法人成りすると手間はどれくらい増えるか
法人成りすると、事務手続き全般の手間はふえます。
その代わりに、信用なども個人とは変わってくる。
つくった会社を将来どうしたいか…ということも考えておきましょう。
法人成りすると増える手間
法人成りすると、つぎのことで確実に手間が増えます。
- 登記
- 税金および会計
- お金の区別
- 社会保険
登記
会社を設立するときには、定款などを整えて、登記をすることになります。
これは、設立するときだけではなく、いずれ止めるときも同じです。
この2回だけであれば良い…と思うかたもいるかもしれませんね。
でも、たとえば株式会社なら、役員には任期があります。
その任期は最長で10年ですが、任期がきたら、再任などのために登記をしなければなりません。
放っておくと罰金もかかるので、けっしてバカにはできない手続きなのです。
という手続きのほか、会社としてなにかの申請などをするときには。
登記簿や印鑑証明をもとめられることは、珍しくありません。
登記をつかさどるのは法務局ですが、そこへ足を運ぶことも増える可能性があるのです。
税金および会計
税金のまえに会計のことですが。
会社の会計データは、複式簿記でつくらなければなりません。
個人事業主であれば、貸借対照表がなくても申告はできます。
でも会社、つまり法人は、そうはいかないのです。
ここで一つ大事なことを。
それは、貸借対照表はミスも引き継がれる…ということ。
いっぽうの利益を計算する損益計算書は、毎年度ゼロからのスタートです。
かりにミスがあったとしても、年度がかわればリセットされる…ようなところがある。
でも貸借対照表にミスがあれば、基本的には、過去の申告から手直しをしなければいけない。
だから法人成りした初年度から、会計ソフトの入力は気をつけて欲しいのです。
後になればなるほど、直すのは大変ですから。
それから税金のこと。
まず、はらう税金の数は増えます。
おそらく会社から役員報酬を取ることになるでしょう。
だから、会社でも個人でも、税金をはらうことになる。
数はふえても、総額では減る…ということも多々あるんですけれどね。
ただ、とどく納付書の数がふえることは知っておきましょう。
どれがどれ…? ということのないように。
また、会社の税金の申告のほかに、毎年、年末年始にはつぎのような手続きも必須です。
- 年末調整
- 法定調書の提出
- 給与支払報告書の提出
- 償却資産税の申告
内容は割愛しますが、毎年11月あたりになったら。
1月からの会計データをふりかえる必要があるとおもっておきましょう。
会計データは申告のときにまとめてやろう…と思っているなら。
それは止めたほうがいいかも…ということなのです。
そして税金のなかには、赤字でも払わなければいけないものがあります。
住民税(均等割)なのですが、これが最低でも7万円はかかる。
けっしてバカにできない金額ですから、気にしておきましょう。
最後に、その税金の申告ですが。
個人の申告にくらべれば、だいぶ複雑です。
個人のときのノリでいくと戸惑うはずですから、もしご自身でされるなら。
あらかじめ本などを読んで備えておきましょう。
きっと、手書きではなく、ソフトをつかったほうが安全です。
その料金も調べつつ。
お金の区別
個人事業主のときとは違い。
会社と個人のお金は、キッチリ区別をしなければなりません。
じぶんで作った会社であっても、法律上は他人とおなじように扱われるのです。
だから、会社の口座からプライベートのためにお金をつかうなら。
それは会社からみたとき、役員へ貸したことになる。
いっぽうプライベートのお金で会社の経費をはらうなら。
会社にとっては、あなたからお金を借りることに。
これらは、会計データに貸付金や借入金として跡がのこります。
いずれ精算しなければならない時がやってくるので、ちょいちょい精算すべきものなのです。
もし、貸し借りがまったく起こらないようにするなら。
それはそれで大変です。
たとえば何かの支払いをするとき。
その前に銀行へ行き、ピッタリの金額を引き出す…とか。
あるいは電子マネーもカードも、会社名義のものをもっておく…とか。
