あえて売上を減らすのは経営としてアリなのか
売上を減らすなんて「バカじゃないの」というのが普通でしょう。
あえて減らそうとすることで、それまでとは違ったものが見えてくるかもしれません。
利益構造を見直すきっかけになる
売上から経費をひいたものが、利益です。
この売上をへらせば、利益もへるのが道理です。
とうぜん税金もすくなくなるので、ある意味、節税ともいえます。
売上をへらすと利益がどうなるか……もう少しみてみましょう。
あまり多くないケースですが、ある仕事について、売上よりも経費が多いこともあり得ます。
つぎのような理由で、仕事単位でみると、赤字の状態です。
- 最初から採算を度外視
- 付き合いなどで断り切れなかった
- 売れなかった在庫の処分
これらは、売るまえから分かっていたことかもしれません。
でも、これらの売上をへらすと、かえって利益はふえることにつながります。
売上ではなく経費に着目してみると、その経費はおおきく2種類にわかれます。
- 商品のように、売上に比例して増減するもの(これを変動費といいます)
- 家賃のように、売上がゼロでもかかるもの(これは固定費といいます)
経費を、この2種類にわけると、上図はつぎのように変わります。
このときにでてくるのが「粗利」です。
粗利は、売上から、商品などの変動費だけをひいたもの。
この粗利は、商品やサービスごとに異なることも多々あります。
売上を、商品やサービスごとにわけてみると、なかには粗利「率」が低いものもあったりします。
稼ぎにくい売りものですね。
これらを止める・入れ替えるというのも一つの選択肢です。
いったんは売上がへるが、より稼ぎやすい体質にかえていくために。
ただし、粗利率が低くても、事業に欠かせないものもあります。
たとえば居酒屋の粗利率は、飲み物がたかく、食べ物が低くなりがちです。
かといって、食べ物がない居酒屋では、魅力もなくなってしまうでしょう。
また、パレートの法則というものもあります。
結果の8割は、自分がもっている2割の要素で成り立っている、という法則です。
たとえば、売上の8割は、商品・サービスのうち2割のものにより成り立っている…と。
商品・サービスのなかに、引き立て役みたいなものがあるのかもしれないですね。
ここまでのことは、売上をふやそうとする過程でも目に付くことかもしれません。
でも、あえて売上をへらそうとすると、売上のなかの悪いところに目がいくこともあります。
それも、より稼ぎやすくするためのきっかけになります。
仕事を見直すきっかけになる
事業の目的には、お金をかせぐこともあります。
やっぱりお金は必要ですから。
ただ、お金が稼げればなんでもいいのか…となると、そうでもありません。
たとえば税理士なら、次のような仕事はうけられません。
- 脱税にかかわること
- 内容も見ずに、申告書に「税理士○○」と署名すること
- お客さまの秘密をばらすこと
これらは、売上がゼロであってもできないことです。
こういうことは、それぞれの職種・業界にあるとおもいます。
ただ、これらは絶対にできないこと。
お金に余裕がでてきたら、つぎのような理由で「できなくはないけど、やらない」という選択肢が生まれることもあるでしょう。
- 人手や時間が足りない
- 場所・スペースが足りない
- リスクを取れない
- ほかに向いている方がいる
- 気乗りしない
こうした仕事をすると、数字にあらわれないものが悪化することもあります。
人間関係・心とからだの健康・仕事場の空気・モチベーション・時間のやりくり など。
こうしたことで、仕事のながれや効率が悪くなることもあるのです。
すると、売上はふえたものの、かかる時間・負担はそれ以上にふえることもあります。
その仕事をうけずに、自分のペースで少しづつ実力を上げていくほうが、かえって近道になるかもしれないのです。
こういう視点で売上をへらそうとすると、自分の将来をより考えるようになるはずです。
……ということもアリだと思うのです。
お金と時間を見直すきっかけになる
- どれくらいのお金が欲しいのか。
- どれくらいのお金が必要か。
この2つは別物です。
事業をするならお金を稼がなければなりませんが、それだけが目的ではない方もいるでしょう。
それなら、上記の2つは分けてかんがえてみましょう。
お金や富の欲は、歴史をふりかえってみても、キリがないものです。
でも、欲には他のものもあるでしょう。
それを、大事にするかどうか。
売上をへらせば、利益もお金もへってしまいます。
その代わりに、時間が生まれます。
- 時間がないとできないこと
- お金では買えないもの
これらのために事業がある、という見方もできるわけです。
もちろん、こうした判断をするためには、数字をみておくことも必要です。
現実もありますから。
売上は増やしていくもの、というのが世の常識にみえます。
でも、いちどは売上を減らそうとするのも、経営としてアリだと思うのです。
それまでとは、違ったものが見えてくるかもしれないので。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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