会社を赤字にしすぎると困る2つのこと
役員報酬をあるていど自由に設定できるなら、会社の赤字・黒字もコントロールできます。
会社が赤字なら税金は最低限、というのは魅力的です。
しかし、遠い将来のことまで考えると、赤字にしすぎると次のデメリットがあるのです。
- 会社・役員トータルの税金は、もっと少なくすんだ可能性がある
- 会社に貸したお金は、戻ってこないかもしれない
赤字でも会社はつぶれない
赤字になるのは、収入より経費の方が多いからです。
当たり前とも言えることですが、赤字・黒字にこだわらない、むしろ赤字のほうがよい、という意見もあるでしょう。
金融機関や取引先に決算書をみせる必要がない、という場合には、なおさら赤字志向が強まるのも分かります。
会社の税金が、最低限のもので済みますので。
さて、経費のなかで大きなウェイトを占めるものに、役員報酬があります。
一人社長や家族で経営している会社では、この役員報酬をいくらにするかは、あるていど自由に設定できます。
つまり、経費全体をコントロールすることができるので、その結果、赤字にも黒字にもすることができてしまうのです。
もちろん、赤字になればお金が足りなくなります。
会社は、支払いのためのお金が足りないときに倒産するのですが、誰かが会社にお金を貸せばそれを防ぐことができます。
役員報酬を多めにとっていたから……
家族の財布にお金があるから……
こういうケースでは、会社の支払いが滞ることがないので、会社は倒産しません。
会社は赤字だから倒産するのではなく、お金がないから倒産するのです。
しかし、遠い将来のことを考えたとき、特に困る2つのことがあります。
会社を赤字にしすぎると困る2つのこと
遠い将来とは、少なくとも10年先あるいは会社をたたむとき、そんなイメージです。
そのとき困るのは、次の2点です。
- 赤字の繰越控除を消化できない
- 役員借入金を返せない
赤字を消化できない
赤字は、10年先まで繰り越すことができ、その期間内の黒字と相殺することができます。
(青色申告をし、毎年ちゃんと申告しているという条件はつきますが)
通常であれば、次のように税金を計算します。
- 収入ー経費=所得 → 所得×○○%=税金
欠損金があると、算式は次のように変わります。
- 収入ー経費ー過去の赤字=所得 → 所得×○○%=税金
「赤字を繰り越し、将来の黒字と相殺する」というのは、この算式の「ー過去の赤字」を意味するのです。
ひとつ付け加えるのは、赤字を黒字と相殺するとき、所得はマイナスにはなりません。
ゼロで打ち止めとなります。
まだ赤字が残っているなら、つぎの黒字と相殺します。
そして、10年経っても赤字が残っているなら、その赤字は会社をたたむときまで持ち越しとなります。
10年先まで赤字が残っている状態を「消化できない」と表現しましたが、次のデメリットがあるのです。
もし黒字と相殺できたなら払わずにすんだ税金を、払うはめになる……
赤字・黒字をコントロールできるなら、もったいない話です。
また、赤字が残るということは、お金がない状態も残るわけです。
ほかの年の状況にもよりますが、会社に貸したお金は返ってこないと思っておいた方がよいでしょう。
役員借入金を返せない
会社にお金がないとき、貸すのは役員のケースが多いので「役員借入金」としています。
この役員借入金があるということは、会社の利益と役員報酬のバランスが悪かった、とも言えます。
赤字なら会社の税金は最低限ですが、役員の税金はどうでしょうか。
後だしジャンケンですが、もし会社の利益と役員報酬のバランスがよかったら、トータルの税金はもっと少なくすんだのではないでしょうか。
そして、会社をたたむときまで役員借入金が残っているなら、その状態で会社をたたむことはできません。
売掛金がある取引先が、気がついたらなくなっていた……
困りますよね。
なので、会社をたたむときは、お金や売掛金のようなプラスの財産も借入金のようなマイナスの財産も、すべてゼロにする必要があるのです。
そのためには、会社に対し「役員借入金は返さなくていいよ」と自ら伝える必要があります。
つまり、会社をたたむときに残っている役員借入金は戻ってこないのです。
(お金が残っていれば、その分は返してもらいますが)
まとめ
役員報酬をあるていど自由に設定できるなら、会社の赤字・黒字もコントロールできます。
しかし、赤字もすぎると次のデメリットがあります。
- 会社・役員トータルの税金は、もっと少なくすんだ可能性がある
- 会社に貸したお金は、戻ってこないかもしれない
会社の税金が最低限で済むというのは魅力的ですが、遠い将来のことを考えると、やはり黒字にすることも大事です。
※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいています。
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