粉飾決算をしたときの将来への影響は?
実態よりもおおく利益を計上することを粉飾決算といい、その代表的な手口には次のようなものがあります。
- 架空の売上を計上する
- 経費を削る
- 在庫を増やす
かならず将来にツケが残り、いずれ粉飾とは逆のことをやるはめになります。
やっぱり、先をみながら経営をすることが大事です。
粉飾決算とは
粉飾決算とは、実態よりもおおい利益を計上することをいいます。
たとえば、ホントは赤字なのに黒字にしてしまうような。
なので、本来だったら払う必要のない税金も払うわけです。
そこまでして何を得るのか……?
上場企業ならおもに株主・株価対策、上場維持でしょう。
東芝やオリンパス、カネボウなどが粉飾決算をしていたことは有名です。
中小企業の場合は、銀行対策、取引先対策ですね。
融資をうけやすくする、受注をしやすくするためです。
やむにやまれずなのか、かるい気持ちでなのかはともかく、平たくいえば「嘘をつく」わけです。
そして、そこにはお金がからんできますので、民事・刑事ともに罰則も存在します。
金額や程度によっては逮捕レベルのものが。
税金については、本来よりもおおく払っているので税務署としては歓迎かもしれませんが、罰則といえるような仕組みもあります。
法人税の還付の制限、です。
間違っておおく法人税を払ってしまったときは、「更正の請求」という手続きをすると、おおく払ってしまった分を還付してもらうことができます。
過去の申告を手直しする、という手続きです。
通常であれば、数か月で還付されるものが、粉飾決算の場合は5年待たなくてはいけません。
とりあえず粉飾して急場をしのぎ、よけいな税金は半年後くらいに還付してもらおう、というようなことはできないのです。
粉飾決算の代表的な手口・将来への影響
粉飾決算の代表的な手口は、次のとおりです。
- 架空の売上を計上する
- 経費を削る
- 在庫を増やす
架空の売上を計上する
売上をでっちあげる。
本来だったら翌期のものを、今期に計上する。
可能性はとても低いまたは無いのに、見込みで売上を計上する。
こんな感じで架空の売上を計上すれば、利益は増えます。
でも、売上だけをふやすことはできません。
売上と同時に、売掛金がふえるのです。
この売掛金、翌期のものを今期にねじこんだのであれば解消できますが、そうでないときはお金に変わることはありません。
となると、ずっと貸借対照表に残りつづけるわけです。
売掛金は、おおくの場合、1~2か月後に入金されます。
すると、貸借対照表にのっている売掛金は、年商の1~2/12なわけです。
売上が増えているときは、おおくなりがちですけどね。
なので、売掛金が不自然におおいときは、粉飾決算を疑われます。
また、申告書には売掛金の内訳も添付するので、同じものが残りつづけていることは、ここからバレることもあるでしょう。
この残りつづける売掛金をなくすには、申告を手直しする場合をのぞき、どこかで売上を削るしかありません。(方法論としては)
粉飾決算でとりあえずしのいだとしても、そのツケは将来まで残ってしまうのです。
経費を削る
経費を削るのは簡単ですが、問題はお金です。
経費を削れば、その経費でつかったはずのお金も、つかってないことになるからです。
帳簿上ではお金があるのに、ホントはない、ということになってしまいます。
となると、その差を埋めなければなりません。
誰かが自腹をきる。
おおめに役員報酬をとって、すこしづつ会社にお金を移していく、などで。
でも、粉飾決算をするようなとき、その事業はうまくいっていないことがほとんどでしょう。
なかなか解消できないものです。
「帳簿にはお金があるのに、なぜ借りにきたの?」
こんなことを言われてしまうことにもなってしまいます。
在庫を増やす
まずは、ややこしい在庫・経費の関係を整理しましょう。
- 商品や材料は、売れないと経費にならない。
- このとき、売れていないものが在庫です。
なので、経費がいくらになるかは、次のように計算します。
- 仕入れー在庫=経費
ホントは売れたのに、売れてないことにすれば、在庫がふえ、経費はへる。
そして、経費がへれば、利益はふえる。
問題は、ホントは売れたのに、売れてないことになっている在庫です。
いつかは「売れた」と言わなければなりません。
「売れた」といった年は、粉飾とは逆の現象、つまり実態よりも利益がへります。
事業が急にうまくいくことは珍しいので、しばらくは残りつづけることになるでしょう。
また、「売上にたいして在庫がおおすぎない?」という銀行からのツッコミも想定されます。
粉飾決算の原因と対策
粉飾の原因は、「いま手元にじゅうぶんなお金がない」からだと思います。
そして、お金がない理由をかんがえると、赤字体質または黒字にしてもそこまで……という過去があったから、のはずです。
そこには、つかっちゃいけないお金をつかってしまった……ということもあるかもしれません。
どうやったら売上を増やせるか、ということについて、自分は経営コンサルタントではないので気の利いたアドバイスはできません。
また、事業というのは、先に経費があって、売上は後から、が基本です。
なので、経費を削りましょう、とも簡単にはいえないものです。
ですが、「将来をみているか……?」というのはどうでしょう。
「どうやら将来こうなりそう」から逆算して、今することを考えるのは大事です。
それにより軌道修正していく。
粉飾決算は将来にツケが残るので、抜け出すのも大変です。
粉飾したい……となる前に、おおざっぱでよいので、すくなくとも今期の終わりまでは予想・希望・必要といった数字をつくってみましょう。
まとめ
粉飾決算の代表的な手口と、それによる将来への影響について解説しました。
コロナのような突発的なことを予測するのはムリですが、先をみながら経営することは大事だと思っています。
欲をいうなら、蓄えでしょうか。
※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいています。
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