会社を設立した後で資本金は使ってもよいのか
資本金として振り込んだお金を、経費などにつかっても問題ありません。
資本金はそのためのお金ですし、ずっと残しておかなくても良いのです。
資本金は減資をしないかぎり減らないものですが、資本金の見返りに「株式等を手にする」ことは意識しておきましょう。
遠い将来にも関係するので。
目次
資本金は使ってもよいのか
会社を設立するには、資本金が必要です。
その資本金として、会社の口座に振り込んだお金をつかってもよいのか……?
答え……つかってもよいです。
というのも、会社のお金をつかっても資本金は減らないからです。
その仕組みを、次のとおり順を追ってみていきましょう。
- 資本金を会社の口座に振り込んだとき
- そのお金をつかったとき
資本金を会社の口座に振り込んだとき
資本金を会社の口座に振り込んだとき、会社の会計データは、次のようになります。
資本金は「100万円」としましょう。
資本金を振り込んだときは、資本金だけが増えるのではありません。
資本金と預金が、それぞれ「100万円」増えるのです。
そのお金をつかったとき
「100万円」のうち、経費で「30万円」つかったとしましょう。
すると、会計データは次のように変わります。
預金が30万円へって「70万円」になり、経費が「30万円」ふえる。
そして、「資本金は100万円のまま」です。
つまり、「資本金をつかう」という表現は正しくないのです。
正しくは、「資本金として振り込んだお金をつかう」ということなのです。
そして、お金をつかっても資本金はへりません。
資本金は事業をはじめる元手になるお金なので、ずっと手つかずのまま残しておかなくても良いのです。
では、どうしたら資本金は減るのか。
それは、資本金と引きかえにやり取りする「株式」がカギになります。
(合同会社の場合は出資持分といいます。以下おなじです)
どうやったら資本金は減るのか など
資本金について、次のことを確認しておきましょう。
- どうしたら資本金は減るのか
- 会社の業績におうじて株価は変わる
どうしたら資本金は減るのか
資本金は、勝手に減るものではなく、意図的に減らします。
この手続きを「減資」といいます。
これを理解するためには、会社の設立時に振り返って確認しておくことがあります。
まず、会社を設立するときの、資本金をだす人の財産です。
設立する前は、現金「200万円」だけもっていたとします。
すると、その人のプライベートの貸借対照表は次のとおりです。
この「200万円」のうち、設立のために「100万円」を出資すると、その見返りに「100万円の株式」を手にすることになります。
会社の貸借対照表とあわせてみてみましょう。
ここで、資本金を減らすために「30万円」の減資をしたとしましょう。
このとき、会社・個人でそれぞれ次のことをします。
- 会社……現金「30万円」を個人にわたし、「株式30万円」を返してもらう
- 個人……「株式30万円」を会社に返し、現金「30万円」をもらう
紙で株式を発行することは少ないですが、目に見えなくても「持っている」ことは意識しておきましょう。
すると、会社・個人それぞれの貸借対照表は次のように変わります。
資本金を減らすには、こうした過程を経ることになるのです。
ただし、実際はもっと複雑です。
会社に出資をした人の人数や、書類など手続き上のこと。そして「株価が変わること」もあり、簡単にできるものではありません。
(サンプルでは「資本金=株価」としていますが、異なることもあります)
その「株価が変わること」についても押さえておきましょう。
将来、相続税などの税金にも関係してくるので。
会社の業績におうじて株価は変わる
会社が上場しているなら、その株価は市場価格となります。
いっぽう会社が上場していないときは、次の2つのことをベースに株価が決まります。
- 会社の財産(純資産)
- 同業種の上場会社の株価
計算自体は複雑ですが、会社の累積黒字がふえれば株価は高くなり、赤字を続ければ株価は安くなる傾向があります。
先ほどのサンプルを、もう一度みてみましょう。
これは会社を設立したときの状況です。
しばらく経って、次のように会社が黒字を「100万円」積み上げたとすると、株価の変化におうじて、個人の財産状況も変わります。
株価が上がれば、個人の財産もふえるのです。
(サンプルでは「純資産=株価」となるようにしていますが、実際は異なることも多々あります)
将来、この株価が上がることを、手放しで喜べない状況もでてきます。
というのも、個人が持っている株式は、簡単にはお金に換わらないからです。
それなのに、相続税などの対象になり、税金がかかってしまうのです。
すると、その税金のためのお金が足りない……ということも起こり得ます。
もし跡継ぎがいるなら、事業承継税制により税金の負担を減らすこともできます。
でも、そうでないなら株式をお金に換えるしかありません。
その方法には、誰かに売ったり、減資をしたり、会社をたたむことが考えられます。
でも、上場していない会社の株式は、なかなか買い手が見つからないこともあります。
また、減資をして会社の財産を減らしてしまえば、事業に支障がでる可能性もでてきます。
もし会社をたたむのなら、従業員などの行く先も考えなければなりません。
いずれにしても、簡単なことではないのです。
もしかしたら、株価を下げるために、あえて赤字にすることも方法論としてはありますが、融資や取引先の審査に問題がでる可能性もあります。
自分で会社をつくり、自分が社長となって経営していくとき、将来の贈与や相続までは考えられないものです。
そこまでの想像なんて出来ないですから。
でも、いずれはこのような問題も考えなければならないことは知っておきましょう。
まとめ
資本金として振り込んだお金を、経費などでつかっても、資本金は減りません。
資本金は、減資をしないかぎり減らないのです。
会社を設立してしばらく経ってきたら、自分が設立した会社の株価も、折に触れて確認するようにしましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
当事務所のサービス