あるていどの期間は立て替えておき、週とか月ごとに精算する。
こんな風にしたほうがラクかもしれないのです。
そのための集計も必要ですけれどね。
ちなみに、会社がお金を貸すときは、利息をとらなければいけないルールになっています。
会社の収入が、ちょっと増えるわけです。
これを避けるには、会社のお金をプライベートのためにつかうことは止めておきましょう。
個人事業主のときにくらべると、お金をつかうときに窮屈に感じるかもしれません。
ただ、かりに自分で作った会社であっても、他人なんだな…ということは知っておきましょう。
なお、会社は他人ということに由来して。
役員報酬のように会社にとって重要なことを決めるときは、その都度、株主総会の議事録などが必要になります。
そのひな型は、本やインターネットに出回っているので、作るのは難しくありません。
でも、年に1枚あるいは数枚は、そんな書類も作ることになることは知っておきましょう。
社会保険
法人成りすると、会社から役員報酬をとることになります。
(ほかにも事業があり、役員報酬をとらないときは別ですけれどね)
その役員報酬には、社会保険(健康保険・厚生年金)がかかります。
そこで、社会保険の手続きをすることになります。
個人事業主のときは、役所が計算をして、だまっていても納付書がとどきました。
でも法人成りすると、こちらから情報を送らなければならないのです。
加入するときだけではなく、その後も、毎年。
役員報酬を変えたりボーナスをだすなら、年に複数回。
ここまでのことは、税理士など士業のかたに依頼することもできます。
でもその際には、手続きのための情報も必要になる。
その都度、連絡を取り合うことになることは、知っておきましょう。
そして、そんな手間をかけてまで得られるものはなにか…ということも。
手間をかけてまで得られるもの
法人成りすると、つぎのことが変わります。
- 信用
- 節税
信用
法人成りすると、信用され具合が変わります。
その信用のなかでも大きいのは、仕事が取りやすくなること。
業種によってはそう意識されないこともありますが、基本的には。
この点は、みなさんのほうが肌で感じているかもしれませんね。
一般に、おなじ内容であっても、それを打ち出すのが個人なのか法人なのか。
このとき法人のほうが、信用される傾向にあります。
たとえば求人、チラシ、融資、そのほか事業にまつわる諸々の行動において。
なお、この信用というのは、あくまでも世の風潮でのこと。
かりに法人であっても、中身は個人事業とおなじようなこともあります。
なので、こちらから法人をみるときは。
法人という外見ではなく、ちゃんと中身も意識するようにしておきましょう。
節税
法人になると、節税の幅はグッとふえます。
たとえば、つぎのようなことにおいて。
- 赤字の繰り越しが10年に(個人は3年)
- 役員報酬の給与所得控除
- 家族間における所得分散
- 社宅
- 退職金
- 経費の幅が増える
このほか、設立2年間は消費税が免税になる可能性もあるのですが。
インボイス制度により、使いにくくなってしまいました。
なお、これらの恩恵をうけるには、それなりの利益がでている…という前提も必要です。
できれば試算ができると良いのですが。
すくなくとも役員報酬がどれくらい取れそうか…は考えておきましょう。
節税はそこから始まる…といっても良いくらいですから。
まとめ
法人成りをすると、事務手続き全般の手間がふえます。
ということの裏返しで、信用もあがる。
言葉は悪いですが、個人はいいかげん、法人はちゃんとしている。
会社をつくるだけでも、それなりのお金がかかりますから。
そんな風に、見られるわけです。
うえには書きませんでしたが。
事業を大きくしたいなら、会社のほうが断然有利です。
また、その事業をだれかに引き継がせたいときも、やりやすくなることがあります。
自分でつくった会社は、どうなって欲しいのか。
仕事の受け皿という位置づけでも十分とはおもうのですが。
このことも忘れずに考えてみましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。

