売上が少なくても役員報酬は取った方がよいのか
売上が少ないと、役員報酬はとらないほうが良いかな…と考えたりします。
そのときに考慮すべきことを確認しておきましょう。
役員報酬をとる・とらないの影響は小さくないですから。
役員報酬は急には変えられない
役員報酬には、欲しいときに欲しい金額をとりづらい…という面があります。
というのも、基本的には毎月おなじ金額でないと、いちぶが税務上は経費と扱われないことになってしまうので。
(参考記事)
役員報酬のルールから外れるとどうなるか
そこで、たとえば会社を設立したものの、売上の見通しがたっていないとき。
あるいは、今年は売上が少ないだろうな…とみているとき。
設立初年度やその年度から、役員報酬をとってよいものか…と悩むことがあります。
そんなときに考慮すべきことを、確認しておきましょう。
どんなことを考慮すべきか
考慮すべきは、次のことです。
- 社会保険
- 融資
- 取引先
- 黒字になれば税金が
- 会社と個人のお金は別物
社会保険(健康保険・年金)
もし役員報酬をとらないなら、国民健康保険と国民年金に加入します。
いっぽう役員報酬をとるなら、一般的には協会けんぽ・厚生年金に加入することになります。
これらは、それぞれ保険料が違うので、どれくらい違うかを押さえておきましょう。
国民健康保険は、お住まいの自治体にて計算されます。
「○○市 国民健康保険」などとネット検索すると、出てくることが多いです。
そして協会けんぽ・厚生年金は、「社会保険料率」と検索すると、つぎのような表がみつかるはず。
これを見れば、その役員報酬におうじた金額がわかります。
(年金の受給要件の確認もしつつ…)
なお、国民健康保険と国民年金は、すべて個人がはらうものです。
いっぽう、協会けんぽと厚生年金は、個人と会社で半分ずつはらいます。
もし役員報酬をとるなら、社会保険のお金も会社から払わなければいけないことに注意しておきましょう。
融資
役員報酬をとらない前提で、融資を受けようとするなら、きっと次のように思われてしまいます。
「生活費はどうするんだろう…?」
金融機関は、基本的に、返せそうな相手にしか融資をしません。
それを考慮して表面上は黒字にしても、会社のお金で生活費をまかなうのであれば、融資をかえすためのお金は残らないことにつながります。
これを警戒されるわけです。
だから、生活費は個人の貯金でまかなう、あるいは家族に稼ぎがある…ということを証明できる準備もしておきましょう。
また、役員報酬をとる前提であっても、赤字の見込みでは融資は受けづらくなります。
繰りかえしになりますが、返せそうな相手にしか貸してくれないので。
だから、少なくとも年間の元本返済額くらいは黒字になる見通しをたててから、申し込みに行くようにしましょう。
取引先
相手によっては、取引をはじめる前や年度ごとに、信用調査をされることがあります。
ダイレクトに「決算書をみせて」といわれたり、帝国データバンクなどを利用することにより。
そのときに役員報酬がゼロだと、利益の水増しを疑われるかもしれません。
役員報酬をとらないケースは、やっぱり珍しいですから。
そこで相手が思うのは、「依頼した仕事ができあがらないと困る…」ということ。
仕事が途中でストップしてしまう理由のひとつには、お金が足りなくなったということもあります。
それを懸念されるわけです。
役員報酬をとらなかったり、とるにしても少なければ、こんな可能性があることも知っておきましょう。
黒字になれば税金が
黒字になれば、法人税・住民税・事業税がかかります。
そのときに、「役員報酬をとっておけば…」と思わないかどうか。
役員報酬は、年度がはじまってから、あるいは会社を設立してから3か月以内に、とるかどうかを決めなければなりません。
なので、そのときには年度が終わったときのことは見えないわけです。
とはいえ、黒字になれば税金がかかってしまう。
100%受けいれるのは難しいですが、あるていどは割り切りも必要なことは知っておきましょう。
いっぽう役員報酬をとった場合には、赤字になることもあるかもしれません。
でも、その赤字はいつか黒字になった年度の税金を減らしてくれます。
赤字の年度の、翌年度以降10年以内の年度だけなんですけれどね。
この仕組みを「欠損金の繰越控除」とよぶのですが、青色申告をしていなければつかえません。
青色申告の申請も忘れないようにしましょう。
会社と個人のお金は別物
役員報酬をとるなら、会社と社長などとの間で、現実にお金のやり取りをするのが望ましいです。
たとえば、口座履歴にふりこんだ跡をのこすなど。
でも、売上がすくなければ、そのためのお金も足りなくなることが想定されます。
そんなときには、社長などが会社へお金を貸し、それから役員報酬をはらう。
こんなやり取りをするのが望ましいのです。
現実では、短期間であれば、こんなやり取りは省略することもあるのが実情です。
でも、もし会社を設立したひとと社長などが、それぞれ全くの他人だったらどうするでしょうか。
お金のやり取りは、キレイにするのが理想ですよね。
ただ、自分で会社をつくり、自分が社長になるようなときは、このへんが曖昧になることもあります。
それでも、会社のお金と個人のお金は、区別をつけておくのがよいのです。
会社のお金は社長のものではなく、いっぽう社長のお金も会社のものではないので。
売上がすくなくても役員報酬をとるなら、会社と社長などとの間で、貸し借りが発生する可能性もふまえておきましょう。
なお、どうしてもお金が足りないときには、つぎの記事に書いてあることも押さえてくださいね。
役員報酬が払えないときはどうすべきか
まとめ
売上がすくないときに、役員報酬をとるかどうかの判断で考慮すべきことを確認してきました。
状況におうじて、とったほうが良い・とらないほうが良い…それぞれあると思います。
このこととは別に、じつは大事なのが次のこと。
- 会社のお金と個人のお金は別物
この2つを混ぜることはできず、かりに混ぜようとしても貸し借りの関係になるのです。
これは、会社を経営しているかぎりずっと続くもの。
あとで「どうだったかな…?」とならないように、精算するのも忘れないようにしましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。