免税事業者への1万円未満の支払いは経理で消費税が変わる
インボイス制度がはじまって最初の3年間、免税事業者への1万円未満の支払いは、2年前の売上により、80%控除(経過措置)か100%控除(少額特例)かを選べます。
そのときの違いは、経理(会計ソフトへの入力)です。
いずれも令和11年(2029年)9月までの期間限定ですが、ちょっとした違いで余計に納税してしまわないよう気にしておきましょう。
支払いには2つの特例がある
インボイス制度がはじまると、経費などの支払い先がインボイス登録をしているか・していないかにより、自分がいくら消費税を納めるかが変わってきます。
そこで、領収書などに「インボイスの登録番号があるか・ないか」の確認が必要になってくるのです。
また、その登録番号があっているかどうかも。
もし、支払い先が免税事業者で「登録番号がない」ときは、値引きをしてもらわないと、今までより消費税の納税が増えてしまいます。
これは、とても大きな変化です。
そこで、インボイス制度がはじまる前・後で、変化をすこしでも軽くするように、2つの特例が設けられています。
- 支払い先がインボイス登録していないときの特例(経過措置)
- 1万円未満の支払いの特例(少額特例)
支払い先がインボイス登録していないときの特例
消費税の納税は、次のように計算します。
- 売上などで受け取った消費税ー経費などで支払った消費税=納税額
インボイス制度がはじまった後は、支払い先が免税事業者なら、支払った消費税はゼロとして計算することになります。
1年の支払いが110万円なら、10万円も納税が増えてしまいます。
しかし、変化が大きすぎるということで、次の特例が設けられています。
- 免税事業者へ支払った消費税のうち、○○%は上記の計算に組み込める(=控除できる)。
○○%は、インボイス制度がはじまってからの時期によります。
- 最初の3年間……80%
- 次の3年間………50%
- 7年目以降………0%
領収書などをみても登録番号が見つからない、相手に聞いてもわからない、そんなときはこの特例をつかうことになります。
なお、この特例をつかうときは、会計ソフトに「相手が免税事業者」とか「○○%控除」と入力しておく必要があります。
いきなり0%になってしまうことを考えると、80%・50%でもつかえるのは大きいですよね。
1万円未満の支払いの特例(少額特例)
これは、受け取った領収書などが「インボイスなのか・そうでないのか」を確認する作業を軽くするための特例です。
- 対象になるかた……2年前の売上が1億円以下(又は前期の前半6か月の売上が5,000万円以下)
- 対象になる支払……1回が1万円未満(税込み)のもの
- いつまでの特例か……令和11年(2029年)9月まで
どう作業が軽くなるか……?
消費税は、経費などで支払った消費税のぶん、納税がすくなくなります。
そのためには「インボイスと帳簿の保存」が必要です。
この特例は「1万円未満の支払いは帳簿の保存だけでよい」というものです。
登録番号を探したり、合っているかの確認をしなくてもよくなるのです。
この特例の一番のポイントは、支払い先が免税事業者であっても、その消費税は100%控除できるという点です。
上記の特例では80%や50%だったものが、100%になるのです。
そのためには、会計ソフトに次のことを入力しておく必要があります。
-
支払い先の氏名または名称
-
取引内容
ちなみに、この2つは今までのルールでも必要だったものです。
つまり、今までと変わらないわけです。
経理で消費税の納税が変わる
もし、2年前の売上が1億円以下なら、上記の方法のどちらをつかうかは選ぶことができます。
とうぜん、100%控除できる方を選ぶと思います。
そのときの違いは、会計ソフトへの入力です。
- 80%または50%控除……「相手が免税事業者」または「○○%控除」と入力
- 100%控除……「支払先の名称」「取引内容」を入力(今までも入力していたこと)
100%控除できるのに、うっかり80%控除に必要なことを入力しないよう気をつけましょう。
売上が1億円あたりで推移しているかたは、とくに使い分けが大事になってきますから。
まとめ
インボイス制度がはじまって最初の3年間、免税事業者への1万円未満の支払いは、2年前の売上により、80%控除か100%控除かを選べます。
そのときの違いは、経理(会計ソフトへの入力)です。
いずれも令和11年(2029年)9月までの期間限定ですが、ちょっとした違いで余計に納税してしまわないよう気にしておきましょう。
※ 記事作成時点の情報・法令等に基づいています。
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