利益が実感できないときに見るべきところ
利益が実感できないときは、貸借対照表をみてみましょう。
ただ、その貸借対照表にもあらわれないものがあることには注意を。
損益計算書の罠
事業をしているなら、利益が気になるものです。
でも、その利益は不思議なもの。
なにか目に見えないというか、実感がわかないような気がすることってないでしょうか。
それを探るため、利益がでる、よくあるサイクルをかんがえてみましょう。
たとえば、後払いで、商品を「40円」仕入れたとします。
これは、会計データ(仕訳)で次のようにあらわされます。
仕入 | 40円 | 買掛金 | 40円 |
その後、おなじく代金は後でもらう条件で、仕入れたものがすべて「100円」で売れたとします。
すると、会計データは次のとおり。
売掛金 | 100円 | 売上 | 100円 |
ここで利益を計算するなら、「100円」から「40円」をひいて、「60円」ですよね。
ただ、もう一度、うえの会計データを合わせてみてみましょう。
仕入 | 40円 | 買掛金 | 40円 |
売掛金 | 100円 | 売上 | 100円 |
気にして欲しいのは、「お金は一銭も動いていない」こと。
それなのに、利益は計算できてしまう。
うえで赤い字にしたところだけで、利益を計算するのです。
もちろん、仕入れも売上も、代金の決済はあとからやってきます。
そして、そのときには「お金が増えた」ことが実感できることになります。
でも、利益というのは、お金の裏づけが無くても計算できてしまう。
なので、なにか目に見えないような感じがして、実感がわかないわけです。
…という風になってしまうのは、「損益計算書だけ」を見ているから。
利益を実感したいときに見るべきところ
うえの会計データを、もう一度。
今度は、別の視点から。
仕入 | 40円 | 買掛金 | 40円 |
売掛金 | 100円 | 売上 | 100円 |
赤い字にしたところは、次のことをあらわします。
- 買掛金……今後、仕入れ代金を払わなければならない
- 売掛金……今後、売上の入金がやってくる
この2つのことが、利益の裏づけです。
買掛金「40円」を払い、売掛金「100円」が入金されれば、お金は「60円」増えることになるので。
このような事情は、貸借対照表にあらわれます。
利益は、売上から経費をひいたもの。
その売上や経費の裏で、自分の財産に動きがでてきます。
その財産が載っているのが、貸借対照表なのです。
損益計算書には、利益があらわれます。
でも、その利益がどこにあるかは、損益計算書ではなく、貸借対照表にのっているわけです。
損益計算書は、どうやって利益がだせたのか…の原因が書いてあるものなのです。
とはいえ、貸借対照表にのっていない財産もあります。
ホントの利益は
たとえば、30万円未満のものは、使いはじめたときにすべて経費にできる…と聞いたことはないでしょうか。
少額減価償却資産の特例といわれるものです。
この特例をつかったものは、貸借対照表には載りません。
現実では、存在して、つかっていたとしても。
そのほか、リースの一部、経営セーフティや生命保険を解約したときに戻ってくるお金、前払いした経費の一部など。
こうしたものも、貸借対照表には載りません。
正しい会計のルールで処理したものなので問題はないのですが、簿外資産といえます。
いわば自分のものであり、将来、お金をもたらしてくれるものです。
ぎゃくに簿外負債といわれるものも、もちろん存在します。
さらに、貸借対照表に載っていたとしても、金額に問題があるものもあります。
たとえば、売れ残った在庫で、もはや捨て値でしか売れないもの。
車のように減価償却するものも、計算の都合による金額です。
減価償却し終わったのに、まだまだ使える…というものもないでしょうか。
利益がどこにあるかは、貸借対照表をにのっている…と書きました。
でも、こうしたことを考えると、貸借対照表にもホントのことは載っていないといえます。
ホントの利益は、自分の財産を、すべて時価におきかえたときに分かる。
(時価とは、それを売ってお金に換えるならいくらか…です)
会計のルールも、税金のルールも、その数字をみたひとの目を欺かないように、自分で勝手な利益調整ができないように、ときに厳しく固いものになっています。
その結果、ある意味、利益自体が自分にとっては正しくない…というようなことも起こります。
損益計算書も、貸借対照表も、あてにならない部分がでてくる可能性があるのです。
ホントの利益を知るには、自分の財産をすべて「時価」におきかえてみましょう。
すると、数字がより信用できるものになるかもしれない。
将来の見通しも、すこし変わるかもしれない。
ということに、つながりますから。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。