【電子帳簿保存法】データ保存が楽になる相当の理由を解説
- PDFでの請求書とか、保存の仕方が変わるって聞いたけど……
- データの保存って大変なんでしょ?
- 簡単になる方法ないの?
売上や経費をごまかすために、根拠となる請求書などのデータを改ざんしてしまうケースが出てきました。
そこで、データの保存について、令和6年(2024年)から新しいルールが始まることになりました。
それが、電子帳簿保存法の改正です。
けっこう大変な改正ですので、人手が足りない・お金が足りないなど「相当の理由」がある方には、すこし楽な方法も用意されています。
ややこしめの改正ですが、大事なのは「データの保存が必要になる」という点です。
本来のルールは?
お金を受け取る・支払うときは、請求書や見積書、納品書、領収書などを渡す・受け取る。
当たり前のことですし、必ずやっていると思います。
この請求書などは、紙で受け渡しするときもあれば、PDFなどのデータで受け渡しするときもあります。
以前から「白紙の領収書」というものがありましたが、最近はデータを改ざんして経費を水増しするようなことも目に付くようになりました。
そこで、請求書などの受け渡しが、紙ではなく、データ「だけ」の場合は、そのデータを保存するようにルールが変わりました。
紙にプリントして、データは捨てる、これがダメになるのです。
このルールが始まるのは、令和6年(2024年)からです。
対象になるもの
紙ではなく、PDFやJPEG形式などのデータのみでやり取りをする請求書や領収書など。
売上や経費などの金額の根拠になるものは、すべて対象になります。
※ パソコンやスマホの画面に表示しかされないものも含みます。
※ 取引先からもらうもの、自分が渡すものの両方が対象です。
具体例
- メールに添付するPDFの請求書や領収書……PDFを保存
- 請求金額を変更・追加等した際の、メールやLINEなどの本文……メールのダウンロード、LINEのスクショを保存
- アマゾンや楽天等のネットショップで購入したときの領収書……ダウンロードして保存
- スマホのアプリで決済しているときの金額がわかる画面……スクショを保存
- クラウドサービス等でダウンロードする領収書 など
保存の仕方
ただ保存すればよいのではなく、「データを改ざんしていませんよ」と言えるように整える必要があります。
いくつか方法があるのですが、一番簡単なのは、次のやり方です。
4つの条件すべてを満たす必要があります。
- データをパソコンなどに保存する
- データの訂正等に関する事務処理規程を定める
- 「日付・金額・取引先」で検索できるように、データの名前を変えるか、Excelなどで表を作っておく
- 税務署の職員に「見せて」と言われたときに対応できるように、ある程度の区切りでフォルダにまとめておく
※ 事務処理規程は国税庁HPからダウンロードできます。
とくに「3.」の条件がやっかいです。
「データの改ざんのことで、そこまで必要?」って思いますよね。
どさくさに紛れて、税務署(税務調査)のための改正になってしまっています。
残念なことに、これがルールになってしまったのです。。
しかも、このルールを守らないと「青色申告の取り消し」をされてしまう恐れもあるのです。
「ひどい!」と思いますが、ある程度の体裁は整えておきましょう。
相当の理由があるとどうなる?
「相当の理由」があるなら、データの保存は次の方法でよくなります。
3つすべてを満たす必要があります。
- データをパソコンなどに保存する
- 紙にプリントして保存しておく
- 税務署の職員に「見せて」と言われたときに対応できるように、ある程度の区切りでフォルダにまとめておく
面倒な「日付などで検索できるように……」という作業がいらなくなるのです。
ただ、データ自体の保存は必須です。
この点が、今までとは変わります。
相当の理由ってどんなこと?
要は、本来のルールに対応できない理由です。
次のような理由でも大丈夫です。
- 人手が足りない
- 時間が作れない
- お金が足りない
「相当」という割に、言葉が簡単すぎてホントに大丈夫?って思った方のために、根拠となる資料も載せておきますね。
興味ないよ、という方は、飛ばしても大丈夫です。
「相当の理由」は、当該規定が電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意して設けられたものであることを鑑みて、例えば、その電磁的記録そのものの保存は可能であるものの、保存要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うことが困難な事情がある場合を対象とするものであり、資金的な事情を含めた事業者の経営判断についても考慮がなされることとなる。
ただし、システム等や社内でのワークフローの整備が整っており、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存できる場合や資金繰りや人手不足等のような理由ではなく、単に経営者の信条のみに基づく理由である場合等、何ら理由なく保存要件に従って電磁的記録を保存していない場合には、この猶予措置の適用はないことに留意する。
(電子帳簿保存法取扱通達解説より)
まとめ
令和6年(2024年)から始まる電子帳簿保存法の改正について解説しました。
請求書や領収書を、紙ではなくPDFなどのデータのみでやり取りするときは、データ自体の保存が必要になります。
その保存方法は、基本的には日付などで検索できるように整えるのですが、「相当の理由」があるときは、すこし楽になります。
いずれにしても、大きな変化は「データの保存が必要」ということです。
まったく何もしないと、青色申告が取り消しになるリスクもありますので、今のうちから少しずつ慣れておきましょう。
この改正は、令和6年1月1日、お正月になった途端に始まりますので、うっかりすると忘れてた……となるかもしれないし。
※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいております。
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