翌年1月にむけ12月中に片付けておくべき経理のこと
毎年1月には、おおきめの税務手続きが4つあります。
年越しとお正月を楽しみたいなら、12月中に片付けておくべきことを確認しておきましょう。
目次
翌年1月におこなう税務手続き
毎年1月には、つぎの税務手続きをおこないます。
- 源泉所得税の納付(1月20日まで)
- 給与支払報告書の提出(1月末まで)
- 法定調書の提出(1月末まで)
- 償却資産税の申告(1月末まで)
源泉所得税の納付(1月20日まで)
年末調整をうけた12月分の源泉所得税を、1月20日までに、税務署へおさめます。
もし、納期の特例をうけているなら、7月~12月の半年分です。
とくに納期の特例をつかっているときは、金額の目安を知っておきましょう。
給与支払報告書の提出(1月末まで)
給与支払報告書は、住民税における源泉徴収票のようなものです。
内容は、源泉徴収票とほとんどおなじ。
おなじく個人の税金である所得税は、年末調整または確定申告により、自分で計算します。
ですが、住民税は、役員や従業員が住んでいる市区町村が計算することになっています。
その計算のために、給与支払報告書をそれぞれの市区町村へおくるのが、この手続きです。
法定調書の提出(1月末まで)
法定調書とは、所得税法などの法律により、税務署へださなければいけない書類をいいます。
法律により定められた調書…なのです。
その法定調書は、1月~12月の間におこなった支払いが、対象になります。
たとえば源泉徴収票も法定調書にあたりますが、他にもあり、全部で60種類くらいあります。
ただ、ふだん出てくるもので対象になるのは、つぎの支払いです。
- 役員報酬、給与、ボーナス
- 退職金
- 税理士などの士業やデザイナーなどのスペシャリストへの報酬
- 家賃、地代
- 不動産等の購入
- 不動産の売買や貸付けのあっせん手数料
- 配当金
これらについて、1月~12月の集計をしなければならないのです。
とくに法人で12月決算でないかたは、年度をまたいで集計することになります。
集計まちがいなどに、地味ですが気をつかうもの…ということを知っておきましょう。
償却資産税の申告(1月末まで)
償却資産税とは、事業でつかっている「減価償却をするものにかかる固定資産税」のことです。
不動産はもちろんですが、機械や器具備品などにも固定資産税がかかるのです。
ただし、車にはかかりません。自動車税がかかるので。
毎年、1月1日に所有しているものを、1月末までに申告します。
ただし、建物や土地はのぞきます。
固定資産税を計算するのは市区町村ですが、登記した情報が手にはいるので。
なので、不動産以外のものを申告することになるのです。
12月中に片付けておくべき経理のこと
上記4つの手続きをふまえ、つぎのことを12月中に押さえておきましょう。
(以下では触れませんが、できる範囲で集計も忘れずに)
- 役員や従業員の引っ越し
- 単価10万円以上20万円未満のものの経理方法
- 個人の外注のかたへ確定申告の促し
- 法定調書の対象になる支払い相手の情報の整理
役員や従業員の引っ越し
役員報酬や給与からは、住民税も天引きします。
その住民税について、納期の特例をつかっているときは、注意したいことがあります。
それが引っ越しです。
というのも、納期の特例は、それぞれの市区町村ごとに申請するからです。
引っ越しをしたこと自体は、ふだんの会話から分かることもあります。
すこし難易度は高いですが、去年と今年の源泉徴収票などを見比べることでも。
そのときに、納期の特例のことまで考えがおよばないことがあるのです。
「申請をしなきゃいけない…」ということを。
すると気がつくのは、翌年5月になって住民税の通知が届くときです。
そのときにバタつかないために、引っ越しの有無を確認し、申請までの段取りを組んでおきましょう。
単価10万円以上20万円未満のものの経理方法
単価10万円以上20万円未満の固定資産には、パソコンや応接セットなどの器具備品があろうかとおもいます。
これらは、経理方法によって、償却資産税の対象になる・ならないが変わります。
その経理方法には、つぎの2通りのものがあります。
- 全額を、使いはじめたときに経費にする……償却資産税の対象になる
- 3年かけて、1/3づつ経費にしていく……償却資産税の対象にならない
法人税や所得税のことをかんがえると、全額を経費にしたほうが、税金はすくなくなります。
でも、このときは償却資産税の対象になってしまう…
いっぽう、3年かけて経費にしていくときは、法人税などはおおくなってしまいます。
代わりに、償却資産税の対象にはならない。
ただし、このときの法人税などは、その年度だけをみたときのことです。
最終的に経費になる金額は、どちらの経理をしても、おなじです。
経費になる時期が、ズレるだけのことなのです。
また、償却資産税は「未償却残高」にたいしてかかります。
その未償却残高の合計が、150万円未満なら、税額はゼロになる…という特例のようなものが存在します。
トータルの税金をかんがえたとき、避けたいのは償却資産税をはらうことです。
でも、未償却残高がつねに150万円未満になるなら、対象にはなるものの、償却資産税はゼロです。
…ということをふまえて、12月中に、経理方法を決めておきましょう。
償却資産税は、1月1日に所有しているものを、1月末までに申告するので。
個人の外注のかたへ確定申告の促し
個人の外注のかたへは、確定申告をするように促しておきましょう。
とくに、もともと従業員だったかたには。
というのも、ときに外注費と給与の区別はあいまいなことがあるからです。
外注費には、消費税がかかり、社会保険はかかりません。
いっぽう給与には、消費税がかからず、社会保険がかかります。
おなじ金額をはらうなら、外注費のほうが、消費税の納税がへり、社会保険の負担もへるのです。
ということがあるので、「この外注費は給与じゃないの…?」というツッコミがよくあります。
もし外注費を給与認定されると、追加で税金をはらうことになってしまいます。
そのときに抗弁できる要素のひとつに、「相手が確定申告していること」があるのです。
(参考記事)外注費が給与認定されないために整えておくこと
法定調書の対象になる支払い相手の情報の整理
法定調書のなかには、報酬や家賃・地代にかんするものもあります。
それらには、支払い相手の名前はもちろん、住所やマイナンバーも記載することになります。
家賃・地代なら、仲介のかたではなく、貸し主の。
これらの情報は、12月中に押さえておきましょう。
1月というのは、なんだかんだ忙しいものですから。
まとめ
毎年1月には、おおきめの税務手続きが4つあります。
これらの準備は、12月中に、9割方かたづけておくことが望ましいです。
年越しもお正月気分も、経理に邪魔されないようにしておきましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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