年末調整って経理ではどんな作業をしているのか
経理担当や税理士が、年末調整でどんな作業をしているかについて解説します。
年末調整は、従業員それぞれのプライベートに踏み込む可能性もあるものです。
見えないところで段取りを考えたり気をつかったりすることもあるので、時間の余裕をもって年末調整しましょう。
目次
年末調整とは
年末調整とは、従業員それぞれの1年間の所得税を計算し、毎月の給与から天引きしている所得税との差額を精算することをいいます。
給与からの天引きは「前払い」なので、このような作業が必要になるわけです。
もし、それぞれが確定申告をするなら年末調整は必要ないのですが、給与をもらっているかたは日本全国で5,000万人くらいはいるそうです。
税務署側もさばききれないでしょうね。。。
そこで、給与から所得税を天引きして年末調整をする、という作業が必要になるのです。
言ってみれば、会社が従業員の確定申告を代行しているようなものです。
この年末調整によりできた情報は、ほかの税務の手続きにもつかいます。
- 法定調書……1月~12月に会社が支払った給与の金額などを報告する手続き
- 給与支払報告書……従業員が住んでいる市区町村に、その従業員の給与の金額を報告する手続き
そこで、これらの手続きも見据えたうえで作業を進めていきます。
年末調整って経理ではどんな作業をしているのか
会計ソフトと同じようなものですが、税務ソフトというものがあります。
会計ソフトは貸借対照表・損益計算書といった決算書をつくるためのものですが、年末調整をするためだけの専用の税務ソフトがあるのです。
それを利用して、次の作業をおこないます。
- 毎月の給与の情報を入力する
- 扶養のかたの情報を入力する
- 保険料の情報を入力する
- そのほか住宅ローン控除などの情報を入力する
上記の入力が終わったら、さらに次の作業がつづきます。
- それぞれの還付額または追加で天引きする金額を、会社にお伝えする
- 源泉徴収票を会社に送り、それぞれに渡してもらう
- お預かりした扶養申告書などを完成させ、会社で保管してもらえるように整える
- 源泉所得税の納付書をつくり、会社に送って納めてもらう
作業だけみればこんな感じですが、次のようなときに手が止まったりします。
- 現物給与がモレていないか
- 会計ソフト上の給与の金額と合っているか
- 引っ越ししたの?
- 保険料が控除証明書とちがう
- プライベート上のことで聞きにくいこともある
- 去年あったのに、今年はない……
現物給与がモレていないか
給与は、お金でわたすものだけではありません。
会社が、そのかたのプライベートの支払いを肩代わりしたようなときは、基本的にそのかたへの給与となってしまいます。
また、結婚祝いや出産祝いをわたすこともありますが、通常であれば福利厚生費となるものです。
しかし、これらがあまりに高額になると、福利厚生費ではなく給与になってしまうこともあります。
このような給与を、現物給与と呼んでいます。
毎月の給与明細にはのっていないこともありますが、給与ですので年末調整に含めることになります。
ということを、経営者と確認し作業をつづけます。
会計ソフト上の給与の金額と合っているか
「残業代を追加して給与明細つくり直したんだけど、古いほうの明細おくっちゃった」
このようなとき、会計ソフト上の給与と年末調整での給与はちがう金額になってしまいます。
これらは、おなじ金額にしておかなければいけません。
後日、税務調査などあったときに「あれ?」となってしまいますから。
そこで、ひととおりの作業が一段落したら、年末調整のソフトとはべつに会計ソフトのチェックも必要になるのです。
引っ越ししたの?
従業員が引っ越ししたときは、次の年度の住民税は引っ越しさきのところに納めます。
給与からは住民税も天引きし、基本的には給与日の翌月に納めます。
つまり毎月納めるわけですが、この作業を半年ごとにやってもよいという特例があります。(納期の特例といいます)
これには申請が必要なのですが、引っ越しさきの市区町村にほかの従業員が住んでいるなら、もう手続きが終わっているかもしれません。
その確認と手続きの準備。
これを、年末調整まっただなかにやる。または忘れないようにしておきます。
保険料が控除証明書とちがう
年末調整には、保険会社からとどく控除証明書も必要です。
この書類は10月半ばころから届きはじめるのですが、そこには2つの数字がのっています。
- 届いたときまでに実際に払った保険料
- 12月まで払ったとした場合の見込み額
年末調整では12月までの金額が必要なので、見込み額のほうをつかうことになるのです。
もし、そうではない方の金額が書いてあった場合にどうするか……?
(たまに空欄のときもあったりします。。。)
保険料の書類などは会社で保管するのですが、基本的には従業員のプライベートの要素が強いもの。
できれば、その従業員と直接コンタクトをとったほうがよいと思うときもあります。
かといって、経営者をとばすわけにもいかない。
結局、なんらかの形で確認するのですが、意外とよくあることで気をつかうところでもあります。
プライベート上のことで聞きにくいこともある
寡婦・ひとり親控除、障害者控除について
- 寡婦・ひとり親控除は、だれかと同棲しているときはつかえない
- 障害者控除に必要な書類がない
- 障害者の区分がちがうかも……
税理士がふだん打ち合わせをするのは、経営者や経理担当のかたです。
会社にうかがったときに顔なじみになるかたもいますが、ほとんど会話をしたことがないかたもやっぱりいます。
そのようなかたに、上記のようなことの確認をしなければいけない場面もでてきます。
「どうやって聞こうかな……」
なので、年末調整にはなるべく時間の余裕をみています。
去年あったのに、今年はない……
年末調整にかぎらないのですが、会計全般において前年度のものを参考に作業をすることが多いです。
去年あった保険料が、今年はない。
「うっかり忘れちゃった」
「解約したんだよね」
どちらなんだろうか……?
念のため、確認します。
まとめ
経理担当や税理士が、年末調整でどんな作業をしているかについて解説しました。
年末調整は、従業員それぞれのプライベートの要素も関係してきます。
そもそも1円たりとも計算間違いできないところにくわえ、金額の確認ひとつとってみても意外に気をつかったり考えたりしているのです。
やっぱり時間の余裕をもって、年末調整しましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいています。
当事務所のサービス