源泉所得税を払わずに放置しているとどうなるか

源泉所得税の滞納があると、まずは税務署から郵便がとどきます。

それを放置すると、つぎは電話。

その先は経験がないのですが、おそらく税務調査、あるいは強制的な何かがくるはずです。

 

国税の滞納状況

毎年、国税庁が国税の滞納状況を公表しています。

それによると、令和5年度末における滞納は次のとおりです。

 

税目滞納額割合
消費税3,580億円38.6%
申告所得税(注)2,681億円28.9%
法人税1,233億円13.3%
源泉所得税1,134億円12.2%
相続税560億円6.0%
その他88億円0.9%
9,276億円100.0%

 

(注)申告所得税とは、自分で確定申告をしたときの所得税です。

 

上の数字をグラフにしてみると…

 

源泉所得税は、順位こそ低いものの、1位である消費税とは共通していることがあります。

それは、「税務署へ払うべき金額をつかってしまうと、リカバリーが大変」ということ。

 

源泉所得税は、役員報酬や給与などの一部です。

たとえば、次のようなとき。

  • 給与……20万円
  • 源泉所得税……1万円
  • 手取り……19万円

 

手取りである「19万円」を払ったとき、経費には給与として「20万円」が計上されます。

手取りの金額=経費、ではないんですね。

給与トータルが、源泉所得税を払うよりも前に経費になる。

源泉所得税「1万円」を払うときは、経費は増えないのです。

 

もし、その「1万円」をほかの経費につかうなら、利益はへります。

そこで、たとえば法人税は少なくなる。

でも、源泉所得税を払わなきゃいけないことは、残ったままです。

「お金をつかうと税金が減る」という理屈が、源泉所得税には通じないといえます。

(これは、消費税にも似たところがあるのです)

 

そこで、源泉所得税のぶんのお金が足りないとなったら、そこから利益を増やす必要がでてきます。

お金を増やすために。

 

ただ、源泉所得税の期限は、その月のぶんを翌月10日まで…です。

納期の特例を受けていれば、半年ごとですが。

それでも、お金が足りないことが分かってからお金を増やそうと思っても、なかなか間に合わない。

 

なので、滞納も起こりがち。

そして、負のループにはいると、抜け出すのも難しいのです。

 

ひとつには、お金をつかってしまう癖を直すのが大変ということがあります。

あるいは、税金を払わなくてもよいかも…という癖。

また、つかってはいけないお金がいくらあるかを把握するのが大変ということも。

さらに、源泉所得税と似たような仕組みになっているものに、住民税と社会保険があります。

源泉所得税が滞納になるなら、これらも滞納になる可能性がたかい…

足りないお金、つまり増やさなければならないお金も、倍々になっていくわけです。

 

その滞納を放置していると、どんなことになるのか…?

 

源泉所得税を払わずに放置しているとどうなるか

源泉所得税を滞納していると、税務署から、まずは郵便がとどきます。

「源泉所得税を払っていませんが、どんな状況か教えてください。数字で」と。

 

どれくらいの期間放置していると、郵便がとどくのか…?

このサイクルは、分かりません。

滞納額にもよるかもしれませんし。

ただ、1年放置しているなら、ほぼ確実にくる印象です。

 

そして、その郵便を放置していると、電話もきます。

この電話にでたとしても、べつに怒られるわけではありませんよ。

人にもよるんでしょうが、ひかくてき淡々と数字の話をするだけです。

「〇月の役員報酬が△△円で、源泉所得税は◇◇円」と。

この数字を、向こうが要求する期間のぶん、答えるわけです。

(この電話でこじれたりすると、税務調査を誘発する可能性もあります)

 

すると、しばらく経ってから、納付書がはいった郵便がとどきます。

ひょっとすると、あわせて債務確認書のようなものも入っていて、記名押印などして返信してください…と。

これらも放置していると、おそらく督促状がとどき、差押え…という流れになるはずです。

実際に、差し押さえられたモノが公売にかけられていますし。

 

ただ、「督促→差押え」という手続きは、先に住民税でおこる印象です。

源泉所得税は前払い、住民税は後払いということが関係しているかもしれないですね。

源泉所得税は、会社などの税金ではなく、給与などをはらう相手の税金。

その相手が確定申告するなどして、自身で払っている可能性もあるので。

なので、先に住民税を払い、つぎに源泉所得税にしたほうが、役所からのツッコミはかわしやすいかもしれません。

 

ちなみに、滞納している分は、一括で払うのが原則です。

でも、滞納しているなら、お金に余裕がないことも税務署はわかっています。

なので、分割払いの交渉もできます。

このときは税務署での担当が変わるので、電話がたらい回しされる可能性も踏まえておきしょう。

 

なお、源泉所得税を滞納していれば、不納付加算税と延滞税も払うことになります。

不納付加算税は、滞納している源泉所得税の 10%。

(税務署から連絡がある前に払えば、5%)

延滞税の年利は年ごとに変わりますが、今のところは、ひとケタ%です。

ただ、これらは100%ムダなもの…ということは知っておきましょう。

 

一番いいのは、やっぱり滞納しないこと。

そのためには、「今後はらう税金はいくらあるのか」を押さえておく必要があります。

できれば、毎月。

 

いちど滞納、つまりお金が足りない状態になってしまうと…

その足りない金額の利益を稼がなければ、お金は足りないままです。

これが、意外にハードルが高いのです。

そもそもお金を稼ぐのが大変ですから。

いつでも「つかってはいけないお金はいくらか」を気にしておきましょう。

 

まとめ

源泉所得税を払わず放置しているとどうなるか、について確認してきました。

滞納の原因のおおくは、お金が足りないことです。

この点、税務署も分かっているはずで、分割払いの交渉もできます。

税金は自己破産しても免責されないとも聞きますし、逃げ切れるものでもない。

であれば、早めに交渉したほうが、きっと後がラクになるはずです。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。