は黒字」になったら、どう計算するのでしょうか?
「300×○○%=税金」とはならず、去年の赤字を考慮して計算することになるのです。
この仕組みによりトクをしたというのも違う気がしますが、知らずに余計な税金を払ってしまうのは避けたいですよね。
そのための条件や仕組みをみていきましょう。
目次
計算の基本的な仕組み(繰越控除)
上記の例では、次のように計算します。
今年の黒字から、去年の赤字を差し引いて計算することになります。
今年の黒字「300」に対して税金がかかるのではなく、300ー200=「100」に対して税金がかかる訳なのです。
このように、去年の赤字を考慮して今年の税金を計算することを、専門的には次のように説明します。
1.去年(過去)の赤字を、今年(将来)に「繰り越す」。
2.繰り越した赤字を、今年の黒字から「控除」する。
この2つをまとめて、赤字を「繰越控除」する、と呼んでいます。
では、去年の赤字を、今年の黒字から控除しきれない場合はどうなるでしょうか?
計算の結果がマイナスになると、「あれ?マイナスなら税金戻ってくる?」という気持ちになりますが、これは違います。
ただ、今年に控除しきれない赤字は、さらに将来へ繰り越されます。
では更に、次のように2年連続で赤字の場合はどうなるでしょうか?
去年と今年の赤字、両方が将来に繰り越されることになります。
いつか黒字になったときに、繰越控除をすることになるのです。
これが基本的な仕組みなのですが、繰越控除するための条件や、繰り越しできる期間などをみていきましょう。
法人の場合
法人税法では、赤字のことを「欠損金」と言い、この仕組みを「欠損金の繰越控除」と呼びます。
繰り越しできる期間
10年です。
(注) 平成30年(2018年)4月1日前に開始した事業年度の欠損金は9年です。
繰越控除するための条件
- 欠損金が生じた年度で、青色申告により、確定申告していること
- 欠損金が生じた年度以降も、連続して確定申告していること
- 帳簿や書類などを保存していること
法人には、赤字でもかかる税金(住民税の均等割)がありますので、申告しないケースはほとんど見ませんが、毎年きちんと申告をしていることが地味に大事ですよ。
なお、資本金が1億円を超えていたり、大きな会社の子会社などについては、繰越控除できる欠損金に制限が設けられています。
個人の場合
所得税法では、赤字のことを「純損失」と言い、この仕組みを「純損失の繰越控除」と呼びます。
この純損失は、事業を行っている場合の赤字に限られますので、副業で赤字になったとしても、この仕組みは適用することが出来ません。(下記参照)
繰り越しできる期間
3年です。
繰越控除するための条件
- 欠損金が生じた年度で、青色申告により、確定申告していること
- 欠損金が生じた年度以降も、連続して確定申告していること
「赤字なら税金の申告しなくても良いよね!」となると、条件を満たさなくなってしまいますので、損しないためにも申告をしておきましょう。
他の損失がある場合
純損失は、事業を行った結果の赤字を言いますが、個人の活動はすべてが事業ではありません。
事業以外から生じた次のような損失であっても、純損失とは条件など変わるところもありますが、3年間の繰越控除が出来る仕組みがあります。
- 雑損失……災害や盗難、横領による損失(詐欺による損失は含まれません。。。)
- 上場株式等を売ったときの損失
- 先物取引にかかる損失
- マイホームを売ったときの譲渡損失
※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいております。
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