報酬の源泉徴収が少ないときの理由と対策

受けとっているお金に対し、源泉徴収がすくない…と感じることがあるかもしれません。

その理由と対策を、3つ解説します。

 

源泉徴収は10.21%

個人事業主としてはたらいていると、報酬から源泉徴収されることがあります。

そのときは、ほとんどの場合、報酬の「10.21%」が源泉徴収されます。

 

その計算は、税抜きの報酬金額に対してだったり、税込みに対してだったりすることもあります。

いずれにしても、「10,000円」を請求するなら、だいたい「9,000円」くらいのお金を受けとるわけです。

 

慣れてくると、手取りから逆算して「源泉徴収はこれくらい…」と計算できるかもしれませんね。

そのときに、「思ったより源泉徴収がすくない」ということがあるかも。

その理由と対策を確認しましょう。

 

源泉徴収が少ないときの理由と対策

源泉徴収がおもったよりも少ないときの理由には、つぎのことが考えられます。

  • じつは給与だった
  • 経費の立て替えのあつかい
  • 支払調書は現金主義がほとんど

 

じつは給与だった

こちらが「個人事業主としてはたらいている」と思っていても、相手は「社員やパートなどとして雇っている」とみていることがあるかもしれません。

つまり、報酬ではなく、給与をわたしている…と。

 

仕事をはじめるときに契約書をかわしていれば、その内容により判断できます。

ただ、いちいち書類などをつくらずに、はたらくこともあるでしょう。

そんなときの相互の認識のちがいにより、こうしたギャップが生まれることもあります。

 

個人事業主は、相手の事業にとっては、外のひと。

いっぽう、社員やパートなどは、中のひと。

このような違いがあるため、源泉徴収もかわります。

報酬なら10.21%のところ、給与なら金額によってはゼロのことも。

これが、「思ったより源泉徴収がすくない」ことの原因かもしれません。

 

もし給与なら、かならず「源泉徴収票」を受けとることになります。

いっぽう報酬なら、かならずではありませんが「支払調書」を受けとることがあります。

この書類のタイトルも、確認してみましょう。

 

また、給与なら年末調整がありますが、報酬にはそれはありません。

11月~12月あたりに年末調整の書類などをつくっていないか…も確認しておきましょう。

 

なお、所得税の申告では、つぎのような違いがあります。

  • 報酬……青色決算書または収支内訳書をつくり、事業所得として計算する
  • 給与……源泉徴収票の内容を申告書にうつし、給与所得として計算する

 

相手が給与としているものを、こちらでは報酬として申告をする…

相手の確認なしに、これをするのは止めておいたほうがよいです。

というのも、相手には、法定調書や給与支払報告書の提出…という手続きがあるからです。

  • 法定調書の提出……税務署へ、一定額以上の給与の情報をほうこくする
  • 給与支払報告書の提出……あなたがお住まいの自治体に、あなたの給与の情報をほうこくする

 

もし、給与を報酬として申告すると、後日に役所から「相手からの情報と申告に一致しないところがある」などの確認がくるかもしれません。

なので、相手が給与としているなら、こちらも給与…とあわせておいたほうが無難なのです。

場合によっては、過去の手続きをひっくりかえして直すことにもなるので。

 

ここまでを踏まえたうえで、「報酬なのか、給与なのか」は相手と相談しましょう。

今後のため、場合によっては過去のこともあわせて。

 

経費の立て替えのあつかい

仕事にかかった経費を、相手に請求することもあります。

このとき、その経費には、つぎの2通りの経理方法があります。

  • 自分の経費にする……領収書は自分のもの
  • 相手の経費にする……領収書は相手にわたす

 

もし、自分の経費にするなら、報酬は経費をふくめた金額になります。

そして、その経費をふくめた金額をベースに、源泉徴収されます。

 

いっぽう、相手の経費にするなら、報酬には経費の金額はふくまれません。

そのため、自分の経費にするときよりも、すくない金額をベースに源泉徴収されるのです。

このときは、たとえば次のように経理をします。

  • 経費をはらったとき
立替金 (経費の金額) 現金または預金 (経費の金額)

 

  • 請求するとき
売掛金 (経費をのぞいた金額) 売上 (経費をのぞいた金額)

 

  • 入金されたとき
現金または預金 (右の合計) 売掛金 (経費をのぞいた金額)
    立替金 (経費の金額)

 

 

もしかすると、「思ったよりも源泉徴収がすくない」のは、このことが原因かもしれません。

経費の領収書をどうしていたか…振り返っておきましょう。

 

なお、このことについて、対策とよべるようなものはありません。

強いて言うなら、相手に経費の領収書をわたすときは、控えをのこしておきましょう。

そうでないと、入金されたときに内訳が分からなくなるかもしれないので。

 

支払調書は現金主義がほとんど

「思ったよりも源泉徴収がすくない」とかんじるのは、支払調書をみたときかもしれませんね。

 

その支払調書は、1月~12月の仕事について、現金主義で作られることが多いものです。

  • 現金主義……お金が出入りしたときに、計算などの対象に組みこむこと

つまり、1月~12月に、いくらお金のやり取りがあったか…と。

 

いっぽう税金の申告は、発生主義でおこないます。

  • 発生主義……お金ではなく、モノ・サービスが動いたときに、計算などの対象にくみこむこと

 

たとえば、12月ごろに大きな仕事をしたとき。

その支払いは、年が明けてからになることもあります。

すると、その12月ごろの仕事は、支払調書に組み込まれていない可能性があるのです。

それが、支払調書をみたときの「思ったよりも源泉徴収すくない」原因かもしれません。

 

ただ、これはしょうがないこと。

とにかく、税金の申告・売上の集計を間違えないように気をつけましょう。

売上は、金額が大きいこともあり、間違えたときのインパクトも大きいですから。

 

まとめ

報酬の源泉徴収がすくない…と思ったときの理由などについてみてきました。

源泉徴収がすくないことは、申告するときの納付がおおくなる・還付がすくなくなることにつながります。

ただ、1年間の税金は、源泉徴収にかかわらず、おなじ…でもあります。

この点、惑わされないようにしましょう。

 

なお、ほんらい報酬は、自分で請求書をつくり、管理するものです。

ということも、相手と相談しておくのがよいです。

そうすれば、源泉徴収など数字の疑問も減りますから。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。