オーナー社長や家族の役員報酬は「仮の数字」です
社長ひとりや家族で会社を経営しているときは、その役員報酬は節税の結果から生じた「仮の数字」です。
お金が足りなくなるのは、どこかでお金をつかいすぎていることも多いです。
そうならないように、いつも「お金を残しておく」ことを意識しましょう。
目次
役員報酬を決めるときに考慮すること
社長一人あるいは家族といっしょに会社を経営しているとき、会社の目的はかならずしも「事業をおおきくすること」ではないこともあります。
信用をたかめて「仕事を取りやすくする」ためであったり、「節税」のためであったり、他人からの出資がないことによる「自由さ」であったり。
つまり、会社はたんに「仕事の受け皿」であり、会社にはいってきたお金を、なるべく上手に個人の財布にながす。
こういう位置づけのこともあるわけです。
すると、役員報酬を決めるにあたって、次のことに重点がおかれることもあります。
- 役員報酬をいくらにすると、いちばん節税になるか
- 会社と個人、それぞれいくらお金を残しておくべきか
役員報酬をいくらにすると、いちばん節税になるか
もし個人事業主だったら、利益の「15%~55%」が税金としてもっていかれます。
これは所得税・住民税をあわせたものなので、事業税もあるなら「3%~5%」くらいが追加でかかります。
この利益が会社のものだったとするなら、その利益は、会社から個人への役員報酬により、会社と個人に分散されます。
- 役員報酬をひいた後の利益……法人税など会社の税金がかかる
- 役員報酬……所得税など個人の税金がかかる
はらう税金の種類はふえるのですが、「税率」の都合により、会社・個人をあわせたトータルの税金はすくなくなることも多々あります。
そこには、役員報酬について「給与所得控除」という経費をとれることも関係してきます。
法人税など会社の税金は、利益の30%くらいになるので、これを軸にトータルの税金がなるべく少なくなるように役員報酬を設定する。
これは、節税における「はじめの一歩」ともいえる考えかたなのです。
会社と個人、それぞれいくらお金を残しておくべきか
社長ひとり、あるいは家族で経営している場合であっても、会社と個人のお金は区別をしなければなりません。
もし、どちらかにお金が足りないときに、もう片方が立て替えれば、それは「貸付け」や「借入れ」としてあつかいます。
双方にとって、プラスまたはマイナスの財産になるのです。
こうしたものも、相続や贈与の対象になります。
なので、万一のことがあったときに、あまり多額にならないように気をつけるべきなのです。
すぐにお金で決済できないときもあるので。
また、会社・個人双方で、不動産などおおきな買い物が必要なときや、臨時の出費が予想されることもあります。
こうしたことを踏まえて、会社・個人それぞれにどれくらいのお金が必要か。
これを軸に、役員報酬を設定することもできるのです。
もちろん、ここまでのことを無条件で、なんの縛りもなしにできるわけではありません。
役員報酬には、やった仕事にたいして「不相当に高額な部分は経費にできない」というルールがあるので。
ただ、「それだけのお金を用意できるか」という問題や、「不相当に高額って具体的にいくらかが曖昧」という問題もあります。
なので、実質的に、役員報酬の設定はあるていど自由にできる、という現実もあるのです。
オーナー社長や家族の役員報酬は「仮の数字」
社長ひとり、あるいは家族で経営している会社のことを「同族会社」といいます。
この同族会社において、役員報酬を自由に設定できるのは「反対するひとが誰もいないから」です。
同族会社では、経営者と株主がおなじなので。
もし、経営者と株主がべつのひとなら、役員報酬は自然と「仕事にみあった金額」に落ち着くものです。
もちろん、双方にいくらか不満などが残ることはあるでしょうが。
経営者にしてみれば、役員報酬はなるべく高いほうがよい。
いっぽう株主にしてみれば、役員報酬はなるべく少なくして、そのぶん配当金をふやしてほしい。
こうした綱引きが、同族会社ではおこなわれないので、自由に役員報酬を設定できるのです。
なので、その役員報酬は「仮の数字」だと思っておくことが大事です。
もしかしたら、自分はそれだけの仕事をしていないかもしれない……
あるいは、自分の頑張りにたいして、みあった金額はもらっていないかもしれない……
自分のことを、自分で評価するのはむずかしい…ということもあります。
でも、これは良心の問題というより「お金の問題」です。
というのも、会社は「支払うべきときにお金がたりない」ことで倒産するからです。
そこに至るには、かならず「お金をつかいすぎた」という原因が関係してきます。
なので、いつも「お金を残しておく」ことを意識しましょう。
同族会社において、役員報酬というのは「仮の数字」です。
会社の財産との兼ね合いもありますが、すべてを生活費につかってよいものではなく、いくらかは「いざという時」のために残しておきましょう。
自分の仕事を客観的にみるのは、とても難しいことです。
謙虚さも大事ですが自信も大事、というようにいろんな要素が相反するので。
役員報酬を自由に決められるのは、同族会社の特権とは思わないようにしましょう。
会社がなくなっては何にもならないので、かならず貯金をし、くれぐれも役員報酬の金額を真に受けないように。
まとめ
役員報酬の設定は、会社における節税のはじめの一歩です。
同族会社において、その金額は自由に決められるものですが、それがゆえに「将来お金にこまる原因」になってしまうこともあります。
お金をつかいすぎてしまうので……
そうならないようにするには、いくらかは貯金をし、そして先をみて経営するようにしましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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