会計ソフトを導入するなら使う覚悟が必要です

会計ソフトを導入しても、自分が何もしなくてよいことにはなりません。

知識も手間もかかるのです。手書きよりもずっとラクですが。

せっかく導入するなら、数字も活用すると覚悟をきめましょう。

 

会計ソフトは便利なもの

会計ソフトは、とても便利なものです。

そして、経理にあたっては、ほとんど必須のもの。

もはや、会計ソフト無しで決算書をつくるのはかんがえられないくらいに、必須のものです。

 

そんな会計ソフトのなにが便利かというと、「自動で集計」してくれることです。

 

「集計」というと、そんなに難しいことのようには思われないかもしれません。

  • 売上を集計する。
  • ○○費を集計する。
  • 口座の動きを集計する。

どれも「そこだけ」なら簡単ですから。

 

自動で集計が便利なのは、「すべての科目を同時に」おこなってくれることにあります。

 

たとえば、つぎの一連の取引をかんがえてみましょう。

日常的に、よくあるものだと思います。

  • 商品を100円「仕入れ」、「現金」ではらった
  • 仕入れた商品を200円で「売り上げ」、「口座」に入金された
  • 「消耗品費」として50円つかったが、そのお金は「役員が立て替えた」

 

このときに集計しなければらならないのは、つぎの6つの科目です。

  • 仕入れ
  • 現金
  • 売り上げ
  • 口座
  • 消耗品費
  • 役員が立て替えた……役員借入金

 

この例えでは、6つの科目をつかいました。

でも、現実には、平均的に30~50くらいの科目をつかいます。

これらをすべて集計しなければ、決算書(貸借対照表と損益計算書)はつくれません。

 

手書きで集計するなら、帳簿も科目とおなじ数、30~50ページはつかうことになります。

ものによっては1ページで収まらない科目もあるでしょう。

なので、最終的に帳簿が100ページくらいになるのは、ざらにあることです。

 

また、「自動で集計」とはべつに、会計ソフトをつかうと消費税の計算も簡単にできます。

 

かつて、会計ソフトが存在しなかったころには、ここまでのことを手書きでおこなっていました。

今でも、やろうと思えば手書きでできないこともないのです…

でも、おそろしいほどの時間がかかるでしょう。

 

もし会計ソフトをつかうなら、「どんな取引があったか」を入力するだけです。

それぞれの科目の集計も、決算書をつくることも、自動でやってくれるのです。

 

かかる料金は、毎年、個人むけなら1万円前後。法人むけなら5万円前後。

このあたりが相場です。

これらの料金が経費になるので、税金がへるうえに、便利さが手にはいる。

 

そんな会計ソフトですが、気をつけたいこともあります。

 

やっぱり簿記の知識は必要

会計ソフトは、集計のほかにも「自動」が謳われていることがあります。

でも、自分が何もしなくてよいわけではないのです。

 

自動で入力、自動で仕訳

このように謳われていることもありますが、自分が何もしなくてよいわけではありません。

自動で入力がうたわれているとき、大変なのは初期設定です。

そして、この初期設定には、簿記の知識が必要です。

 

その知識とは、自分ですべての会計データ(=仕訳)を入力できるくらいのものです。

また、入力がおわった後で、間違っている可能性に気づける知識も必要です。

 

いちど初期設定がおわったあとでも、レシートなどと照らし合わせることが必要になってきます。

そのレシートがインボイスかどうかにより、消費税のあつかいが変わります。

おなじ取引先であっても、ちがう科目をつかうこともあるでしょう。

自動と謳われていても、手間はやっぱりかかるのです。

 

口座やカードと連携

ボタンひとつで、銀行口座やカード明細のうごき・情報を会計ソフトにとりこむことができます。

でも、取り込んだ「だけ」の状態では、まちがっていることもあります。

さきほどと同じく、目視、そしてレシートなどと照らし合わせながらの確認は必要なのです。

 

ぜんぶの機能をつかうわけではない

会計ソフトには、たくさんの機能がついています。

経費精算や経営分析、資金管理、予実管理、請求書管理……など。

でも、これらの機能をすべてつかうことは、おそらくないでしょう。

 

会計ソフトにもとめるのは、つぎのことで十分です。

  • 会計データの入力
  • 会計データを集計して、年度ごとまたは月ごとの帳簿・試算表をつくる
  • 会計データをExcel形式のものに変換する
  • 電子申告できる決算書をつくる
  • 消費税の計算をする

 

これら以外のことは、自分の興味にあわせて、Excelでつくるほうがおススメです。

 

会計ソフトは、もともと税理士など経理の専門家むけにつくられています。

そのため、会計の固いルールにあわせてつくられているのです。

正確な言葉をつかったり、決算書やよくある経営分析を想定した区切りをつかっていたり……など

その結果、正確ではあるものの、とても細かく、パッと見ても全体像がつかみにくいものになっているのです。

 

でも、数字を経営に役立てるには、とっつきやすいほうがよいです。

パッとみて、大事なところがすぐに分かるほうがよい。

たとえ正確さを犠牲にしても、まずは全体像をつかむことが大事です。

  • 売上 124,596,120円

こう見るよりも、だいたい「1億2千万」とつかんだ方が、頭に入りやすいはずですし。

 

なので、たくさんの機能がついていることに、惑わされないようにしましょう。

 

会計ソフトを導入するなら使う覚悟が必要

会計ソフトを導入するいちばんの目的は、「いつでも会計データを見れる」ことです。

もちろん、それが、なるべく最新のデータであることも前提です。

 

会計ソフトの入力は、かならずしも毎日でなくてもよいです。

そのあとの変化を、頭のなかで追えるくらいなら。

 

「いま○○だから、○○をする」

数字は、ほんらい、このように活用するものです。

現状を把握して、将来のこともふまえ、自分の行動を決める。

その参考に、活用するのです。

 

会計ソフトにも、料金がかかります。

インボイス制度など法改正にたいおうするため、毎年それなりの金額が。

もし、数字をデータとして持っておく「だけ」のために払うなら、高く感じないでしょうか。

 

数字を経営に活用するのは、義務ではなく、必要がないこともあるかもしれません。

規模がちいさいビジネスだったり、お金に困ることがなかったり、おおきな変化がない場合もあるでしょう。

そんなときには、頭のなかだけで物事が見通せる・解決できることもあるかもしれないです。

会計ソフトを買わない、という選択肢もあるのです。

 

いっぽう、やっぱり数字も活用したい場合には、覚悟をきめましょう。

ちゃんと数字もみて判断する、と。

そして、そのための数字を用意することも。

手間はかかりますが、数字に強くなるなどの見返りもありますから。

 

※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。