現金が合わないときは「現金」科目を使わないのもアリ
- 現金の残高が合わないのはなぜ?
- どうやって合わせればよいの?
- 楽な方法はないかな?
事業をしていれば現金をつかうことは避けられません。
このとき帳簿と実際の残高が合わないという問題がありますが、その原因は経理が足りていない・間違っていることにあります。
もちろん、帳簿・実際は合わせなければいけません。
けれど、この合わせる作業はけっこう大変です。
そこで、現金という科目ではなく、役員借入金をつかって日々の経理をするという方法もある、ということを解説します。
目次
現金の残高が合わない理由
会計ソフトなどに入力し、現金の残高をみてみると、実際の残高と合っていない……
微妙に違うくらいであれば訂正もラクですが、異様に多い、残高がマイナスになっている、は避けたいものです。
本来は帳簿と実際がピッタリ合っていることが理想ですが、この問題、実はよくあることです。
この合わない理由ですが、大きなところでは共通しているものがあります。
使っていないことになっている
口座からお金を引き出し、何かに使った。
その使ったときの領収書などがない場合は、経理のしようがありません。
「お金を引き出したあと何をしたか」が帳簿に残らないのです。
何かに使えばお金は減りますが、減っていないことになっているのです。
そのため、実際よりも帳簿の残高は多くなります。
プライベートに流用した
手持ちのお金がなかったので、会社の口座から引き出し、プライベートの用事に使う。
ままあることですが、プライベートで使ったときのレシートなどは捨てる方も多いです。
事業とプライベートの区別は、その都度しておいた方が、後が楽ですし。
このときの経理は、会社のお金を「役員などに貸した」と処理します。
「役員に貸し付け○○円」といったメモ書きでもあればよいのですが、これがないときは経理ができません。
誰かに貸せばお金は減りますが、減っていないことになっているのです。
そのため、実際よりも帳簿の残高は多くなります。
会社とプライベートの区別がイマイチ
- 会社の経費を立て替える・後日に精算する
- 会社のお金を借りる・返す
- 会社にお金を貸す・返してもらう
一人社長や家族経営の場合、こういう事はよくあります。
このようなとき、それぞれの取引がちゃんと完結すればよいのですが、そうではない時もあります。
お金を借りっぱなし・貸しっぱなし、のように。
役員が借りたのに返さなければ、会社のお金は減ったままです。この逆もありますよね。
とりあえず手元にお金があれば忘れがちになりますが、借りたら返す・貸したら返してもらう、という経理も必須です。
現金の売上を忘れている
売上があれば、お金は増えます。
業種にもよりますが、普段は口座での取引がメインで、たまたま小口の取引を現金でもらった場合などは、経理を忘れてしまうこともあります。
「あれ、このお金なんだっけ……?」
現金がマイナスになっているのに気づかないときは、これが原因のこともあります。
入力の間違い
- 同じものを二重に経理した
- 数字が違っていた
- 忘れものがある などなど
経理あるあるかもしれませんが「114」を「144」としてしまう……など同じ数字が並ぶときは、間違いがちです。
二重経理や忘れものなども含めて、このような間違いが起こるのは、しょうがない面もあります。
いちど経理をしたら、あとで再チェックをすれば、大丈夫でしょう。
現金が合わないときどうするか
現金の残高が合わないとき、まずは過去の経理を見直します。
それでも合わないときは、役員借入金をつかい合わせます。
役員貸付金を使わざるを得ないケースもありますが、会社で利息を取らなければいけないので、金額の大小など考慮して、できれば使わない方向で検討しましょう。
このとき、雑損失や雑収入をつかって合わせる方法もあります。
ただ、利益に影響してしまうため、現金が合わない理由に確信がもてないときは、使うのはやめておきましょう。
利益調整の方法としての側面があるので。
現金という科目を使わない方法
現金が合わないのは、現金という科目を使っているから、とも言えます。
そこで、現金ではなく、常に「役員借入金」をつかい経理するという方法もあります。
帳簿にあるのは「銀行口座」だけで、現金はない、という状態になります。
ただし、飲食業など現金での取引がメインの場合は、やめておきましょう。
経費などの支払いは、常に、役員が立て替えている、というイメージです。
口座から現金の引き出しは、すべて役員への返済と経理します。
なんらかの入金があったときは、同じく役員への返済と経理します。
現金がかかわる取引は、すべて、現金ではなく役員借入金で経理するのです。
これで、現金の残高が合わないという問題からは解放されるので、経理もラクになるはずです。
ただし、注意点もあります。
残高が大きくなりすぎないように
役員借入金は、口座の状況をみて、ときどき返済(役員へお金を渡す)する必要があります。
赤字だと、どうしても残高が膨らんでしまいますが、あまり大きくなり過ぎないように気をつけましょう。
また、残高ピッタリの返済をする必要はありません。役員借入金は常に残高があることになるので。
ゼロ並びの数字で大丈夫です。
(これもちょっとしたメリットです)
誰からいくら借りたか
会社に貸したのが100万円なのに、300万円かえってきた……
これは、会社を経由して、個人の間で贈与をしたことになります。
なので、家族経営の場合は、誰がいくら会社に貸したかを把握しておきましょう。
役員貸付金は使わない
会社に貸したよりも、返ってきた方が多ければ、役員借入金の残高はマイナスになります。
これは、「役員貸付金」になっている状態です。
この役員貸付金は、会社が利息を取らなければいけない、というルールになっています。
これを避けるためには、役員貸付金になる状態を避ける必要があるので、ときどき会社の貸借対照表をチェックするようにしましょう。
まとめ
現金の残高が合わないのは、ままありますが、その代表的な理由や解消する方法を解説しました。
この問題を避けるには、現金という科目ではなく、役員借入金を使う方法があります。
これで、細かい数字をみる必要が減り、経理がラクになるはずです。
しかし、100%解放されるわけでもありません。
やっぱり、定期的に会社の数字をみておいた方が良いですし、とくにお金の管理は大事だなと思っています。
※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいております。
当事務所のサービス