源泉所得税を間違って納めたときはどうするか
源泉所得税を納めたものの、間違って本来よりも多かったり少なかったりすることもあります。
そのときにどうするか、についてみていきましょう。
間違って多く納めたとき
たとえば次のようなことで、源泉所得税をほんらいよりも多く納めてしまうことがあります。
- 給与の計算ミス
- 二重払い
- 年末調整の記入モレ
- 集計ミス
- 一度は支払った給与を返してもらった
こんなときは、次のどちらかの方法で多く納めたぶんを取り戻すことができます。
- 還付してもらう
- つぎに納めるぶんに充当する
それぞれの手続きをみていきましょう。
還付してもらう
この手続きを「過誤納金の還付請求」といいます。
つぎの「源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額還付請求書」を税務署に提出することで、多く納めたぶんを還付してもらえます。
一般に、還付をうけるときは税務署で内容をチェックします。
こちらの言い分を、そっくりそのまま受け入れるわけではないのです。
そのため、つぎの添付書類も必要です。
- 多く納めたときの納付書のコピー
- 会計データのうち「預り金」のコピー
しかし、「預り金」だけでは給与などの全体像が見えないため、つぎの書類も備えておきましょう。
税務署から「添付書類以外のものも見せてくれ」と言われる可能性がゼロではないので。
- 給与の明細
- 源泉徴収簿
給与の明細や源泉徴収簿は、かならずしも「多く納めた」期間だけではなく、その前後も要求される可能性があります。
また、いちど「還付請求」をした後で税務署から連絡があるときは、電話できます。
税務署からの電話は、慣れないと腰がひけるかもしれませんが、放置せずにサッと受けておきましょう。
還付も早くなりますから。
なお、還付請求は、納めた日から5年を過ぎると時効により還付を受けられなくなります。
間違ったことに早く気づくためにも、会計データはこまめにみておきましょう。
「預り金の残高は合っているのか」と。
つぎに納めるぶんに充当する
多く納めた源泉所得税が給与やボーナスにかかるものであるときは、還付を受けず、つぎに納めるものに充当することもできます。
多く納めたぶん、つぎに納めるものが少なくなる。これを充当といいます。
この充当は、2ヶ月ていどで多く納めたぶんが解消できるときにつかえる制度です。
解消するのに3か月以上かかるときは、上記の還付請求をしましょう。
充当するためには、つぎに源泉所得税を納めるときに、納付書とあわせて「源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額充当届出書」を税務署へ提出します。
そのため、納めるのも税務署でおこなうのがよいでしょう。
届出書の内容は、次のとおり還付請求のものとほとんど同じです。
この届出書には、還付請求とおなじく、つぎの添付書類が必要です。
- 多く納めたときの納付書のコピー
- 会計データのうち「預り金」のコピー
要求されるかは状況次第ですが、やはり給与明細なども備えておきましょう。
なお、充当をするときの納付書の「摘要欄」には、「充当金額○○円」と記入する必要があります。
納付書の「住所など」を記入する箇所の、すぐ下が「摘要欄」です。
小さなことですが、忘れないようにしましょう。
では、間違って少なく納めたときについてもみていきましょう。
間違って少なく納めたとき
たとえば次のようなことで、納めた源泉所得税がほんらいよりも少ないことがあります。
- 給与の計算や集計ミス
- 乙欄を甲欄で計算した
- 外国人への支払で「%」を間違えた
- 源泉徴収を忘れた
- 納めるのを忘れた
このようなときは、少しでも早く足りなかったぶんを納めたほうがよいです。
不納付加算税や延滞税といった罰金がかかってくるからです。
不納付加算税は、追加で納めるぶんの「10%」です。
ですが、税務署から連絡がある前に納めれば「5%」で済みます。
また、期限から1カ月以内に納め、かつ、過去1年以内に期限に遅れたことがなければ「ゼロ」になります。
源泉徴収は、会社や従業員がいる個人事業主にとっては義務です。
そのため、少なかったぶんを「相手から取ってくれ」とは言えません。
一度は立て替える必要があるのです。
こまめに会計データをチェックして、不納付加算税など余計なものを払わないようにしましょう。
まとめ
源泉所得税を、間違って多く納めたり少なく納めたときのことについてみてきました。
どうしても、ゼロ並びではなくギザギザした数字になるのが源泉所得税です。
そのため計算間違いなどもおこりますが、気がついたら早くリカバリーしましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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