交際費は科目を変えても交際費
個人のかたの交際費には上限などありませんので、今回は法人のおはなしです。
交際費は実態で判断する…ということを確認しておきましょう。
法人の交際費には年間800万円までという上限がある
法人の交際費は、年間800万円までしか経費になりません。
より正確にいうなら、年間800万円までしか「損金」にならないのです。
800万円を超えるぶぶんは、損金不算入となります。
なぜこのようなルールがあるのか……?
さいしょに交際費にかんするルールが導入されたのは、昭和29年(1954年)のことです。
戦後の復興のときです。
戦争でうけたダメージを回復するには、会社の財産を厚くしていかなければならない。
交際費というのは、ときに必要なものです。
同調圧力や慣習といったこともあるでしょうし、お礼など感謝をあらわすことも必要でしょうから。
ただ、その交際費に制限をもうけることで、ムダづかいの抑制にもつながるはず…
こんな経緯で、交際費にかんするルールが導入されました。
ちなみに、法人税にかんする法律には、おおざっぱなところで次の2つがあります。
- 法人税法
- 租税特別措置法
法人税法は、国会で変更の決議でもなければ、永遠につづくものです。
いっぽう租税特別措置法は、法人税法を、期間をくぎって上書きするための法律です。
つまり、いずれは無くなること前提のルールなのです。
交際費は、この租税特別措置法にさだめられています。
期限がくるたびに、更新され、かれこれ70年はつづいているのです。
上限など経費にならないのはいくらか…というのは、時期により、すこしづつ変わってきています。
でも、交際費にかんするルール自体はなくならないものとして、つきあっていくのが良さそうです。
その交際費とは、実態できまり、「科目を交際費にしたから交際費」というものではありません。
交際費は科目を変えても交際費
交際費とは、ざっくり言うと、取引先と仲よくなり、仕事の受注やいろんな便宜をはかってもらうためにおこなう接待などをいいます。
法律では、つぎのようにさだめられています。
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものなどをいう。
(租税特別措置法 61条の4から抜粋)
すこし小分けにしてみると、交際費とは、つぎの3つの要件をみたすものといえます。
- 支出の相手……事業に関係のあるかたである
- 支出の目的……親睦度の向上などによる取引関係の円滑な進行である
- 支出の形態……接待、供応、慰安、贈答などである
たとえば、ゴルフが分かりやすいですよね。
このとき気をつけたいのは、ゴルフにかかわる支払いがすべて交際費になること。
基本的に、移動のための交通費や、道中の飲食代も交際費にふくまれるのです。
あるいは、社内のかただけでおこなう飲食。
いっけん「福利厚生費…?」とおもえますが、福利厚生費には、全従業員が対象になっており、世の常識からみて高額ではないこと、という条件が付されています。
また「会議費」もかんがえられますが、会議の実態を、自分で証明できなければなりません。
仲がいい特定の誰かだけを連れて飲食にいくときは、交際費になることもあるのです。
広告宣伝費も、交際費になる余地があります。
広告宣伝とは、不特定多数のかたへむけて、自分の商品・サービスを知らせるためのものです。
もし、広告宣伝という名目で、特定のだれかだけに贈答などすれば、交際費になるのです。
ここまで見てきただけで、つぎの科目に、交際費がはいりこむ余地があります。
- 旅費交通費
- 会議費
- 福利厚生費
- 広告宣伝費
交際費とは、科目できまるものではなく、実態できまるもの。
ゆえに、法人税の明細でも、つぎのように交際費以外の科目にふくまれている交際費を記入するようになっています。
年間800万円も交際費をつかうのは、中小企業なら、むずかしいこともあります。
そんなに必要ない…ということから。
でも、交際費がふえてきたら、「今いくらつかっているか」など確認しておきましょう。
また、変えてもよい科目なら、交際費に変えておいたほうが、集計など後がラクなこともあります。
まとめ
交際費は、科目名ではなく、実態で判断することを確認してきました。
どうしたら経理がラクになるか…ということも考えておきましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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