役員報酬は額面ではなく手取りが同じでもよいが、計算は?
- 年収○○円といっても、手取りにすると結構減るよね
- 手取りをベースに、役員報酬を考えるのはダメなの?
役員報酬は、基本的には支給額(額面)が毎月同じ金額になってなければいけない、というルールです。
しかし、額面と手取りに差がありすぎる問題を避けるため、額面ではなく手取りが同じでも良いというルールがあります。
その手取りを、ソフトなどを使わず、手計算でやるにはどうするか?を解説します。
役員報酬のルール
役員報酬には、毎月の支給額が同じでなければならない、というルールがあります。
もし、このルールが無ければ、毎月の利益をすべて役員報酬にしてしまうこともできるかもしれません。
その結果、法人税はゼロとなる……
そのため、このような「後から」の利益調整を防止するために、毎月の役員報酬は同じにする、というルールになっています。
※ もちろん、変えても良いタイミングはあるのですが、今回の趣旨から脱線してしまうため、割愛します。
ところで、支給額からは、社会保険や税金などを引き、その残りを役員に支払います。
一般的に、支給額のことを「額面」と言い、社会保険などを引いた残りを「手取り」と呼びます。
役員報酬は、基本的に「額面」が同じでなければならないのですが、「手取り」が同じでも良いことになっています。
と言うのも、額面と手取りには、けっこうな差があるからです。
たとえば……
額面が80万円だと、手取りは60万円くらいになります。
社会保険と税金だけで、20万円ちかく持っていかれるのです。
問題は、「お金をいくらもらえるか」が分かりにくいうえ、実際にもらった時にちょっとしたショックを受けるかもしれない、ということです。
「年収○○円で、役員やってくれないかな?」と誘われても、実際にお金を受け取るときに「こんな少なくなるの!やらなきゃ良かった……」と感じてしまうこともありそうですよね。
特に、外から役員を探すような場合は。
こういう理由で、毎月の役員報酬は同じ金額でなければならないが、額面ではなく、手取りが同じでも良い、ということになっています。
手取りを同じにするための計算方法
手取りを計算するときに、額面から引けるものは、次の3点です。
実際には他のものを引いたりする場合でも、税金のルール上での手取りを計算するときは考慮しません。
- 社会保険(健康保険・厚生年金)
- 住民税
- 源泉所得税
そして、それぞれの計算に関する特徴は、次のとおりです。
1.社会保険
- 加入する団体、年齢、住んでいる地域により変わる
- 協会けんぽの場合、4月~6月の額面の平均値を、その時の保険料額表にあてはめ、9月~翌年8月のサイクルで、表から割り出した金額を天引きする
- 年度の途中で額面に変動があるときは、サイクルの途中でも金額が変わる可能性アリ
- 健康保険は、春に料率(○○%)変わる可能性が大
2.住民税
- 自分が計算するのではなく、例年5月に、天引きする金額の通知が届く
- 6月~翌年5月のサイクルで、1年度分の住民税を12分割して天引きする
- 12分割したときの端数は、6月に天引きする
- ほとんどの場合、6月だけ金額が違い、そのあと7月~翌年5月は同じ金額になる
3.源泉所得税
- 天引きする源泉所得税は、額面から社会保険だけを引いた金額により決まる
- 収入が増えると税率も上がるため、「源泉所得税は△△の○○%だね」みたいな推測がしづらい
これらを踏まえると、計算の順序は次のようになります。
(もっと簡単な方法があるかもしれませんが……)
1.住民税を入れる
2.ざっくり目安の額面を決め、社会保険を入れる
3.源泉所得税を入れ、手取りを確認する
4.目標と手取りの差が1,000円くらいになるまで、上記を繰り返す
5.差が近くなったら、手取りを目標の金額に置き換え、額面と源泉所得税を直す
6.社会保険・源泉所得税に問題がなければOK
この計算は、社会保険・住民税・源泉所得税が変わるタイミングでやり直しが必要になります。
- 社会保険は、春と9月に変わる
- 住民税は、6月と7月に変わる
- 源泉所得税は、年末調整の問題がある
少なくとも、1年に5回は計算をしなくてはいけません。
そして、年末調整はとても厄介です。
額面ベースで年収2,000万円を超えるなら、年末調整はせず、自分で確定申告をするため、この厄介な計算は回避できます。
が、そうでないなら、とても大変なので覚悟しましょう。
まとめ
役員報酬は、毎月が同じ金額でなければならない、というルールがありますが、その判断を額面ではなく、手取りでやっても良いことになっています。
そのときの計算方法を解説しましたが、けっこう大変です。
外から役員を探すようなときは、「額面だとこれくらいだけど、手取りはこれくらいになりそうだよ」と言ってあげるのも良いかもしれません。
結局のところ、大事なのは「年収○○円」ではなく「もらえるお金はいくらか?」だと思いますし。
※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいております。
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