いくらの売上を目指せばよいのか計算してみよう(損益分岐点)
問題なく経営していくには、いくらの売上が必要なんだろう……
頑張って売上を増やしているが、結果、利益にどう結びつくのかピンとこない……
この記事では、そんな疑問を解消するのに役立つ方法の一つをご紹介します。
得も損もしない売上(利益が、ちょうどゼロになる売上)を損益分岐点の売上高と言いますが、それを計算する方法を少し応用します。
必ずしもピッタリとはいかないかもしれませんが、目安には十分なると思いますよ。
現状を図でイメージしてみる
まずは、損益計算書または試算表など、利益を計算する書類をご用意ください。
過去2~3年分あると、数字に確信が持ちやすいですよ。
細かい科目がズラッと並んでいると思いますが、次のようにざっくりと図に置き換えてみましょう。
(注)後で計算を続けるために、サンプルの数字を入れてあります。
経費を、変動費と固定費に分ける
損益分岐点の売上高を求めるためには、経費を次の2つに分ける必要があります。
- 変動費……売上に比例して増減する費用
- 固定費……売上に関係なく必ずかかる費用
ある費用がどちらになるのかは、単純に勘定科目で判断できるものではなく、業種や業態により異なります。
1年分の実績だけではなく、過去2~3年分も考慮して判断するのが良いです。
また、細かく突き詰めていくとキリがないので、金額が少ないものは切り捨てるのもアリですよ。
「売上に比例して増減するか」が判断基準です。
損益分岐点の売上高を計算する
変動費と固定費に分けた後の図を、少し分解します。
新しく「限界利益」が登場しますが、これは「売上ー変動費」と計算されるものです。
そして、売上を100%としたときに、変動費・限界利益がそれぞれ〇〇%になるのか、計算してみましょう。
この〇〇%が、以降の計算に必要になります。
これで材料が揃ったので、損益分岐点の売上高を計算することができます。
得も損もしない売上(利益が、ちょうどゼロになる売上)は、限界利益=固定費となる売上です。
算式にすると「限界利益(売上×80%)=固定費(60)」ですね。
%表示しているところが、金額に直すといくらになるか計算すれば、必要な売上が分かります。
もともとは、利益が「20」ありました。
そこで、利益をゼロにするには売上も「20」減らせばよい、とならないのは、変動費があるからです。
専門的な指標の話
事業の状況を確認する場面は、定期的にあると思います。
そんな時に「現状の売上は○○で、損益分岐点の売上高は△△なので……」と言われても、いまいちピンとこない事ってないでしょうか。
説明が詳しく長いよりも「○○%です」と一言で表した方が分かりやすい時もありますよね。
それが指標ですが、代表的なものが2つあります。
損益分岐点比率
実際の売上=100%としたときに、損益分岐点の売上高はどれくらいか、を表しています。
ですので、小さければ小さいほど赤字になりにくい事を表す指標です。
安全余裕率
同じく、実際の売上=100%としたときに、損益分岐点の売上高を超えた部分がどれくらいか、を表しています。
上記とは逆に、大きければ大きいほど余裕があることを表す指標です。
黒字になりやすくする方法
価格を上げる
言うのは簡単ですよね。。。
ただ、売上を確保するために、無理して価格を下げていた事があるなら、考慮の余地はあると思います。
(もちろん、他にも色々な着眼点はあると思いますが。。。)
変動費を下げる
変動費は、業態によりさまざまなものがあるため、改善するために検討できる事も多岐に渡ります。
例えば、仕入れたモノを売る、という事なら、次の様なことを検討できると思います。
- 大量仕入や支払い条件などで仕入値を下げられないか
- 材料や在庫のムダを削る
- 仕入先の再検討
固定費を削減する
一般的に、事務所の家賃、駐車場代、人件費、福利厚生費、消耗品費、保険料、水道光熱費、通信費などが固定費にあたります。
単純に削減すると、モチベーションに直結しそうなものもあると思います。
ですので、今の行動やルーティーンを見直して効率化する、という観点から検討してみるのをおススメします。
応用編
借入金がある場合
借入金の元本の返済は、経費にはなりません。
利益を元に返していくことになります。
ですので「元本の返済額+固定費」を、カバーできる売上を目指せばよいのです。
希望の役員報酬を取るためには
役員報酬は、固定費に含まれています。
今の役員報酬を、希望される金額に置き換えてみると、固定費が変わると思います。
その変わった後の固定費を、カバーできる売上を目指せばよいのです。
最後に
今回の計算でポイントになるのは「変動費がどれくらいか」という事だと思います。
過去の実績の通りにいくとは限らないですし、実際に計算した通りにいくとも限りません。
黒字を目指すときに「とりあえず支払いは少ない方が良いよね」と考えるのもアリです。
しかし、これらの計算を試してみた結果、「日々の行動の裏になんらかの数字の根拠がある」という事が大事なんだ、と思っています。
(注)記事作成時点の情報・法令等に基づいております。
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