損益計算書はシーズン成績。生涯成績はどこに載っているか
損益計算書の利益は、その年度だけのものです。
会社をつくってから現在までの利益の合計は、貸借対照表にあらわれます。
利益は、経営者の実力をあらわすもの。
現在までの実力は、今後のヒントになります。
損益計算書はシーズン成績
損益計算書は、利益を計算するためのものです。
その利益は、年度ごとに計算します。
税金は、この利益の○○%と計算しますが、おなじく年度ごとにはらっていきます。
毎回、2年分の利益で税金を計算するとなったら、おかしなことですよね。
つまり、年度というのは、利益や税金を計算するための区切りでもあるのです。
そのため、損益計算書は、年度がおわればリセットされます。
あたらしい年度になったら、利益はゼロからスタートするわけです。
損益計算書は、いってみればシーズン成績なのです。
となると気になるのは、生涯成績。
どんなスポーツでも、名選手と言われるかたは、一つのシーズンだけでは終わりません。
調子やケガなどで波はあるものの、引退するまでの成績は突き抜けているものです。
お気に入りの選手の成績を、デビューから並べて見たこともあるのではないでしょうか。
これは、自分の会社についてもおなじことです。
お金は、かせいだ利益のぶん、ふえます。
そのお金のために事業をはじめてから現在までに、どれくらいの利益をかせいだのか。
それが載っているところを確認しておきましょう。
生涯成績が載っているところ
利益は、損益計算書だけではなく、貸借対照表にも載っています。
「繰越利益剰余金」というところに。
貸借対照表は、たとえば次のようなものです。
この右下あたりに載っています。(以下、数字はサンプルです)
上のは決算書としてつくられたものですが、普段は試算表をみると思います。
たとえば弥生会計なら、その試算表の下のほうに次のようにあらわれます。
この繰越利益剰余金は、「純資産」にふくまれます。
純資産というのは、実質的な財産をあらわすものです。
たとえば、「100円」持っているけど「40円」は友達に借りている…
このときの純資産は、つぎのように「60円」です。
じっさいに会社を運営していると、この純資産にふくまれるのは、つぎの2つです。
- 資本金
- 繰越利益剰余金
(会社が大きくなると、この項目はふえることもあります)
この繰越利益剰余金は、毎年度の利益が累積していきます。
なので、会社を設立したときはゼロです。
でも、その後は、たとえば次のように増減していきます。
黒字ならふえるし、赤字ならへる……という風に。
年度 | その年度の利益 | 繰越利益剰余金 |
会社の設立時 | - | 0 |
1期目 | 100 | 100 |
2期目 | -50 | 50 |
3期目 | 200 | 250 |
なお、繰越利益剰余金は、赤字でもへりますが、会社から「配当金」を出してもへります。
でも、配当金は経費になりません。
会社をつくるときの資本金。これの逆のイメージのものなのです。
(資本金により会社のお金がふえますが、収入とは扱いません)
おおくの中小企業は、経営者が株主でもあります。
自分で会社をつくり、自分で経営していくことが多いので。
そのため、自分に配当金をだすより、経費になる役員報酬としてだすことが一般的なのです。
繰越利益剰余金は、次のことをあらわします。
- 会社の設立~現在までの累積の利益から、配当金をひいたもの
配当金をだすことが少ない中小企業では、会社の「生涯成績」といえるのです。
繰越利益剰余金はどう使われているのか
利益がでれば、お金はふえます。
であれば、繰越利益剰余金をふくむ純資産とおなじだけ、お金はふえるはずです。
おなじく、お金をふやすためには、借り入れなどによることもできます。
それをあらわすのが負債です。
いまいちど貸借対照表をみておきましょう。
まずは右側。
負債と純資産は、「どうやってお金をふやしたか・集めたか」をあらわしています。
そして左側の資産。
資産は、利益でふやした・借入などで集めた「お金をどう使っているか」をあらわします。
つまり、現在までにかせいだ利益は、資産となっているのです。
おそらく、「前期の利益は○○になっている」というように特定することは難しいはずです。
利益は、いちどお金になり、それからいろんなことに使われるので。
でも、利益は資産となっています。(資産にはお金もふくみます)
その資産とは、「それを活用して今後の利益をかせいでいくためのもの」です。
また、お金の使いかたは経営者が決めるものです。
資産とは、経営者の判断を反映するもの、つまり経営者を映し出すものでもあるのです。
いま持っている資産は、今後の経営にどう役立っていくのか。
そのヒントが、繰越利益剰余金です。
もし、今までうまくいっていたのなら、繰越利益剰余金もそれなりの金額になっているはずです。
いっぽう、そうでないなら、資産のありよう・持ちかたを考えてみましょう。
1シーズンだけ良くても、それはたまたまかもしれません。
でも、複数のシーズンが良かったなら、それは実力です。
年棒だって、何シーズンも成績がよければ、高くなっていくものです。
※ 記事作成時点の情報・法令に基づいています。
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