経理は病気にならないための予防です

病気はだれでもイヤなものですが、事業が病気になることもあります。

お金が足りない……といった。

予防のためにどう経理をつかうのか、みていきましょう。

 

経理は病気にならないための予防です

病気がみつかれば、治療をしなければなりません。

ちいさな虫歯のように、その場でパッと終るものもあります。

そうではなく生活習慣病のように、病院での治療だけではなく、ふだんの生活も変えていかなければならないものもあります。

程度に差があったとしても、病気が発覚したときには、治療のためにお金も時間もかかるのです。

 

もし、予防のために通院していたら……?

病気だとわかること自体が、やっぱりショックですからね。

こんな風に思ってしまうものです。

 

でも、予防といっても通院が必要なときもあるでしょう。

また、「大丈夫だろう」とは思いつつも、体には悪いけれど美味しい食事などを我慢することもあるかもしれません。

なるかどうか分からない病気のために、ここまでするかどうか。

 

その判断には、「手遅れにならないか」という視点も必要です。

治療できないこともあるので。

 

と考えると、多少のお金や時間がかかったとしても、予防しておくほうが良さそうですよね。

それに、結局は治療よりも予防のほうがラクですから。

 

ここまでのお話は、次のように事業にとっても同じです。

  • 手遅れ……どうにもならなくて倒産してしまうこと
  • 病 気……ヒト・モノ・カネなど経営の土台になるものにおおきな問題が生じること
  • 予 防……健康診断のように、定期的に経理をチェックすること

 

病気にならないために、どう予防すればよいのか。

定期的に決算書や試算表をみるときの、その見方をみていきましょう。

 

予防のために試算表などをどう見るか

事業が健康なときは、お金が問題なくまわっています

なので「お金がまわるか」を軸に、次のことをチェックしましょう。

  • 支払いは問題なくできるか
  • 在庫は多すぎないか
  • ムダなモノはないか

 

なお、お金の問題はおもに貸借対照表にあらわれます。

売上や経費・利益がのっている損益計算書も大事ですが、今回は貸借対照表メインでみていきましょう。

 

支払いは問題なくできるか

いまあるお金で、みえている支払いが問題なくできるかどうか。

まずは、このことを確認しましょう。

 

みえている支払いには、次のようなものがあります。

最後の1つをのぞき、貸借対照表の「負債」にならんでいるものです。

  • 買掛金
  • 未払金など未払○○
  • 預り金(源泉所得税・住民税)
  • 借入金の返済
  • 人件費や家賃などの固定費……(注)

(注)当月分を当月払いするものは、貸借対照表にのってきません。

   また、現金主義で経理しているときも、のらないものがあります。

 

もしお金が足りないなら、1~2か月後など近いうちに入ってくるお金を加味しましょう。

手元のお金に、売掛金や未収入金などをくわえてみるのです。

 

もしお金が足りているとしても、入金・出金のタイミングによっては足りない瞬間があるかもしれません。

お金のあまり具合によっては、念のために資金繰り表で確認したほうがよいときもあります。

(参考記事)「会社のお金がよく分からない」から抜け出すために(資金繰り表)

 

また、もしかしたらお金が足りないときもあるかもしれません。

 

こんなときは、おなじく資金繰り表をつかい、「いつ・いくら足りないか」をはじき出しましょう

そうすれば、すくなくとも今後の目標がたちます。

また、目標が達成できなかったらどうするか。

売れるものは売る。自腹をきる。借入れをする。など金策をかんがえましょう。

 

在庫は多すぎないか

在庫が多いことの問題は、出ていったままのお金が多いことです。

もし小まめに仕入れをしていたら、いま手元にのこっているお金があったかもしれない。

そして、それで他の支払いができたかもしれない。

 

また、事業は次のサイクルの繰り返しです。

  • 仕入や経費でお金が出ていく → 売上として戻ってくる

 

このサイクルを回せば回すほど、利益もお金もふえていきます。

在庫が多すぎるというのは、このサイクルが回っていないことでもあります。

なので在庫の抱えすぎは問題なのです。

 

在庫が多すぎるときは、どうやってお金に換えるかをかんがえましょう。

どんなサイクルが理想か、ということとあわせて。

 

ムダなモノはないか

すべてのモノは、もともとお金でした。

そして、出ていったお金を売上として回収するのがビジネスです。

 

貸借対照表の「資産」をみてみましょう。

現金・預金や、近いうちにお金に変わる売掛金や未収入金などはのぞきます。

それ以外のモノはどうでしょうか。

 

  • お金が出ていく → 売上として戻ってくる

このサイクルにのっているでしょうか。

 

なかには、失敗の可能性をふまえた投資があるかもしれません。

また、趣味の要素がはいっているものもあるかもしれません。

採算よりも必要にせまられて、どうしても必要なものもあるでしょう。

 

でも、明らかにムダなモノ、事業のサイクルにのっていないものはないか。

これについては「お金に換わるかどうか」を検討しておきましょう。

面白さや興味があってもよいとは思うのですが、将来お金にこまる可能性と天秤にかけたとき、こう言わざるを得ないのが税理士だったりします。

 

まとめ

病気はだれでもイヤなものですが、手遅れにならないためにも予防が大事です。

それは事業もおなじで、健康診断のような予防にあたるのが定期的な経理のチェックです。

とくに将来にお金の問題がないかという点から、できれば毎月、あるいは2~3か月にいちどは試算表を確認しましょう。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。